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第二章 呪いからの解放編
自分の責任
しおりを挟む「……でも残念ながらぼくには立場と言うものがある。ぼくが何か失敗して責任を負ってしまうと敵に攻撃される口実になったりする」
敵と味方の差は明確なものだ。
「ぼくや白い子のような強い人間なら問題はないけど、弱い部下たちに被害が出てしまうだろう。出来るだけぼくは失敗がなく完璧な存在だと周囲に思わせないといけないんだよ」
「確かにそうかもしれないわね。クルギスには背負うものがたくさんあるものね」
「ぼくの部下が失敗したのなら、言い訳が効くからね」
「……クルギスには失敗する権利すらないのね。でも大丈夫よミュウならできるわ。やり過ぎるかもしれないけど」
「もういいよ。じゃあオルト、ぼくは行くから」
「はい。出来るだけ早く戻ってくださいね」
「村の名前と場所は?」
「名前はフユウ村です。場所はおれが伝えるより道案内させる方がいいでしょう」
「そうだね。白い子のご先祖様をこき使おう。アサヒ、方向は?」
白い子の持っている札から、ため息が聞こえる。
「あなたたち、年長者には敬意を払いなさい」
「お前は心だけが年寄りでも、体が若いんだから細かいことは気にしなくてもいい」
「いえ、体もあなたたちよりは年上ですよ」
「そうか、で、方角は?」
戯言を聞く気はない。
「……アンナ。北です」
「ええ」
「また白い子に乗るのか……」
「当然ですよ。それが一番早いですから。アンナ、急いでね」
アサヒは少し楽しそうにそう言った。
「わかったわ。出来るだけ急ぐ」
白い子はぼくを背負うと部屋の窓から飛び出す。なんか、早くなってないか?
★
一時間ほどの移動時間を経てフユウ村に着いた。
「しかし、本当に便利だね。アサヒの力はどのぐらい遠くまで使えるんだ?」
「そうですね。メテオ国ぐらいは範囲内です。時間が多くあれば人間世界ぐらいは許容範囲ですけどね」
それは凄い。人間世界だけでも数多くの国家が存在するぐらい広いのに。
「それで? 子供たちはどこにいるんだ?」
「その先の通りにウルドがいます。どうせ皇子にはわかりませんから、アンナが見つけてください」
「わかったわ」
白い子は一言呟くと、ウルドとやらを探しにいった。
「ウルドって?」
「トール村の子供の一人です。ヒイラギと一緒に行動していたんでしょうね」
「連れてきたわ」
アサヒに説明されていると、白い子が人一人ひきずって帰ってきた。
「ちょ、ちょっと!無理やり引っ張るなよ!」
白い子よりも年上っぽい男の子だ。武器には斧を使っているようで背中に背負っている。
「さて、説明してもらおうか。ここで何をしている?」
「何をって、あんたクルギス皇子か!おれに何をする気だ!」
「直接的にお前に用はない。ぼくはイリスを探してこの町にきたんだ。知っていることを洗いざらい話してくれ」
「そ、そうだよ!イリスだ。なあ皇子、イリスを助けてやってくれよ!」
斧の少年は慌てながらぼくに助けを求めている。
だが、冷静になってもらわなければ困るので少年の襟をつかみ、地面に叩きつけると身に着けているナイフの一本を眉間に突きつける。
「うるさい。質問に答えろ、イリスはどこにいる?」
「……、あっとや、宿屋にいる」
「じゃあ、立ち上がってぼくたちを連れて行ってくれ」
ぼくは体をどかすと、斧の少年を立ち上がらせて道案内をさせる。
「どうしたのクルギス。気が立っているのかしら?」
「気が付かないか?まだ昼間なのにこの村には通行人がいない。斧の少年だけだ。家の中にいても娯楽の一つもないような田舎の村で、子供の一人も見かけないということは、幽霊の件が思ったより深刻だということだ。何があったんだ?」
ぼくは、前を歩く斧の少年に話かける。
「暗くなると、村の中にまでアンデットが入ってくるんだ」
「へえ、基本的に村や町の中には魔獣の類は入ってこれないはずだけどな」
「多分、イリスの力だよ。よくわかんねえけど」
狭い村だ。斧の少年はそれだけを口にすると少しだけ大きめの建物に入っていく。ここが宿屋で、イリスが中にいるのだろう。
客は二階に宿泊しているらしい。ぼくは階段を上がり、二階にある一室のドアをノックしてから開けた。
その中には金色の髪をした子供が二人、一人は目つきの悪い少年、ファイだろう。
もう一人は死んだような眼をしている少女だ。こっちがイリスだろう。
イリスは布団を被ってベッドに座っている。
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