恋の残滓と愛の純光

好きに呼べ。

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優弥と可奈

優弥と可奈 エピローグ

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 優弥が可奈と別れた日の夜。

 再び彼女からLINEが来た、“さっきはごめん”、“私どうかしてた”と。

 そして“電話しても良い?”、“どうしても話したい事があるんだ”と。

 それに対して優弥は“俺は全然気にして無いよ”、“だから可奈も気にするな”と返して“電話なら構わないよ?”、“いまは時間があるからさ”と綴った。

 すると。

 直後にスマートフォンが振動し、可奈から電話が掛かって来る。

「・・・も、もしもし。優ちゃん。可奈です」

「もしもし?どうしたんだよ、可奈・・・」

「うん、あのね・・・?さっきはごめん、私。本当に最低だった・・・」

「・・・いいや?別に。まあちょっと驚きはしたけどね、だけどどうって事無いよ」

 優弥はここでも本心を告げるがこう言う彼の反応と言うか態度は一々可奈を刺激する。

「ねえ優ちゃん。どうして翔くんが死んだときに帰って来なかったの・・・?」

「あの時はまだ藻掻いている真っ最中だったからね、とにかく君や兄さんのいる場所だとか、自宅には近付きたく無かったんだ。・・・それに当時は付き合っていた子もいたしね?その子の所に身を寄せていたから」

「・・・それじゃ翔くんが死んだ事は、何とも思わなかったの?私の事は“ザマーミロ”って思ったでしょ?」

「ううん。それは全く思わなかったよ?いいや、少しは思ったかも知れないけれど。それよりも何よりもホッとした、と言うのが正直な所かな?とにかく兄さんが死んだときに“ああ、これで兄さんを忘れられる”って思った。“いなくなってしまったヤツの事なんか考えても仕方が無い”って、あの時は真面目に考えていたからね・・・」

「・・・それじゃ私の事も、“死ねば良い”って思ってた?そうすれば私からも解放されるもんね。どう?当たりでしょ!!!」

「・・・可奈に“死んで欲しい”ってこいねがった事は一度も無いよ?これは兄さんに対してもそうだったけど、別に可奈や兄さんが悪い訳では無いからね。だから“何とかして忘れたい”、“乗り越えなくてはならない”とは思ったけれども“死んで欲しい”って願った事は一度も無い。・・・ま、“思いそうになった”事は何度かあったけどね?」

 それを聞いた可奈は“そっか・・・”とちょっとだけホッとしたような声を発した、その時までは少し緊張していたようだったから、肩の力が抜けたのかも知れない。

「ねえ、優ちゃん。さっき教えてくれたよね?“祈る事が愛なんだ”って。私はね?いままで凄く苦しかったんだ、翔くんがいなくなってから気持ちも心も宙ぶらりんになっちゃって。何て言うかね?糸が切れたみたいになっちゃったの・・・」

「・・・・・。うん、それで?」

「私ね?本当は今日、あの場所で優ちゃんを焚き付けて、“抱いて欲しい”って思ってたんだ。“お前は俺の女だ”って言って、力任せに貪り尽くして欲しかった。翔くんを忘れさせて欲しかったんだよ?」

 “もう嫌だったんだ”、“これ以上辛い思いをするのは耐えられなかった”と事ここに至って漸く可奈は自分の本心を口にする。

「翔くんがいなくなってからね?私は“生き甲斐”をなくしちゃったんだ、本気で翔くんの事が大好きだったから。だからね?その寂しさを優ちゃんで穴埋めしようとしたんだよ。本当にごめんね?私、本当に最低だったと思う・・・」

「・・・だけど、でも。こんな電話をしてきたと言う事は、いまはもう違うんだろ?」

「うん。優ちゃんに言われて目が覚めたよ、私。都合が良かったんだね?翔くんの為に祈る事もしないでただただ、自分の事しか考えていなかった。だから今日、優ちゃんに“死んだら愛が終わるなんて有り得ない”って言われてさ、ちょっと考えさせられたんだ。ハッとさせられたって言うのかな?とにかく目が覚める感じがした・・・」

 そう言った可奈の言葉には、漸くにして負の思いから解き放たれた者だけに現れる清々しさと言うか、力強さがあった。

「私、今日気付いたの。私はね?翔くんの分まで生きるって、これからもずっと翔くんの事を思い続けて生きるんだって。いつか私もあっちの世界に行った時に、胸を張って翔くんに会えるようにする為に・・・」

 それを聞いた優弥は内心で“良かった”と思った、“可奈はいま、芯から兄さんのモノになったんだ”、“兄さんだけのモノになったんだ”と。

 可奈はこの先、一生兄への思いを胸に抱いて生きて行くつもりなのだろう、その強い覚悟と決意とが、ありありと伝わって来た。

「私はね、優ちゃん。いまは凄く幸せだよ?だってこんなステキな世界に生まれて来れて、翔くんみたいな格好良い人に出会えて・・・。たった一度の本気の恋が出来たんだから!!!ただね?ほんの少しだけ、世の中の他のカップルより不幸せだっただけ・・・。そうでしょ?」

「あはは・・・。可奈、兄さんはね?いつも可奈と一緒に居るよ?心を向ければすぐにでも、思いと言うのは通じ合えるモノだからね・・・」

「・・・そっか、うん。そうだよね!!?」

 それを聞いた可奈は嬉しそうに応えるが、なんだか吹っ切れたような感じが電話越しにも伝わって来て、思わず優弥を安心させる。

「有り難う、優ちゃん。優ちゃんがいなかったら私、ずっとずっと苦しんで、悲しんで・・・。とんでもない事になっていたと思う、自分を見失っていたと思うから。だから本当に有り難う!!!」

「可奈、もう大丈夫みたいだね?本当に吹っ切れたような感じがするよ、昔みたいな眩しさを感じる・・・」

「あははっ、なにそれ。凄いキザだよ?優ちゃん!!!」

 笑いながらそう言うと、可奈は更に続けた。

「ねえ優ちゃん、私はもう大丈夫だから・・・。だから今度からはその優しさを、他の人の為に使ってあげて欲しいの。大丈夫、きっと優ちゃんも巡り会えるよ?“自分だけの女の子”に・・・」

「・・・自分だけの?」

「そうだよ?優ちゃんだけの女の子。これからはその子を探してあげて欲しいの、きっとその子はいまは何処かでひとりぼっちで苦しんでいると思う。泣いていると思うから・・・!!!だからその子を探してあげて?その子を癒してあげて欲しいの、寄り添ってあげて欲しいの。・・・いままで私にそうしてくれたように」

 “いつかその人と出会えたら”、“私にも紹介してね?優ちゃん!!!”と、明るい口調でそう言うと、最後に“約束だからね?”と告げて可奈は電話を切った。

「・・・・・」

(兄さん、これで良いんだろ?)

 本当の意味で初恋から卒業する事が出来た優弥は、スマートフォンの画面を暗くした後に心の中で、今は亡き兄に向かってそう呟いた。
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