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……の配下
35話
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薄暗い廊下を1人の男性が、自室に向かって歩いている。
その顔に表情は無い。
ほっそりとした体に、高い身長。
髪は青く、背中の中ほどまで長く1つに括られている。
顔の右頬に数枚鱗のようなモノがあり、それが廊下の光に薄く反射していた。
扉の前に来るとすっと手を挙げると、音もなく開く扉。
いつもの事なので、男性は迷うことなく部屋に入っていく。
来ていた上着を脱ぐと、赤く点滅している光に手を翳す。
すると、ただの壁に見えていた一部に映像が映し出された。
男性は特に気にせず映像を確認し、動きを止めた。
「まさかっ!」
映像には、2人の魔王(いや、まだ2匹と言った方が正しい風貌かもしれない)の姿がはっきりと映し出されていた。
男性は映像に近付き、魔王たちを確認する。
見間違いかと思ったが、確実に生きている事が分かる。
「生き残ったのか?」
男性は映像に手を伸ばすが、手に触れるのは壁の冷たい感触。
それにはっとして、首を横に振る。
「彼らでは対応できないモノを送ったはずだ」
少し前に異常を知らせる伝言が届いた。
確認してすぐに対応すべく、例外を作り送り込んだ。
彼らよりはるかに強い魔物を。
それで全て片付けられるはずだった。
だが、映像には生きた魔王たちが映し出されている。
そしてその近くには、送りこんだ魔物のドロップアイテムが転がっている。
この事から、魔物がすでに討伐された後だと分かる。
「どうやったんだ?」
魔王たちのLvは確認した。
Lvは2だった。
だからLv6の魔物を送り込んだ。
Lv6にLv2が勝つことなどありえない。
だが、目の前にはその常識を覆す結果がある。
「……仕方ない、次で仕留めるか」
ミスなど許されない。
「ちっ、奴が気付いて処理していれば、こんな面倒な事にならなかったのに」
見逃した奴の顔が思い出され、苦々しい思いが沸き立つ。
力がすべてのこの世界では、奴の方が俺より上。
そのため、奴に文句も言えやしない。
「仕方ない、報告に行くか」
気が進まないが仕方ない。
戻ってきたばかりの部屋から出ると、仲間の1人が部屋に戻る途中だった。
「どうしたの? なんだか機嫌が悪いみたい」
「ちょっとな」
「話せが気分が楽になるわよ?」
部屋が隣同士という事もあり、色々話すことの多い仲間。
つい、愚痴を言ってしまっても仕方ない。
「あら、珍しい失敗ね」
「はぁ、まったくだ。これから嫌味を言われに行くのかと思うと、気が滅入る」
「でも、どうしてもっと強い魔物を選ばなかったの?」
「外部との接触をまだ切っているからな、送れる最大のLvだった」
「あぁ、制約か。私も制約にてこずった事があるわ。あれ、面倒だよね~」
くすくす笑う仲間に、ため息が出る。
「笑い事じゃないんだけどね。はぁ、嫌な事を終らせて来るよ」
「頑張って、今は機嫌もいいはずよ」
そうだったらいいが。
ここ数十年はずっと機嫌が悪いからな。
仕えるこっちの身にもなれってんだ。
仲間と別れて、長い廊下を歩き続ける。
見えてきた、装飾が美しい両扉になんとも言えない気持ちが沸き上がる。
小さくため息を付き、扉を叩く。
「失礼します。ご報告させていただきたい事がございます」
少しの間の後に、入室許可が下りる。
扉が開くと薄暗い廊下とは裏腹に、明るい王座の間。
それに少し目を細め、足を前に出す。
あ~、何もかもが面倒くさい。
数段高い王座を前に、跪き頭を下げる。
そう言えば、いつからだろう。
頭を下げる事を苦痛に感じだしたのは……そんな事は、ありえないはずなのに。
その顔に表情は無い。
ほっそりとした体に、高い身長。
髪は青く、背中の中ほどまで長く1つに括られている。
顔の右頬に数枚鱗のようなモノがあり、それが廊下の光に薄く反射していた。
扉の前に来るとすっと手を挙げると、音もなく開く扉。
いつもの事なので、男性は迷うことなく部屋に入っていく。
来ていた上着を脱ぐと、赤く点滅している光に手を翳す。
すると、ただの壁に見えていた一部に映像が映し出された。
男性は特に気にせず映像を確認し、動きを止めた。
「まさかっ!」
映像には、2人の魔王(いや、まだ2匹と言った方が正しい風貌かもしれない)の姿がはっきりと映し出されていた。
男性は映像に近付き、魔王たちを確認する。
見間違いかと思ったが、確実に生きている事が分かる。
「生き残ったのか?」
男性は映像に手を伸ばすが、手に触れるのは壁の冷たい感触。
それにはっとして、首を横に振る。
「彼らでは対応できないモノを送ったはずだ」
少し前に異常を知らせる伝言が届いた。
確認してすぐに対応すべく、例外を作り送り込んだ。
彼らよりはるかに強い魔物を。
それで全て片付けられるはずだった。
だが、映像には生きた魔王たちが映し出されている。
そしてその近くには、送りこんだ魔物のドロップアイテムが転がっている。
この事から、魔物がすでに討伐された後だと分かる。
「どうやったんだ?」
魔王たちのLvは確認した。
Lvは2だった。
だからLv6の魔物を送り込んだ。
Lv6にLv2が勝つことなどありえない。
だが、目の前にはその常識を覆す結果がある。
「……仕方ない、次で仕留めるか」
ミスなど許されない。
「ちっ、奴が気付いて処理していれば、こんな面倒な事にならなかったのに」
見逃した奴の顔が思い出され、苦々しい思いが沸き立つ。
力がすべてのこの世界では、奴の方が俺より上。
そのため、奴に文句も言えやしない。
「仕方ない、報告に行くか」
気が進まないが仕方ない。
戻ってきたばかりの部屋から出ると、仲間の1人が部屋に戻る途中だった。
「どうしたの? なんだか機嫌が悪いみたい」
「ちょっとな」
「話せが気分が楽になるわよ?」
部屋が隣同士という事もあり、色々話すことの多い仲間。
つい、愚痴を言ってしまっても仕方ない。
「あら、珍しい失敗ね」
「はぁ、まったくだ。これから嫌味を言われに行くのかと思うと、気が滅入る」
「でも、どうしてもっと強い魔物を選ばなかったの?」
「外部との接触をまだ切っているからな、送れる最大のLvだった」
「あぁ、制約か。私も制約にてこずった事があるわ。あれ、面倒だよね~」
くすくす笑う仲間に、ため息が出る。
「笑い事じゃないんだけどね。はぁ、嫌な事を終らせて来るよ」
「頑張って、今は機嫌もいいはずよ」
そうだったらいいが。
ここ数十年はずっと機嫌が悪いからな。
仕えるこっちの身にもなれってんだ。
仲間と別れて、長い廊下を歩き続ける。
見えてきた、装飾が美しい両扉になんとも言えない気持ちが沸き上がる。
小さくため息を付き、扉を叩く。
「失礼します。ご報告させていただきたい事がございます」
少しの間の後に、入室許可が下りる。
扉が開くと薄暗い廊下とは裏腹に、明るい王座の間。
それに少し目を細め、足を前に出す。
あ~、何もかもが面倒くさい。
数段高い王座を前に、跪き頭を下げる。
そう言えば、いつからだろう。
頭を下げる事を苦痛に感じだしたのは……そんな事は、ありえないはずなのに。
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