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第34話目 夜道の帰り
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夜10時、雨上がりの帰り道。
真央(まお)はコンビニの袋を片手に、裏道の近道を歩いていた。
ぬかるんだ地面の向こうで、
——ザッ、ザッ
何かを引きずる音がした。
(犬…?それにしては重い音)
暗い路地の奥に、男の背中が見えた。
濡れたアスファルトの上に長い“何か”を引きずっている。
その“何か”が、街灯の光に一瞬だけ照らされた。
人の腕だった。
皮膚が雨に濡れて光り、手首から先がぐったり垂れ下がっている。
真央の喉から、声が出ないまま空気が漏れた。
逃げなきゃ、と本能が叫ぶのに足が動かない。
男がゆっくり振り返った。
フードの影で顔は見えない。
でも、真央の足元に落ちた光が一つだけ照らした。
男の手に握られた“もう片方の腕”。
切断面が生々しく、雨で洗われて光っていた。
(やばい…見られた…)
その瞬間、男の肩がピクリと動いた。
“見たな”
——言葉にはしていないのに、はっきりそう伝わった。
男は静かに、まるで散歩の続きをするみたいに歩き出した。
だが、向かってくる方向は真央の方だった。
走る。
足が滑りそうになるのを気にせず、とにかく走る。
背後で濡れた靴が路地を踏む音がついてくる。
追いかけられている?
いや、違う。男は全然急いでいない。
なのに距離が縮まってくる。
(なんで…?)
角を曲がろうとした瞬間。
真央の前に“何か”が落ちた。
——ドサ。
見ると、さっきの“腕”だった。
ずっと引きずっていた方。
(え……どうして前に?)
ゆっくり顔を上げると——
男は、真央の目の前に立っていた。
さっき路地の奥にいたはずなのに。
距離にして20メートル以上あったはずなのに。
男は、雨で濡れた頬をそのままに、穏やかな声で言った。
「ねえ。見ちゃったよね。」
真央(まお)はコンビニの袋を片手に、裏道の近道を歩いていた。
ぬかるんだ地面の向こうで、
——ザッ、ザッ
何かを引きずる音がした。
(犬…?それにしては重い音)
暗い路地の奥に、男の背中が見えた。
濡れたアスファルトの上に長い“何か”を引きずっている。
その“何か”が、街灯の光に一瞬だけ照らされた。
人の腕だった。
皮膚が雨に濡れて光り、手首から先がぐったり垂れ下がっている。
真央の喉から、声が出ないまま空気が漏れた。
逃げなきゃ、と本能が叫ぶのに足が動かない。
男がゆっくり振り返った。
フードの影で顔は見えない。
でも、真央の足元に落ちた光が一つだけ照らした。
男の手に握られた“もう片方の腕”。
切断面が生々しく、雨で洗われて光っていた。
(やばい…見られた…)
その瞬間、男の肩がピクリと動いた。
“見たな”
——言葉にはしていないのに、はっきりそう伝わった。
男は静かに、まるで散歩の続きをするみたいに歩き出した。
だが、向かってくる方向は真央の方だった。
走る。
足が滑りそうになるのを気にせず、とにかく走る。
背後で濡れた靴が路地を踏む音がついてくる。
追いかけられている?
いや、違う。男は全然急いでいない。
なのに距離が縮まってくる。
(なんで…?)
角を曲がろうとした瞬間。
真央の前に“何か”が落ちた。
——ドサ。
見ると、さっきの“腕”だった。
ずっと引きずっていた方。
(え……どうして前に?)
ゆっくり顔を上げると——
男は、真央の目の前に立っていた。
さっき路地の奥にいたはずなのに。
距離にして20メートル以上あったはずなのに。
男は、雨で濡れた頬をそのままに、穏やかな声で言った。
「ねえ。見ちゃったよね。」
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