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強化1
9話
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「魔王の強化を選ぶとして、何が強くなるんだろう?」
コウキがいる方を見る。
……まぁ、見えないけどね。
そういえば、私は止まり木に逆さ状態でぶら下がっている。
もしかして視力が悪くなければ、ひっくり返った世界が見えるのだろうか?
見たいような、見たくないような。
「そうだな、動きを早くしたり、体の強くしたり……あっ!」
コウキの声に意識が彼に向く。
「魔王だったら魔法が使えるかもしれないな」
「魔法か。ラノベでは体の中にある魔力の流れを感じるという話が合ったけど、役に立つかな? 『確か血管に流れる血のような』だったかな?」
体の中の魔力の流れを感じる?
とりあえず、やってみるか?
えっと…………。
「難しくないか?」
「うん。難しいよね。ラノベ情報だから。魔力を掴む感覚が違うのかも。もしくは魔法が使えない可能性もあるよね?」
「魔王なのに魔法が使えないとは思えないな。もしかしたら強化で魔法が手に入るとか?」
「なるほど。そうかもしれないね」
魔法か、あるならなるべく早く手に入れたいな。
今の俺たちには身を守る物が何1つ無い。
とりあえず、何か戦えるものが欲しい。
だが、魔王の強化を選んだからと言って魔法が絶対に手に入るとは限らない。
これは俺たちの希望だからな。
何か確実な情報があればいいのに。
「俺たちの希望は魔法が欲しいだけど、奴らが何を用意しているか未知数だな」
「そうなんだよね。今までの事があるからね。こればっかりは、まったく期待できないよね」
もう少し希望を持てるゲームだったら賭けに出られるけど、このゲームだと無謀だとしか感じられない。
確実な証拠が欲しいな。
「世界を強化するなら、えっと、世界の動きを早くしても仕方ないし。体を強く……世界を守る結界とかが強くなったりしないかな? このゲームは誰かが襲ってくる可能性があるのでしょう?」
「たぶんな。奴らの話を聞く限り襲われる可能性が高い。結界の強化か。欲しいな」
「うん。まぁ、これも希望だけどね」
そうなんだよな。
確実にそうなるという証拠が何1つ無い。
「どうする?」
「そうだな……」
魔法と結界を手に入るとして考えてみようかな。
まず、魔法があれば敵が来ても倒すことが出来るよね。
……出来るかな?
最初からそんな強力な攻撃魔法なんて手に入れられると思う?
絶対無理だと思ってしまう、だって奴らだもん。
だったら、敵がせめて来たら結界ではじき飛ばす方が現実的かな?
まぁ、こっちもそんな強力な結界をすぐに手にできるとは考えないほうがいいだろうけど。
どちらがましかな。
そもそも、今の私に敵が襲ってきたからといって殺せるだろうか?
命が狙われていたら出来る?
……想像できないわ。
正当防衛という言葉がある以上出来る気がする。
でも、私は……。
「結界にしない?」
「ん? 結界という事は世界か?」
急にどうしたんだ?
なぜいきなり世界を薦める?
「うん。ごめん」
「何?」
「殺さなければ殺されるのかもしれない。でも、まだ敵だと思う者が目の前に現れても殺せる自信がない」
俺はどうだろう?
目の前に俺の命を奪おうをしている敵がいる。
そいつの命を俺は奪えるか?
奪わなければ死ぬのなら、出来るような気もする。
だが、それは頭で考えた時の事だ。
「現実で起こったら、俺は対処できるのか?」
……自分の身に起こる?
想像してみても、どこか他人事のような感覚が抜けないな。
あぁそうか、襲われる可能性があると頭で理解しているだけなんだ。
それが自分の身に本当に降りかかるとは、思っていない。
馬鹿だな、俺。
こんな状態で敵に遭遇して、戦えるのか?
ははっ、恐怖で身動きが出来なくなるかもしれないな。
「コウキ? 大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。結界を手に入れることが出来ると信じて、世界の強化をしよう」
本当に結界が得られるのかは、まったく不明だ。
だが今は、俺とアルフェを守る物が必要だ。
強くなるよりまずは守りが欲しい。
「うん」
よし、そうと決まればとっとと強化をしよう。
ヴァンがどれくらい溜まっているかは不明だが、1回ぐらいはガチャを回せるだろう。
あれ?
白いボタンがどこにも無い。
「アルフェ、上からボタンの位置わかるか?」
ボタン?
あぁ、あの先へ進むために押すボタンの事か。
視力が悪いのにわかるかな?
周りを見渡す。
……見えない。
「見えないから、ちょっと飛んで探してみる」
「あぁ、俺も探すよ」
ふ~さて、この部屋天井が高いな。
私の視力では天井からは探せないな。
地面すれすれを飛べば、何とか見えるかな。
止まり木から足を話し羽を動かす。
アルフェの飛んでいる方向を確認して反対方向を探すことにする。
それにしてもこの部屋は広すぎる。
それとも、俺たちが小さすぎるのか?
まさか、人の掌サイズとか無いよな?
何か比較対象になるモノがあればいいのに、何もないし。
それにしても、ボタンがない。
どういうことだ?
「アルフェ、合ったか?」
アルフェが飛んでいた方向へ叫ぶ。
「何もない、そっちは?」
「こっちもない」
コウキの方もないのか。
本当にどこにあるんだろう?
あ~、本当に小さな嫌がらせをしてくるな!
疲れた。
もう羽を動かしたくない。
でも、この周辺に止まり木が無い。
さっきの場所まで意地でも飛ばないと。
うろうろと探してみたが、見当たらず。
とりあえず、アルフェと合流しようと元居た場所まで戻ると、ふらふらと蛇行しながら飛ぶアルフェの姿が見えた。
「アルフェ、ふらふらしてるが大丈夫か?」
「…………」
「アルフェ?」
何かあったのか?
ふらふらとなりながらも、天井から飛び出ている棒を足で捕まえるアルフェ。
「着いた~。疲れた~。ごめん、まだ長時間飛べないみたい。飛行ってすごく体力を使うみたいで」
疲れただけか?
本当に?
「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。ゆっくり休憩したらまた飛べるようになるから」
「そうか、心配した」
「えっ! ありがとう」
しかしどうしよう、ボタンが無い。
どうやって先へ進めばいいんだ?
「ボタンが無いなら他の方法って事だよね?」
「あぁ、そうなる」
他の方法と言ってもここには何もない。
あるとしたら、私たちぐらいだ。
でも、私たちが何をすれば……声?
今の私たちに出来る事と言えば、話をするぐらい。
「お待たせしました! さぁ魔王自身? 国? 世界? どれの強化を行いますか?」
「急がないとヴァンが溜まりすぎるな」
もう一度隅から調べていくか?
「コウキ、声で指示してみて」
「えっ? 声?」
「そう、『世界の強化を行う』みたいな感じで」
「了解しました。世界の強化を始めます」
「「えっ?」」
あれ?
もしかして私の声に反応した?
「どうやらアルフェが正解だったみたいだな」
「声だったんだ。次からは声?」
「どうだろう?」
なるほど声か。
よく気付いたな。
「ありがとうな」
「なにが?」
「気付いてくれて。今から隅から調べるつもりだったから。無駄な事をせずにすんだよ」
「それをする前にわかって良かったよ」
ウィン
「さぁ! 言語を決めよう! 回して! 回して!」
女性の明るい機械音とともに、目の前にガチャが現れた。
「「…………はぁ」」
ここからはボタンではないらしい。
「これってスーパーの出入りあったりするやつですよね?」
「あぁ、確か名前は……『ガチャポン』だったはずだ」
ボタンからガチャポン?
進化したのか退化したのか、さっぱり分からない。
まぁ、とりあえずこれで先へ進めるな。
「回すぞ?」
「うん」
コウキがいる方を見る。
……まぁ、見えないけどね。
そういえば、私は止まり木に逆さ状態でぶら下がっている。
もしかして視力が悪くなければ、ひっくり返った世界が見えるのだろうか?
見たいような、見たくないような。
「そうだな、動きを早くしたり、体の強くしたり……あっ!」
コウキの声に意識が彼に向く。
「魔王だったら魔法が使えるかもしれないな」
「魔法か。ラノベでは体の中にある魔力の流れを感じるという話が合ったけど、役に立つかな? 『確か血管に流れる血のような』だったかな?」
体の中の魔力の流れを感じる?
とりあえず、やってみるか?
えっと…………。
「難しくないか?」
「うん。難しいよね。ラノベ情報だから。魔力を掴む感覚が違うのかも。もしくは魔法が使えない可能性もあるよね?」
「魔王なのに魔法が使えないとは思えないな。もしかしたら強化で魔法が手に入るとか?」
「なるほど。そうかもしれないね」
魔法か、あるならなるべく早く手に入れたいな。
今の俺たちには身を守る物が何1つ無い。
とりあえず、何か戦えるものが欲しい。
だが、魔王の強化を選んだからと言って魔法が絶対に手に入るとは限らない。
これは俺たちの希望だからな。
何か確実な情報があればいいのに。
「俺たちの希望は魔法が欲しいだけど、奴らが何を用意しているか未知数だな」
「そうなんだよね。今までの事があるからね。こればっかりは、まったく期待できないよね」
もう少し希望を持てるゲームだったら賭けに出られるけど、このゲームだと無謀だとしか感じられない。
確実な証拠が欲しいな。
「世界を強化するなら、えっと、世界の動きを早くしても仕方ないし。体を強く……世界を守る結界とかが強くなったりしないかな? このゲームは誰かが襲ってくる可能性があるのでしょう?」
「たぶんな。奴らの話を聞く限り襲われる可能性が高い。結界の強化か。欲しいな」
「うん。まぁ、これも希望だけどね」
そうなんだよな。
確実にそうなるという証拠が何1つ無い。
「どうする?」
「そうだな……」
魔法と結界を手に入るとして考えてみようかな。
まず、魔法があれば敵が来ても倒すことが出来るよね。
……出来るかな?
最初からそんな強力な攻撃魔法なんて手に入れられると思う?
絶対無理だと思ってしまう、だって奴らだもん。
だったら、敵がせめて来たら結界ではじき飛ばす方が現実的かな?
まぁ、こっちもそんな強力な結界をすぐに手にできるとは考えないほうがいいだろうけど。
どちらがましかな。
そもそも、今の私に敵が襲ってきたからといって殺せるだろうか?
命が狙われていたら出来る?
……想像できないわ。
正当防衛という言葉がある以上出来る気がする。
でも、私は……。
「結界にしない?」
「ん? 結界という事は世界か?」
急にどうしたんだ?
なぜいきなり世界を薦める?
「うん。ごめん」
「何?」
「殺さなければ殺されるのかもしれない。でも、まだ敵だと思う者が目の前に現れても殺せる自信がない」
俺はどうだろう?
目の前に俺の命を奪おうをしている敵がいる。
そいつの命を俺は奪えるか?
奪わなければ死ぬのなら、出来るような気もする。
だが、それは頭で考えた時の事だ。
「現実で起こったら、俺は対処できるのか?」
……自分の身に起こる?
想像してみても、どこか他人事のような感覚が抜けないな。
あぁそうか、襲われる可能性があると頭で理解しているだけなんだ。
それが自分の身に本当に降りかかるとは、思っていない。
馬鹿だな、俺。
こんな状態で敵に遭遇して、戦えるのか?
ははっ、恐怖で身動きが出来なくなるかもしれないな。
「コウキ? 大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。結界を手に入れることが出来ると信じて、世界の強化をしよう」
本当に結界が得られるのかは、まったく不明だ。
だが今は、俺とアルフェを守る物が必要だ。
強くなるよりまずは守りが欲しい。
「うん」
よし、そうと決まればとっとと強化をしよう。
ヴァンがどれくらい溜まっているかは不明だが、1回ぐらいはガチャを回せるだろう。
あれ?
白いボタンがどこにも無い。
「アルフェ、上からボタンの位置わかるか?」
ボタン?
あぁ、あの先へ進むために押すボタンの事か。
視力が悪いのにわかるかな?
周りを見渡す。
……見えない。
「見えないから、ちょっと飛んで探してみる」
「あぁ、俺も探すよ」
ふ~さて、この部屋天井が高いな。
私の視力では天井からは探せないな。
地面すれすれを飛べば、何とか見えるかな。
止まり木から足を話し羽を動かす。
アルフェの飛んでいる方向を確認して反対方向を探すことにする。
それにしてもこの部屋は広すぎる。
それとも、俺たちが小さすぎるのか?
まさか、人の掌サイズとか無いよな?
何か比較対象になるモノがあればいいのに、何もないし。
それにしても、ボタンがない。
どういうことだ?
「アルフェ、合ったか?」
アルフェが飛んでいた方向へ叫ぶ。
「何もない、そっちは?」
「こっちもない」
コウキの方もないのか。
本当にどこにあるんだろう?
あ~、本当に小さな嫌がらせをしてくるな!
疲れた。
もう羽を動かしたくない。
でも、この周辺に止まり木が無い。
さっきの場所まで意地でも飛ばないと。
うろうろと探してみたが、見当たらず。
とりあえず、アルフェと合流しようと元居た場所まで戻ると、ふらふらと蛇行しながら飛ぶアルフェの姿が見えた。
「アルフェ、ふらふらしてるが大丈夫か?」
「…………」
「アルフェ?」
何かあったのか?
ふらふらとなりながらも、天井から飛び出ている棒を足で捕まえるアルフェ。
「着いた~。疲れた~。ごめん、まだ長時間飛べないみたい。飛行ってすごく体力を使うみたいで」
疲れただけか?
本当に?
「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。ゆっくり休憩したらまた飛べるようになるから」
「そうか、心配した」
「えっ! ありがとう」
しかしどうしよう、ボタンが無い。
どうやって先へ進めばいいんだ?
「ボタンが無いなら他の方法って事だよね?」
「あぁ、そうなる」
他の方法と言ってもここには何もない。
あるとしたら、私たちぐらいだ。
でも、私たちが何をすれば……声?
今の私たちに出来る事と言えば、話をするぐらい。
「お待たせしました! さぁ魔王自身? 国? 世界? どれの強化を行いますか?」
「急がないとヴァンが溜まりすぎるな」
もう一度隅から調べていくか?
「コウキ、声で指示してみて」
「えっ? 声?」
「そう、『世界の強化を行う』みたいな感じで」
「了解しました。世界の強化を始めます」
「「えっ?」」
あれ?
もしかして私の声に反応した?
「どうやらアルフェが正解だったみたいだな」
「声だったんだ。次からは声?」
「どうだろう?」
なるほど声か。
よく気付いたな。
「ありがとうな」
「なにが?」
「気付いてくれて。今から隅から調べるつもりだったから。無駄な事をせずにすんだよ」
「それをする前にわかって良かったよ」
ウィン
「さぁ! 言語を決めよう! 回して! 回して!」
女性の明るい機械音とともに、目の前にガチャが現れた。
「「…………はぁ」」
ここからはボタンではないらしい。
「これってスーパーの出入りあったりするやつですよね?」
「あぁ、確か名前は……『ガチャポン』だったはずだ」
ボタンからガチャポン?
進化したのか退化したのか、さっぱり分からない。
まぁ、とりあえずこれで先へ進めるな。
「回すぞ?」
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