最恐 百物語

第２８話目 『ワクちゃんの生まれ変わり』

「ねえ、この人形、誰が置いたの？」

学校の音楽準備室で、風変わりな人形が見つかった。

ボロボロの軍服を着て、ガラスのように光る黒い目。
その口元は、裂けて笑っているように見える。

名前も、箱に雑に書かれていた。

「ワク2号」と。

音楽の先生は「知らない」と言った。
校長も「そんなものは搬入されていない」と言った。

だが翌日から、奇妙なことが起こり始めた。

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一人目の被害者

1年B組の女子生徒が、放課後に「音楽準備室から声がする」と言って見に行った。

その夜、彼女は自宅の階段から転落して意識不明。

転落の瞬間、妹が見たという。

「お姉ちゃんの後ろに、変な軍服の人形がついてきてた」

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二人目の被害者

職員室の若い音楽教師が、「夜、誰かに肩を叩かれる夢を見る」と言っていた。
次第に疲れ果てたように目の下にクマができ、ある日、突然姿を消した。

彼の机の中には、楽譜にびっしりと赤ペンで書かれた一言が残されていた。

「わたし、また　うごけるよ」

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真相を追った少女

噂に興味を持った新聞部の少女・ミオが、ワク2号について調べ始めた。

ワクちゃん――それは、かつてこの学校にあった人形劇部の人形だった。
戦後すぐ、演目中に子どもが倒れ、以来その部は廃部になったという。
当時使われていた人形の名前が「ワク」だった。

誰かがそれを復元し、「2号」と名付けた――？

彼女は、夜の学校に忍び込んだ。
準備室の棚の上に、「ワク2号」はまだあった。

だが、目が――
ガラスのようだった目が、どこか人間の目のように変わっていた。

そして、その口が――

「……ただいま」

はっきりと、動いた。

その声を最後に、ミオのカメラも、彼女自身も、消息を絶った。

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結末

現在、学校の音楽準備室には立ち入り禁止の札がかかっている。

だが夜になると、そこからかすかに笑い声が聞こえるという。

「ねえ、ワクしてる……？」

それは、ワクちゃんの生まれ変わり――
それとも、最初から同じ存在だったのかもしれない。