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第二章 呪いからの解放編
大人と子供
しおりを挟む「凄まじいな。これは強すぎるだろう。クルギス」
第一の感想は、端的だった。
まあトール村の人間同士の戦いなんて一般人や、生ぬるい王都で遊んでいる王子からすれば、神話にすら感じられるレベルだろうからな。
「まあ、一応はトール村の人間が世界最強だからな」
少しぐらいは強くなくては困るだろう。
「クルギス。それでどうするのだ?子供たちは強いぞ」
「この程度なら、どうにでもなるさ」
「この程度?世界最強ではないのか?」
「人間の中で、だろう?それも子供だ。こんなものでかすり傷一つでもついたら、ぼくのプライドが傷つくぞ」
「……なんて恐ろしいことを抜かすガキだ。確かに人間は全種族の中で最弱の強さだと言われているが、トール村の人間は序列第二位まで届く可能性があると聞くが?まさかとは思うがアイテム無しでとは言わないだろうな?」
「それは流石に不可能だよ。ぼくはアイテム無しだったら人類の中でも最弱レベルだろうさ」
「それはないだろう。お前は身体能力が最弱でも頭脳だけでかなりの強さだ」
確かに性格や、戦い方など頭脳で埋められる実力はある。
「アイテム無しの直接戦闘で頭脳を使うのは難しいさ。戦術を基本とした団体戦なら多少は意味があるが、一対一ではとても難しい、簡単な腕力には勝てないんだよ。武器をまともに使うことも難しいんだから。強い武器は比例して重いからな」
「少しは鍛えたらどうだ?結局のところ体が資本だぞ」
「基本的には嫌だが、そもそも時間がない。ぼくが一日一時間体を鍛えることに時間を使ったら、王国にどれだけの損害が出ると思っているんだ?」
「確かにな。一日ぐらいならともかく三日も続いたら有り得ないほどの値段になるだろうな。私たちでは補えないだろう。というか今の状況でお前が一週間も国を離れたら滅びるだろうな。お前のせいで現在のこの国は敵が多すぎるからな」
「その代わりになるほどの利益が出ているだろう?」
「確かに、今のこの国は歴史上有り得ないほどの繁栄と幸福に満ちていると言えるだろう。だが、お前ひとりだけで成立しているともいえる。お前が次期国王になれば素晴らしいと思えるが、お前にやる気がないということを私はよく理解している。この状況は危ういとは思わないか?」
「そういうことは自分で考えろ。今、この国には走ることが求められている。そしてぼくが先頭を走らなければならないのだから、走り抜けた場所を考える余裕なんてない。ぼくの存在がこの国から消えるまでになんとかするんだな」
「……肝に銘じておこう」
「ほーほっほっほ。クルはワシらのことなんて考える気はさらさらないのじゃよ」
いつの間にか首元に砂時計を下げた老人が第一の後ろに座って高笑いをしていた。
「ご老人、ここは王族の観覧席なのだが?」
第一が警戒をしながら老人に問いかける。護衛がざわつく中、ぼくも呆れながら声をかける。
「メア。第一はその姿がお気に召さないようだ」
「ふむ」
老人が呟くと姿が一瞬消えたと思ったら、その場に十五歳ぐらいの年齢の少年が存在していた。
「これでいいかな?」
「どうだ、第一?」
「お前は第三王子。メアか。相変わらず変装が趣味のようだな」
「いやいや、僕の趣味は変装ではなく変身だよ。僕の考えでは、その二つには恐ろしいほどの溝があると思っているよ」
「なるほど、じゃあ久しぶりに会ったんだから握手をしようか」
笑いながらぼくが軽く手を出すと、メアは怯えて距離をとる。
「きみね、それはやめてくれってあれだけいっただろう?」
「握手すら断られるのはとても心が傷ついてしまうな」
メアがぼくに、心からの恐怖を持っていることをちゃんとわかっていて握手を求めたので、この結果は順当だ。
やれやれとぼくはワザとらしく首を振ると席を立つ。
「さあ、そろそろぼくは行くよ。躾の時間だ」
正直、結果は明らかなのでやる気のかけらもない。
ぼくは戦いに興味がないゆえに、根本的に戦い方そのものが違うのだから。
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