幽霊に取り憑かれたけど強かった

いつき

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幽霊に取り憑かれたけど強かった

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ダンジョンの深部で、ゆうりは一人、剣を握りしめていた。仲間は逃げた。いや、逃げさせた。
ここには、ボス――ダイチーがいる。そして、問題はもう一つ。ゆうりの体に“何か”が入り込んでいた。

「……お前、まだ私を受け入れていないのか?」

頭の中に響く女の声。
それは幽霊だった。三日前、ゆうりが封印された鏡に触れたときに取り憑いてきた謎の存在。

「勝手に入ってきたのはそっちだろ……!」

「だが、強さが欲しいのだろう?」

幽霊――名を名乗らない彼女は、異常なほどの力を持っていた。
戦闘になると、まるでゆうりの体を借りて戦うかのように力を発揮し、魔物を瞬時に屠ってきた。

「お前が力を貸すのは、私の体を乗っ取るためか?」

「違う。ただ、あのダイチーは私の仇だ。奴を倒すまで……私も、お前も、止まれない」



ダイチーは、巨大な鬼のような姿をしていた。炎の棍棒を振り回し、咆哮一つで地面が揺れる。
通常の冒険者なら瞬殺される相手だ。

だが、ゆうりの中の幽霊がささやく。

「心を委ねろ、力は貸す。だが、魂までは渡さなくていい。ただ――共に戦え」

ゆうりは、ふっと息を吐いた。そして目を閉じ――開けたとき、瞳は薄紫に染まっていた。

「……行くぞ!」

一歩、ダイチーの懐に飛び込む。

棍棒が振り下ろされる瞬間、それを紙一重で避け、ゆうりの剣が輝いた。
それは斬撃ではなく、まるで光の奔流。

「封印・断界の刃!」

幽霊の記憶と力を引き出した技が、ダイチーを真っ二つに切り裂いた。
炎の鬼が、静かに崩れ落ちる。



戦いが終わり、ダンジョンに静寂が戻る。

「……ありがとう。お前の力がなかったら、勝てなかった」

「ふふ……礼は不要。これで、私も成仏できるかもしれない」

「え?」

「ダイチーは、私の命を奪った魔物だったの。やっと……終わったのね」

ゆうりの中から、温かい光がふわりと抜けていく。

「最後に……一つだけ伝えたい。お前のような魂に触れられて、私は――嬉しかった」

光は消え、声ももう聞こえなかった。



ダンジョンの外。仲間たちが心配そうに待っていた。

「ゆうり! 生きてたのか!」

「……ああ。ちょっと、取り憑かれてただけ」

「取り憑かれて!? 大丈夫なのか?」

ゆうりは、空を見上げて微笑んだ。

「うん、大丈夫。幽霊に取り憑かれたけど……強かったからな」
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