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ガリア帝国編
因縁との決着
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女王位だけが発動できる無敵状態である“フルバーストモード”を取りつつも、更に超過活性(オーバードライヴ)を使用しているその挙げ句の果てにはアウロラから各種呪文の加護を受けたメリアリアとオリヴィアが、デュマとの間合いを制して彼の者に肉薄するまでそう時間は掛からなかった。
彼女達は勇敢だった、そして一途で健気であった、少しの恐れも迷いもなく、ただただひたすら夫の為に、即ち蒼太の為だけにその身を捧げ、その命を燃え上がらせていたのであるモノの、そうなのだ、もし見る者が見たならばこの時、蒼太は論の事、メリアリアもアウロラもオリヴィアも、皆“善の善たるモノの中”にいた、彼等は紛れもなく“光”であり、その煌々たる輝きは闇を撥ね除けて寄せ付けなかったが、その一方で
“闇”を纏いし存在は、それでも尚も現在であり、獰猛であり、恐ろしい程の狂気に満ち満ちていた、“彼”は紛れもなく“魔の主”であり幾重にも重なり合って練り込められていたその歪みと憎しみの波動はこの時のメリアリア達を以てしてでも決して容易に消せる様なものでは無かったのである。
しかし。
「たああぁぁぁっ!!!」
「てやああぁぁぁっ!!!」
「グルルルルルル・・・ッ!!?」
“光”の戦士達は、それにも少しも怯むことなく、そしていっそ力強くこの難敵目掛けて立ち向かって行った、闇を切り裂き、四散させ、彼の者の正体を白日の下に晒し出して行くモノの、今の彼女達の動態能力は時速120キロを超えており、そこから繰り出される連携攻撃は息つく間もなく闇を、“アレクセイ・デュマ”を追い込んでいった。
今回はメリアリアは勿論の事、オリヴィアもまた最初から“様子見”等という小賢しい手は使わずに、ただただひたすら全力を投入させ続けていたモノの、それは全て夫への愛と信頼とが為せる業であったのだ。
彼は言った、“後を頼む”と、“僕に時間を与えてくれ”と。
そして自身は何の躊躇いも無く“神人化”の為の祈りに埋没して行ってしまったのだが一瞬の気の迷いが即座に死に直結する戦場において、如何に頼りになる味方がいる、とは言えども“任せる”と言って本当に己の無防備を晒す事はそんなに容易く行える事では無い、それを蒼太はやってくれたのである。
・・・自分達に自身の命運も何もかもを全て託したままで、それだからこそ。
メリアリア達にもまた、何の迷いもありはしなかった、“この人の為に死ぬ!!!”、“ここでこそ命を懸けるんだ!!!”とただその事のみを念頭に置いて矢継ぎ早に攻撃を繰り出し続けていったのである。
メリアリアはその“茨の聖鞭”に自身の最終奥義である“絶対熱”を顕現させては纏わり付かせ、デュマに向かって縦横無尽に打ち振るい続けていったがもう一方のオリヴィアもまた、自身の愛刀である“エル・パシオス”にその極意中核たる“パルサー呪文”を発動させては伝わらせ、“閃光剣”としていたのであった。
それを。
「はああぁぁぁっ!!!」
「そりゃああぁぁぁっ!!!」
「ガルルルルルルル・・・ッ!!!」
夫の両親の仇であり、自分達にとっても“最大最強の障壁”であるレプティリアンに叩き付けていたのであったがこの内、“絶対熱”は実に摂氏14溝2000穣度にまで達する、宇宙創成のエネルギーでありそこにメリアリアは自身の霊力を練り込ませて攻撃に用いていた訳であったが、オリヴィアの側も実情は似たようなモノであった、即ち。
“宇宙の灯台”とまで呼ばれている“クエイサー”の放つ、超エックス線ビームである“パルサー”を発現させては己の法力と混ぜ合わせつつ、それをデュマに向かって解き放ち、彼の者のオーラと肉体とをしこたまに焼き切って行ったのである。
「ガルルルルルルルッ!!!」
(こ、小娘共めが!!?此奴らまでもが先日よりも力を確実に増しておる。此方が躱せない様に躱せない様に、瞬時に狙いを定めて攻撃を繰り出して来よる・・・っ!!!)
デュマは焦るがそれほどまでに今の彼女達の凄まじさは圧巻の一言であった、無論デュマとてやられっ放しでは決して無く、“死神の鎌”に変わって装備した“クレイディフ・シュバルツ”によってメリアリアの鞭を打ち払い、オリヴィアの鋭峰を防ぐぎつつも反撃を行うモノの、彼女達の見せる連携攻撃の熾烈さは他に類を見ない程であり、此方に何かをさせる暇(いとま)を全く与えてはくれなかったのだ。
“絶対熱の炎”を纏ったメリアリアはまさに“光輝玉の茨姫”の名前に相応しく、一方でパルサー呪文を発動させていたオリヴィアもまた、全てを超越するとされる“氷炎の大騎士”そのものであった。
“ビューン”、“ビュバッ!!”、“ヒュン!!!”と金色に輝くメリアリアの鞭が極炎となって虚空を切り裂いて迫り行き、それと同時に銀色に煌めくオリヴィアの剣が煌めいたと思ったらその切っ先が自身の喉仏の先にあって、それらを必死に対応しては後退しつつも身を捩って躱すだけで精一杯になってしまっていたのである。
その上。
「ぐ、ぐっ。くそっ、バカなああぁぁぁっ!!!」
デュマから苦痛の声が漏れるが後方に飛んで距離を取ろうにもメリアリア達に動きを先読みされて近接戦闘を仕掛けられる上に、頭上に逃れようともそこにはアウロラよって形作られた爆雷魔法の光球が眩く照り付け続けていた。
これは無駄に“超”高威力、また“超”広範囲の“星振魔法”を適正な威力と効果範囲に組み直したモノであり、アウロラの号令の下何時でも圧縮されたプラズマ波動球が炸裂して相手に確実にダメージを負わせる仕様になっていたのだ。
「くうぅぅぅっ。クソッ、このっ。此奴らっ!!!」
キンッ、キンッ!!ガキイイィィィンッ。ビュバッ!!!と聖鞭と宝剣、魔剣が幾度となく激突し、そこかしこに火花が飛び散って行く。
だがしかし、まだ余力を残しているメリアリア達に比べてデュマは目一杯に苦しそうである、無理も無かったが今のメリアリアやオリヴィアは通常でも一秒間に三、四発、多い時だと五、六発もの攻撃回数を誇っていてその嵐の様な連打連撃の雨霰(あめあられ)を、デュマは懸命に躱して防ぎ、何としてでも間合いを取るべく奮闘していた。
この時のデュマはハッキリと確信していた、いいや“改めて思い知っていた”と言った方が良かったが、“間違い無い”と彼は判断していた、“この小娘共は、あの小僧等よりも格段に強い”と。
(単に動きが良いだけでは無い。見切り、体捌き、技のキレ。どれをとってもあの小僧よりも鋭く強く、こちらに深く食い込んで来る・・・っ!!!)
事ここに至って。
デュマは“コイツらを倒すためには獄法を使うしかない”と“それ”を使う事を渇望したが、しかし。
その為の一瞬の隙が奪えなかった、“それある事”を予測していたメリアリア達はデュマに迎撃態勢を敷かれない様に、打ち難い様に打ち難い様に突っ込んで来ては、致命傷は無理ではあっても確実にダメージを与え続けて行く。
先程までの蒼太によって付けられたモノは“レプティリアン化”した際にデュマ自身が解き放ちたる“暗黒魔力”が癒してくれていた、この分厚い闇のオーラは周囲の空間を歪めて攻撃を防ぎ、憖(なまじ)っかな呪文等は何もせずとも弾き飛ばしてしまう効能を持っていたのであったがメリアリア達の操るそれらは強力な事この上なく、また鋭かった。
デュマのオーラごと、彼の体を切り裂いて鱗で形作られていた皮膚を強かに打ちのめし、その筋肉を抉り取るがお陰でデュマはその全身が再び傷だらけになってしまっており、彼方此方からドス黒い血が噴出している。
もっとも。
それはメリアリア達もまた、同様であったのであるモノのデュマも、そして彼の魔剣である“クレイディフ・シュバルツ”もまた、その禍々しさは少しも衰えていなかった、否、其れ処か。
「グルガアアアアアッ!!!」
「くううぅぅぅっ!!!」
「ちいいぃぃぃっ!!!」
漆黒のプラズマ波動を纏いし彼の者は、その暗黒剣を巧みに操り、自らが傷付くのを覚悟の上でメリアリア達に肉薄、攻撃の挙動の際にどうしても一瞬だけ出来てしまう僅かな隙を突いて(もっともそれは他の者達にとっては隙とさえ呼べない、まさに極瞬の閃刻の合間の出来事でしか無かったのであったが・・・)カウンターでの反撃を行っていった。
魔力で付けられてしまった傷は呪いのそれと一緒で非常に高度な回復呪文か特殊な祈祷、もしくは神力でしか回復させる事が出来ないのであり、一般的な魔法では用を為さない、防御も無理だ。
メリアリア達はそれを知っていた、知っていて尚も突っ込んで行ったのだから、彼女達もまた彼方此方で傷付き打たれて、そこかしこから皮膚が破れ、血が流れ出して来ていた。
しかし。
「ていやああぁぁぁっ!!!」
「まだまだああぁぁぁっ!!!」
「グルゴオオオオオオオッ!!?」
それでも尚もメリアリアとオリヴィアは攻撃の手を緩めずに徹底的に打ちのめし、突き刺し、切り伏せる。
デュマも負けじと応戦して剣を振るい、突き立てて来た、お互いがお互いを牽制しつつ行動している為にどうしても最後の一歩が踏み込めずに、つまりお互いに攻めきれないまま一見互角か、メリアリア達にやや優性な攻防が二十数分程続いた、その時だ。
「メリアリアさん、オリヴィアさん。下がって下さい!!!」
流石にこのままではメリアリア達が限界を迎えてしまうと察したアウロラが、まだ彼女達に余力が残されている内に自身も攻撃に加わるべきだと判断してそれまで上空に出現させるだけだった“爆雷魔法”を次々とデュマ目掛けて打ち下ろして行く。
その数実に37個、円陣に組まれたそれらは互いに影響を及ぼし合いながら落下するとメリアリア達が離れるのと前後してデュマの周りを幾重にも取り囲むように回転し始め、それと同時にー。
デュマの体が宙に浮かび上がり、徐々に徐々に上空へと向けて巻き上げられていった。
「グゴオオオオオオオッ!!?」
デュマは思わず驚愕した、いや驚愕自体はメリアリア達の戦い方自体に既に何度となく抱いて来ていたから改めて目を見張った、と言う方が正しかったがレプティリアンと化した自分には暗黒魔力の極めて強力なバリアーがあるのである、それにも関わらず、その周囲の空間力場ごと自分を空中に浮遊させる程強力な魔法力等、デュマはそれまでの人生の中で見た事も無ければ聞いた事も無かったのだ。
(・・・・・っ。あ、あの青髪の小娘かっ。今度は一体、何をするつもりなのだっ!!?)
一体何者の仕業かと思えば一人離れた位置にいて魔法による援護を行っていた、青髪の少女の姿に目がいった、彼女の周囲には過剰とも思える程の魔法力が渦を巻いており、誰がこの状況を作り出しているのかは一目瞭然であったのである。
ところが。
デュマが自分に纏わり付いてくる空間力場を解除しようと藻掻き始めた際にはもう、既に彼の体は遙かな上空にまで持ち上げられてしまっていた、そこで。
アウロラは一気に賭けにでた、彼女は爆雷魔法を単に攻撃の為にのみ生成していた訳では決して無かったのであるモノの、その真の目的は。
「・・・・・っ!!?」
(な、なんだ!!?この強力な磁力はっ。いつの間に出現していたというのだ!!?い、いや違うぞ、事態はそれどころではない。レプティリアンと化していなければ、これに近付くだけで即死か大ダメージを負わされていた所だったが・・・っ!!!)
一つは遙か上空に極秘裏の内に出現させていた“星振魔法”の中核とも言える超極小サイズのマグネターに充分な減衰運動を引き起こさせる為の火種として利用させるため、そしてもう一つが、プラズマ波動を互いに連動させて反磁力を生成させ、デュマを上空に引っ張り上げる為の手段。
その双方を満たすための布石として彼女は爆雷魔法をこれだけの数、生成していたのである、後はもう、アウロラの独壇場だった、流れる様に“反粒子重力曲線”でコーティングされている“亜空間フィールド”を生成して行く。
「グオオオオオオオッ!!!!?」
(な、なんだ!!?これはっ。中心で魔力の暴発が起きているのか・・・っ!!?)
「“ステッラ・アラビア・シンティラーレ”!!」
戸惑い続けるデュマを他所に、アウロラが爆雷魔法の光球をマグネターに全て吸収、合体させて行き、“星振”の準備を整える、そうしておいてー。
最後の最後で極限にまで達した回転磁場にアウロラが名前を与えて命を吹き込み、この世に呪文を顕現させてはそのエネルギー波を瞬間的に、一気に開放して見せた、その直後に。
頭上の空が黄金色に眩く煌めきそれが十数秒間も続いた後で今度は凄まじいまでの、爆音と轟音とが響き渡るモノのアウロラの生成させた超極小サイズのマグネターが全球面破壊を巻き起こしてそこからは莫大な量のエネルギー波と衝撃波とが光速に近い速度で四方八方に向けて飛び散って行ったのだ。
あまりに凄まじいエネルギーを秘めたその爆発は亜空間フィールドを持ってしても吸収しきれずに限界をもたらして崩壊させてしまったのであり、爆音が響いて来たのはその証であった。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
(アウロラの、星振魔法・・・っ!!!)
(や、やったのか・・・っ!!?)
遙かな上空を見上げていたメリアリア達が同時に思うが普通の敵ならば骨どころか髪の毛一本残らぬであろう、その猛爆の鉄槌に、さしものデュマも生きてはいないのではないか?と二人は一瞬、半ば本気で思えた程だ。
しかもメリアリア達がそうしていた様に、アウロラもまた自分の波動エネルギーを魔法力にミックスさせてぶっ放していたのであり、その威力は強烈な事この上無かったが、しかし。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「あ、ああ・・・っ!!?」
遙かな上空から下がってくる物体を最初、メリアリア達は“死体だろう”と思っていた、それほどまでに“それ”は薄汚くて煤けており、黒焦げであったからである。
だが。
そう思ったのもほんの束の間の出来事であり、三人は直ちに迎撃態勢を取って身構えるが何と落下してくる物体が突如として蠢いたかと思うと次の瞬間、夥しいまでの殺気と魔力とを放出して行き、四肢を自由に動かして落着の体勢に入ったのである。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
「生きて、いた・・・っ!!!」
三人は驚きつつもしかし、それでもしっかりと戦闘準備を整えては“それ”が落ちて来るのを待っていた、“まだだ、自分はまだ死んではいけない”、“蒼太の為にもまだ命の炎を消すわけにはいかないんだ!!!”と、“何としてでもここは守り切ってみせる!!!”と気合い一閃、下っ腹に力を入れて全身に波動と空気と意識を巡らせ、神経を研ぎ澄ませる。
次の瞬間。
ズドオオオォォォォンッ!!!!!と言う爆音と同時に砂埃が辺りに立ち込め、“それ”が遂に地上へと降り立ったが、さて。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「はぁーっ、はぁーっ。ふううぅぅぅ・・・っ!!!ク、クックックッ。ハーッハッハッハッハッ、やってくれたな小娘共!!!」
“それ”が“デュマ”が高らかに呵々大笑する。
「だが残念だったな。このレプティリアンの体にならば、何処だろうと生きて行く事が可能となる。例えそれが溶岩の中だろうと極寒の海だろうと、はたまた宇宙空間だろうとな!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「く・・・っ!!!」
「しかし驚いたぞ?小娘共、まさか“宇宙の力”を扱えるとは・・・っ!!!」
そう言うとデュマは“しかし”と言い放った、“今度は此方の番だ!!!”とそう言って。
「お返しに貴様らにはタップリと思い知らせてやろうぞ?“闇の魔道を極めし者”、その恐ろしさを嫌と言う程にな!!!」
そう言ってデュマが両手を胸の前で合わせ、“獄法”を発動させようとした、その時だ。
「・・・・・っ!!!!!?」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「こ、この波動は・・・っ!!?」
三人の背後、蒼太のいる辺りから限りない程に神々しくて、優しさに満ち溢れた光の波動が解き放たれて周囲を包み込んで行く。
「・・・・・っ。あ、ああっ!!?」
「うおおおっ!!?こ、これ程とは!!!」
「す、凄いっ。これが蒼太さんの・・・っ!!!」
三人が驚いてその方角を振り向くと、そこには頭の両側に髪の毛を纏め上げ、五つの勾玉の付いた首飾りを首に掛け、立派な十拳の剣を佩いた、一柱の神の姿があった。
「・・・・・っ。あ、ああっ。あなたっ!!!」
「蒼太・・・っ!!!」
「蒼太さん・・・っ!!!」
「メリー、アウロラ、オリヴィア・・・ッ。みんなみんな、ありがとう・・・っ!!!」
“神”となった蒼太は花嫁達全員に一礼すると“後は任せて”と言い放ち、自らはデュマに向かって歩を進めて行った。
「・・・・・っ。あなた!!!」
「蒼太さんっ!!!」
「蒼太っ!!!」
「・・・・・っ。みんな祈っていてくれ。僕が勝てる様にと、そして常に僕と一緒にいられるようにと。そうやって最後まで戦って欲しい、僕と共にあって欲しい!!!」
「あなた・・・っ。うん!!!」
「はいですっ!!!」
「心得たっ!!!」
尚も自分に追い縋ろうとしている花嫁達全員にそう応えると。
蒼太は再びゆっくりゆっくりと、しかし確かに力強い足音を響かせながら、メイヨール・デュマへと向けて距離を詰めて行ったのである。
「・・・・・っ。こ、小僧っ。貴様その姿は!!!」
「待たせたなデュマ。この姿に付いてはお前ならば既に知っているだろう・・・!!!」
そう言うが早いか蒼太は。
「“神威、神空断絶”!!!」
そう叫んで周囲かなりの範囲に渡って結界を張り巡らせ、その内側を完全に異空間に変換させる。
「ここならば多少、暴れても問題は無いだろう。お前とはここでケリを着ける!!!」
「小僧・・・っ!!!」
そう言ってレプティリアンと化したデュマと対峙する事、実に5分。
その間二人は無言で相手を睨み付け、出方を窺っていたモノの、やがてー。
漸く“時”が動き始めた、最初に仕掛けたのはデュマである、彼は躊躇わず獄法を用いると蒼太への攻撃を開始した。
「獄法、黒雲葬送!!!」
「神威、神空裂破!!!」
その言葉を皮切りに。
一柱の神と一匹の魔獣との戦いの火蓋が切っておとされたのである。
黒雲葬送とは魔力をふんだんに含んだ黒雲を出現させて、そこから絶え間なく降り続ける“影の雨”で以て相手を滅多矢鱈に串刺しにしてしまうと言う、残忍で恐ろしい地獄の刑法魔道であったが対する蒼太はその黒雲を刹那にすらも満たない程の、僅かな刻限の間に巻き起こされたる“神風の嵐”によって形成された、これ以上無いほどに強力で鋭利な無数の“真空の刃”で瞬く間に切り刻んで吹き飛ばしてみせたのであった。
「まだだ。獄法、天乱哭走!!!」
「神威、神翼天翔!!!」
それならばとデュマは今度は超が付くほどに巨大な黒雲のスーパーセルを形成させて、赤黒い邪悪な稲妻を蒼太に連続して落とそうとするモノの、蒼太は先程の神威によって辺り一面に吹き荒れていた神のエネルギーによって生み出されていた膨大な数の極めて鋭利な真空の刃を掌一点にまで極集役してそれを一挙に頭上の黒雲目掛けて叩き付け、またも雲散霧消させてしまった。
「獄法、生殺簒奪!!!」
「神威、天地総攬!!!」
今度はデュマは地獄の刑法に照らし合わせて相手の生殺与奪の権利を奪うと言う、所謂(いわゆる)一種の“即死技”を掛けて来た、それを迎え撃つべく蒼太か使用したのが対象者の命運の審判を神々に仰ぐ最高の神威の一つであり、神による裁きを直接的に受ける為に対象者は逃げも隠れもその裁きの結果を防ぐ事も出来なくなる、と言った内容のモノだったのだ。
「獄法、制天魔道!!!」
「神威、破獄天生!!!」
彼はそれを自らに対して用いたのであり、要するにデュマの獄法を無力化したのであるモノの、すると業を煮やしたデュマは最後の賭けに打って出た、この時にデュマが用いた獄法はどう言うモノなのか、と言えばそれは神威を打ち破る為に開発されたそれであり、“宇宙の法則”をその身に宿している事が特徴であった、即ち。
生々流転を繰り返す宇宙の営みの中の“破壊”のエネルギーを極限にまで詰め込んで体現したモノであり、この獄法を上回る力は存在しない上に“真理”に則って生み出されている為にどうやっても打ち消したり、防いだりする事が出来ないと言う厄介極まりない代物であったが一方で蒼太が用いた神威もまた、この恐るべき獄法を完全に破却する事を目的に、新たに生み出されたモノであったのである。
それというのもこの神威もまた“制天魔道”と同じように“宇宙の法則”をその身に宿している事が最大のポイントであり、生々流転する宇宙の内でも特に“創生の能力と意思”そのものを目一杯にまで凝縮し尽くして誕生して来たそれであったが、宇宙の愛と正義と法則の全てを内包していたこの神威にはそれだから、ある桁外れな神能が宿されていた、即ち。
“やった事はやり返される”と言うそれであったがこれもまた真理の一つであって故に宇宙に存在しているありとあらゆる存在も力もこれからは決して逃れる事は出来ない、とされていたのだ。
蒼太は敢えてこの神威を用いる事にした、即ちデュマが放った最強の破壊の力をそっくりそのままデュマ本人に跳ね返してしまったのである。
結果。
「ぐわああああああああっ!!!!!?」
それまでの均衡が一挙に崩れ、デュマが遙かな彼方にまで吹き飛ばされたが、しかしそれをただ黙って眺めている蒼太では無かった、追撃の為の神威が直ちに生成されてはデュマに追い打ちを掛けて行った。
「神威、黄雷雪花!!!」
「神威、王雷絶華!!!」
「神威、神皇花蕾!!!」
「ぐがああああああああっ!!!!!?」
刹那にも満たない合間に駆け抜けて行く、追撃の神威の怒濤の様なエネルギーの奔流にデュマは体をボロボロにしながらそれでも必死に絶え続けていた、しかしこれは拙(まず)い、余りにも拙(まず)い展開だったのだ。
どうやらあの男の神威の力は本物の様だ、その証拠に自分は明らかに劣勢に立たされていた、しかも奴は。
此方が放った最終獄法である“制天魔道”すら打ち破ってみせたのである、これは本物と認めざるを得ない。
(し、信じられん。あの若さで我が“地獄の刑法”を、“獄門の道”を打ち破るとは。し、しかし・・・っ!!!)
デュマは思った、このままでは本気で拙いと、しかしながら。
最早蒼太の溢れんばかりに輝かしい光の神力の前に魔力のオーラは役に立たず、完全に四散してしまっていた、体は全体的に切り刻まれて焼け焦げ、ダメージが蓄積している、蒼太の攻撃が凄まじ過ぎて回復が全く追い付かないのだ。
そうしている内にー。
デュマは奇妙な事に気が付いた、自分の体の彼方此方が光の粒子となって行き、徐々に消え始めてしまっていた、最早これ以上の攻撃を食らうのは絶対に阻止しなければならなかったが、如何せん力が入らない。
完全に誤算だった、とそう思った、まさか“神人化”を扱える大和民族が未だに生き残っていた、等とは。
しかしこのままここで朽ち果てる訳にはいかなかった、かくなる上は。
「ク、クレイディフ・シュバルツ!!!」
デュマは最後の最後まで己が肌身離さず持ち歩いていた魔剣に“すまんな・・・”と声を掛けると次の瞬間、何とその鋭い牙と耳まで裂けた顎の筋肉を駆使して魔剣を切っ先から貪り食い始めてその魔力を体内へと取り込み始めたではないか。
これには蒼太も驚愕した、まさかそんな手妻(てづま)が残されていた等とは。
しかし。
蒼太にだってそれはあった、別に聖剣を貪り食う、等と言う離れ技と言うか大道芸をやってのけるつもりなど毛頭無かった、そんな事をしなくとも彼には力を貸してくれる存在がまだまだ大勢いたのだから。
そして。
その内の最も愛して止まない存在達に、信頼している存在達に蒼太は声を掛ける事にした。
「メリー、アウロラ、オリヴィア。僕に力を貸してくれ!!!」
「あなた・・・っ。はい!!!」
「使って下さいっ!!!」
「待ち侘びていたぞっ!!!」
三人はそう言うと蒼太の為にとますます集中して祈り始めた、夫が何を望んでいるのかが手に取るようにして理解出来た為だったがそんな彼女達の純粋なる真心は蒼太に十二分に響き渡って来た、神となっている今の彼にはそう言った人の思いや念と言うモノが、よくよく伝わって来るようになっていたのであるモノの、それを感じ取った蒼太は。
不意に剣の柄を取って抜き去ると、そこに金色に輝く焔熱である“絶対熱の炎”を纏わせ始めた、そうしておいてー。
「グガアアアアアアアアッ!!!」
瞬く間に魔力を蓄えて反撃に転じて来たデュマを振り返り様に脳天唐竹割りにして返り討ちにするモノの、それは紛れもなく“ハイラート・ミラクル”の力であり、蒼太の神力にメリアリアの霊力を加えた一撃だったのである。
「・・・“天生・極炎煌”!!!」
「グルアアアアアアアアッ!!?」
死の瞬間に断末魔の声を挙げるデュマに対して蒼太は更に、二撃を加える事にした。
「“明光・星界嘯”!!!」
「“閃永・瞬絶華”!!!」
この二振りの必殺の斬撃によって。
蒼太はデュマの胸を横一文字に心臓ごと切り裂き、更には首を体から断絶させてデュマの生涯に幕を閉じさせたのであるモノの、しかし。
「神威、悪鬼滅砕!!!」
「グルガアアアアアアアア・・・ッ!!!!!」
最後の最後でとどめを刺すことを、蒼太は忘れてはいなかった、光の粒子となって消えゆくデュマに対してすかさず“最終神威”を発動させるとその存在の根幹を為している魂ごと彼を抹殺し尽くした挙げ句の果てには暫くの間“残心”を取って周囲の様子を窺った後に、漸く安心だと判断して笑顔で花嫁達の元へと歩いて戻って行ったのである。
「・・・・・っ。メリー、アウロラ。オリヴィア!!!」
「・・・・・っ。あ、あなた?」
「蒼太さん・・・?」
「蒼太・・・!!?」
“終わったの・・・?”と恐る恐る尋ねるメリアリア達に対して蒼太は“ああっ!!!”と力強く頷いて応えた、“終わったよ・・・!!!”とそう言って。
「アイツは・・・。デュマは滅んだ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「あ、ああ・・・っ!!!」
「そ、蒼太。君は・・・っ!!!」
そこまで告げた花嫁達が、まだ何事かを続けようとしたその時だった。
「神威、神饌招来!!!」
蒼太が突然、胸の前で両手を合わせ、新たな神威を招来させるがこれは回復技であり、単なる肉体の傷や疲労を癒して復力させるのみならず、様々な状態異常や呪い、毒気なども全て纏めて解除、浄化する効能を持っていたのだ。
「・・・・・っ。帰ろう、元の世界へ」
眩いばかりの輝きに包まれ、癒されて行く花嫁達を笑顔で見つめながら蒼太はそう言って、“神威、神空断絶”を解除する、すると。
虹色に輝く白っぽい眉がシュルシュルシュルッと消えて行き、元の青空が頭上を覆っていたのであるが、その空は今まで彼等が見た中で一番透き通っており、何処までも青く青く澄み渡っている様に見えた。
「・・・・・っ。本部、此方“α”。使命は達成された、繰り返す、使命は達成された!!!」
“神人化”を解いてセイレーン本部及びミラベルに事の顛末をそう述べると。
蒼太は彼等の援護の為にとポールが派遣してくれていた諜報員に、デュマを倒した証拠品として完全に無力化されて朽ち果てていた“死神の鎌”を提示して本部に持っていってもらう事にして自分達は、足早にバチカンを後にした。
“父さん、母さん”と蒼太は胸中で思いを巡らせていた、“やったよ!!!”とそう言って、すると。
「おじ様、おば様。いいえ義父様、義母様。どうか見守っていて下さい・・・!!!」
彼の側にいたメリアリアもまた、そんな蒼太の思いに何かを感じ取ったかのようにそう告げて天を仰ぎ、その双眸をソッと瞑った。
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ずっと以前に何処かの後書きか何かで書かせていただいたのですが、蒼太君は“神人化”すればマグマの中や極寒の深海、はたまた宇宙空間でも平然と生きて行けます。
そしてそれはレプティリアン化したデュマも同様です、ですので“星振魔法”ではデュマにとどめが差し切れなかったのですね(もし“人間形態”の時であれば、“マグネター”に接近した段階でその潮汐力により体が細く引き延ばされて、デュマはたったそれだけで死に絶えていたでしょう)、またもう一つだけ、言わせていただきますとメリアリアちゃんやアウロラちゃん、オリヴィアちゃんの扱う“絶対熱の極意”、“星振魔法”、“パルサー呪文”は単なる物理破壊技ではありません。
ただでさえ、あれらには“宇宙の力”が宿っています、それに加えてメリアリアちゃん達の“霊力”がミックスされているので七次元まで影響を及ぼせるのです(蒼太君の神威は八次元の表層までです←神威自体は極めれば極める程、十次元でも十三次元でもその効能を及ぼせますが、今の蒼太君にはこれが限界なのです)、だから以前のデュマとの戦いに於いてもメリアリアちゃんの“絶対熱”は“獄法”の攻撃を防ぐ事が出来たのです←詳しくは“VSレプティリアン戦(デュマ編)”をチェックしていただければお解りいただけるかと存じます。
またアウロラちゃんの“星振魔法”に付いての詳しい説明は“セイレーン編20”を読んでいただければお解りいただけるかと存じます。
その他の特殊能力に付きましても“ハイラート・ミラクル”の詳しい効能や描写等は“ハイラート・ミラクル”を、“絶対熱”や“神威”に付きましては“因縁との対決”~“神威、炸裂!!!”、そして“龍神の咆哮”を御覧下されば解っていただけるかと存じます(面倒臭いなら別に読まれなくても大丈夫です)。
敬具。
ハイパーキャノン。
彼女達は勇敢だった、そして一途で健気であった、少しの恐れも迷いもなく、ただただひたすら夫の為に、即ち蒼太の為だけにその身を捧げ、その命を燃え上がらせていたのであるモノの、そうなのだ、もし見る者が見たならばこの時、蒼太は論の事、メリアリアもアウロラもオリヴィアも、皆“善の善たるモノの中”にいた、彼等は紛れもなく“光”であり、その煌々たる輝きは闇を撥ね除けて寄せ付けなかったが、その一方で
“闇”を纏いし存在は、それでも尚も現在であり、獰猛であり、恐ろしい程の狂気に満ち満ちていた、“彼”は紛れもなく“魔の主”であり幾重にも重なり合って練り込められていたその歪みと憎しみの波動はこの時のメリアリア達を以てしてでも決して容易に消せる様なものでは無かったのである。
しかし。
「たああぁぁぁっ!!!」
「てやああぁぁぁっ!!!」
「グルルルルルル・・・ッ!!?」
“光”の戦士達は、それにも少しも怯むことなく、そしていっそ力強くこの難敵目掛けて立ち向かって行った、闇を切り裂き、四散させ、彼の者の正体を白日の下に晒し出して行くモノの、今の彼女達の動態能力は時速120キロを超えており、そこから繰り出される連携攻撃は息つく間もなく闇を、“アレクセイ・デュマ”を追い込んでいった。
今回はメリアリアは勿論の事、オリヴィアもまた最初から“様子見”等という小賢しい手は使わずに、ただただひたすら全力を投入させ続けていたモノの、それは全て夫への愛と信頼とが為せる業であったのだ。
彼は言った、“後を頼む”と、“僕に時間を与えてくれ”と。
そして自身は何の躊躇いも無く“神人化”の為の祈りに埋没して行ってしまったのだが一瞬の気の迷いが即座に死に直結する戦場において、如何に頼りになる味方がいる、とは言えども“任せる”と言って本当に己の無防備を晒す事はそんなに容易く行える事では無い、それを蒼太はやってくれたのである。
・・・自分達に自身の命運も何もかもを全て託したままで、それだからこそ。
メリアリア達にもまた、何の迷いもありはしなかった、“この人の為に死ぬ!!!”、“ここでこそ命を懸けるんだ!!!”とただその事のみを念頭に置いて矢継ぎ早に攻撃を繰り出し続けていったのである。
メリアリアはその“茨の聖鞭”に自身の最終奥義である“絶対熱”を顕現させては纏わり付かせ、デュマに向かって縦横無尽に打ち振るい続けていったがもう一方のオリヴィアもまた、自身の愛刀である“エル・パシオス”にその極意中核たる“パルサー呪文”を発動させては伝わらせ、“閃光剣”としていたのであった。
それを。
「はああぁぁぁっ!!!」
「そりゃああぁぁぁっ!!!」
「ガルルルルルルル・・・ッ!!!」
夫の両親の仇であり、自分達にとっても“最大最強の障壁”であるレプティリアンに叩き付けていたのであったがこの内、“絶対熱”は実に摂氏14溝2000穣度にまで達する、宇宙創成のエネルギーでありそこにメリアリアは自身の霊力を練り込ませて攻撃に用いていた訳であったが、オリヴィアの側も実情は似たようなモノであった、即ち。
“宇宙の灯台”とまで呼ばれている“クエイサー”の放つ、超エックス線ビームである“パルサー”を発現させては己の法力と混ぜ合わせつつ、それをデュマに向かって解き放ち、彼の者のオーラと肉体とをしこたまに焼き切って行ったのである。
「ガルルルルルルルッ!!!」
(こ、小娘共めが!!?此奴らまでもが先日よりも力を確実に増しておる。此方が躱せない様に躱せない様に、瞬時に狙いを定めて攻撃を繰り出して来よる・・・っ!!!)
デュマは焦るがそれほどまでに今の彼女達の凄まじさは圧巻の一言であった、無論デュマとてやられっ放しでは決して無く、“死神の鎌”に変わって装備した“クレイディフ・シュバルツ”によってメリアリアの鞭を打ち払い、オリヴィアの鋭峰を防ぐぎつつも反撃を行うモノの、彼女達の見せる連携攻撃の熾烈さは他に類を見ない程であり、此方に何かをさせる暇(いとま)を全く与えてはくれなかったのだ。
“絶対熱の炎”を纏ったメリアリアはまさに“光輝玉の茨姫”の名前に相応しく、一方でパルサー呪文を発動させていたオリヴィアもまた、全てを超越するとされる“氷炎の大騎士”そのものであった。
“ビューン”、“ビュバッ!!”、“ヒュン!!!”と金色に輝くメリアリアの鞭が極炎となって虚空を切り裂いて迫り行き、それと同時に銀色に煌めくオリヴィアの剣が煌めいたと思ったらその切っ先が自身の喉仏の先にあって、それらを必死に対応しては後退しつつも身を捩って躱すだけで精一杯になってしまっていたのである。
その上。
「ぐ、ぐっ。くそっ、バカなああぁぁぁっ!!!」
デュマから苦痛の声が漏れるが後方に飛んで距離を取ろうにもメリアリア達に動きを先読みされて近接戦闘を仕掛けられる上に、頭上に逃れようともそこにはアウロラよって形作られた爆雷魔法の光球が眩く照り付け続けていた。
これは無駄に“超”高威力、また“超”広範囲の“星振魔法”を適正な威力と効果範囲に組み直したモノであり、アウロラの号令の下何時でも圧縮されたプラズマ波動球が炸裂して相手に確実にダメージを負わせる仕様になっていたのだ。
「くうぅぅぅっ。クソッ、このっ。此奴らっ!!!」
キンッ、キンッ!!ガキイイィィィンッ。ビュバッ!!!と聖鞭と宝剣、魔剣が幾度となく激突し、そこかしこに火花が飛び散って行く。
だがしかし、まだ余力を残しているメリアリア達に比べてデュマは目一杯に苦しそうである、無理も無かったが今のメリアリアやオリヴィアは通常でも一秒間に三、四発、多い時だと五、六発もの攻撃回数を誇っていてその嵐の様な連打連撃の雨霰(あめあられ)を、デュマは懸命に躱して防ぎ、何としてでも間合いを取るべく奮闘していた。
この時のデュマはハッキリと確信していた、いいや“改めて思い知っていた”と言った方が良かったが、“間違い無い”と彼は判断していた、“この小娘共は、あの小僧等よりも格段に強い”と。
(単に動きが良いだけでは無い。見切り、体捌き、技のキレ。どれをとってもあの小僧よりも鋭く強く、こちらに深く食い込んで来る・・・っ!!!)
事ここに至って。
デュマは“コイツらを倒すためには獄法を使うしかない”と“それ”を使う事を渇望したが、しかし。
その為の一瞬の隙が奪えなかった、“それある事”を予測していたメリアリア達はデュマに迎撃態勢を敷かれない様に、打ち難い様に打ち難い様に突っ込んで来ては、致命傷は無理ではあっても確実にダメージを与え続けて行く。
先程までの蒼太によって付けられたモノは“レプティリアン化”した際にデュマ自身が解き放ちたる“暗黒魔力”が癒してくれていた、この分厚い闇のオーラは周囲の空間を歪めて攻撃を防ぎ、憖(なまじ)っかな呪文等は何もせずとも弾き飛ばしてしまう効能を持っていたのであったがメリアリア達の操るそれらは強力な事この上なく、また鋭かった。
デュマのオーラごと、彼の体を切り裂いて鱗で形作られていた皮膚を強かに打ちのめし、その筋肉を抉り取るがお陰でデュマはその全身が再び傷だらけになってしまっており、彼方此方からドス黒い血が噴出している。
もっとも。
それはメリアリア達もまた、同様であったのであるモノのデュマも、そして彼の魔剣である“クレイディフ・シュバルツ”もまた、その禍々しさは少しも衰えていなかった、否、其れ処か。
「グルガアアアアアッ!!!」
「くううぅぅぅっ!!!」
「ちいいぃぃぃっ!!!」
漆黒のプラズマ波動を纏いし彼の者は、その暗黒剣を巧みに操り、自らが傷付くのを覚悟の上でメリアリア達に肉薄、攻撃の挙動の際にどうしても一瞬だけ出来てしまう僅かな隙を突いて(もっともそれは他の者達にとっては隙とさえ呼べない、まさに極瞬の閃刻の合間の出来事でしか無かったのであったが・・・)カウンターでの反撃を行っていった。
魔力で付けられてしまった傷は呪いのそれと一緒で非常に高度な回復呪文か特殊な祈祷、もしくは神力でしか回復させる事が出来ないのであり、一般的な魔法では用を為さない、防御も無理だ。
メリアリア達はそれを知っていた、知っていて尚も突っ込んで行ったのだから、彼女達もまた彼方此方で傷付き打たれて、そこかしこから皮膚が破れ、血が流れ出して来ていた。
しかし。
「ていやああぁぁぁっ!!!」
「まだまだああぁぁぁっ!!!」
「グルゴオオオオオオオッ!!?」
それでも尚もメリアリアとオリヴィアは攻撃の手を緩めずに徹底的に打ちのめし、突き刺し、切り伏せる。
デュマも負けじと応戦して剣を振るい、突き立てて来た、お互いがお互いを牽制しつつ行動している為にどうしても最後の一歩が踏み込めずに、つまりお互いに攻めきれないまま一見互角か、メリアリア達にやや優性な攻防が二十数分程続いた、その時だ。
「メリアリアさん、オリヴィアさん。下がって下さい!!!」
流石にこのままではメリアリア達が限界を迎えてしまうと察したアウロラが、まだ彼女達に余力が残されている内に自身も攻撃に加わるべきだと判断してそれまで上空に出現させるだけだった“爆雷魔法”を次々とデュマ目掛けて打ち下ろして行く。
その数実に37個、円陣に組まれたそれらは互いに影響を及ぼし合いながら落下するとメリアリア達が離れるのと前後してデュマの周りを幾重にも取り囲むように回転し始め、それと同時にー。
デュマの体が宙に浮かび上がり、徐々に徐々に上空へと向けて巻き上げられていった。
「グゴオオオオオオオッ!!?」
デュマは思わず驚愕した、いや驚愕自体はメリアリア達の戦い方自体に既に何度となく抱いて来ていたから改めて目を見張った、と言う方が正しかったがレプティリアンと化した自分には暗黒魔力の極めて強力なバリアーがあるのである、それにも関わらず、その周囲の空間力場ごと自分を空中に浮遊させる程強力な魔法力等、デュマはそれまでの人生の中で見た事も無ければ聞いた事も無かったのだ。
(・・・・・っ。あ、あの青髪の小娘かっ。今度は一体、何をするつもりなのだっ!!?)
一体何者の仕業かと思えば一人離れた位置にいて魔法による援護を行っていた、青髪の少女の姿に目がいった、彼女の周囲には過剰とも思える程の魔法力が渦を巻いており、誰がこの状況を作り出しているのかは一目瞭然であったのである。
ところが。
デュマが自分に纏わり付いてくる空間力場を解除しようと藻掻き始めた際にはもう、既に彼の体は遙かな上空にまで持ち上げられてしまっていた、そこで。
アウロラは一気に賭けにでた、彼女は爆雷魔法を単に攻撃の為にのみ生成していた訳では決して無かったのであるモノの、その真の目的は。
「・・・・・っ!!?」
(な、なんだ!!?この強力な磁力はっ。いつの間に出現していたというのだ!!?い、いや違うぞ、事態はそれどころではない。レプティリアンと化していなければ、これに近付くだけで即死か大ダメージを負わされていた所だったが・・・っ!!!)
一つは遙か上空に極秘裏の内に出現させていた“星振魔法”の中核とも言える超極小サイズのマグネターに充分な減衰運動を引き起こさせる為の火種として利用させるため、そしてもう一つが、プラズマ波動を互いに連動させて反磁力を生成させ、デュマを上空に引っ張り上げる為の手段。
その双方を満たすための布石として彼女は爆雷魔法をこれだけの数、生成していたのである、後はもう、アウロラの独壇場だった、流れる様に“反粒子重力曲線”でコーティングされている“亜空間フィールド”を生成して行く。
「グオオオオオオオッ!!!!?」
(な、なんだ!!?これはっ。中心で魔力の暴発が起きているのか・・・っ!!?)
「“ステッラ・アラビア・シンティラーレ”!!」
戸惑い続けるデュマを他所に、アウロラが爆雷魔法の光球をマグネターに全て吸収、合体させて行き、“星振”の準備を整える、そうしておいてー。
最後の最後で極限にまで達した回転磁場にアウロラが名前を与えて命を吹き込み、この世に呪文を顕現させてはそのエネルギー波を瞬間的に、一気に開放して見せた、その直後に。
頭上の空が黄金色に眩く煌めきそれが十数秒間も続いた後で今度は凄まじいまでの、爆音と轟音とが響き渡るモノのアウロラの生成させた超極小サイズのマグネターが全球面破壊を巻き起こしてそこからは莫大な量のエネルギー波と衝撃波とが光速に近い速度で四方八方に向けて飛び散って行ったのだ。
あまりに凄まじいエネルギーを秘めたその爆発は亜空間フィールドを持ってしても吸収しきれずに限界をもたらして崩壊させてしまったのであり、爆音が響いて来たのはその証であった。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
(アウロラの、星振魔法・・・っ!!!)
(や、やったのか・・・っ!!?)
遙かな上空を見上げていたメリアリア達が同時に思うが普通の敵ならば骨どころか髪の毛一本残らぬであろう、その猛爆の鉄槌に、さしものデュマも生きてはいないのではないか?と二人は一瞬、半ば本気で思えた程だ。
しかもメリアリア達がそうしていた様に、アウロラもまた自分の波動エネルギーを魔法力にミックスさせてぶっ放していたのであり、その威力は強烈な事この上無かったが、しかし。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「あ、ああ・・・っ!!?」
遙かな上空から下がってくる物体を最初、メリアリア達は“死体だろう”と思っていた、それほどまでに“それ”は薄汚くて煤けており、黒焦げであったからである。
だが。
そう思ったのもほんの束の間の出来事であり、三人は直ちに迎撃態勢を取って身構えるが何と落下してくる物体が突如として蠢いたかと思うと次の瞬間、夥しいまでの殺気と魔力とを放出して行き、四肢を自由に動かして落着の体勢に入ったのである。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
「生きて、いた・・・っ!!!」
三人は驚きつつもしかし、それでもしっかりと戦闘準備を整えては“それ”が落ちて来るのを待っていた、“まだだ、自分はまだ死んではいけない”、“蒼太の為にもまだ命の炎を消すわけにはいかないんだ!!!”と、“何としてでもここは守り切ってみせる!!!”と気合い一閃、下っ腹に力を入れて全身に波動と空気と意識を巡らせ、神経を研ぎ澄ませる。
次の瞬間。
ズドオオオォォォォンッ!!!!!と言う爆音と同時に砂埃が辺りに立ち込め、“それ”が遂に地上へと降り立ったが、さて。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「はぁーっ、はぁーっ。ふううぅぅぅ・・・っ!!!ク、クックックッ。ハーッハッハッハッハッ、やってくれたな小娘共!!!」
“それ”が“デュマ”が高らかに呵々大笑する。
「だが残念だったな。このレプティリアンの体にならば、何処だろうと生きて行く事が可能となる。例えそれが溶岩の中だろうと極寒の海だろうと、はたまた宇宙空間だろうとな!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「く・・・っ!!!」
「しかし驚いたぞ?小娘共、まさか“宇宙の力”を扱えるとは・・・っ!!!」
そう言うとデュマは“しかし”と言い放った、“今度は此方の番だ!!!”とそう言って。
「お返しに貴様らにはタップリと思い知らせてやろうぞ?“闇の魔道を極めし者”、その恐ろしさを嫌と言う程にな!!!」
そう言ってデュマが両手を胸の前で合わせ、“獄法”を発動させようとした、その時だ。
「・・・・・っ!!!!!?」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「こ、この波動は・・・っ!!?」
三人の背後、蒼太のいる辺りから限りない程に神々しくて、優しさに満ち溢れた光の波動が解き放たれて周囲を包み込んで行く。
「・・・・・っ。あ、ああっ!!?」
「うおおおっ!!?こ、これ程とは!!!」
「す、凄いっ。これが蒼太さんの・・・っ!!!」
三人が驚いてその方角を振り向くと、そこには頭の両側に髪の毛を纏め上げ、五つの勾玉の付いた首飾りを首に掛け、立派な十拳の剣を佩いた、一柱の神の姿があった。
「・・・・・っ。あ、ああっ。あなたっ!!!」
「蒼太・・・っ!!!」
「蒼太さん・・・っ!!!」
「メリー、アウロラ、オリヴィア・・・ッ。みんなみんな、ありがとう・・・っ!!!」
“神”となった蒼太は花嫁達全員に一礼すると“後は任せて”と言い放ち、自らはデュマに向かって歩を進めて行った。
「・・・・・っ。あなた!!!」
「蒼太さんっ!!!」
「蒼太っ!!!」
「・・・・・っ。みんな祈っていてくれ。僕が勝てる様にと、そして常に僕と一緒にいられるようにと。そうやって最後まで戦って欲しい、僕と共にあって欲しい!!!」
「あなた・・・っ。うん!!!」
「はいですっ!!!」
「心得たっ!!!」
尚も自分に追い縋ろうとしている花嫁達全員にそう応えると。
蒼太は再びゆっくりゆっくりと、しかし確かに力強い足音を響かせながら、メイヨール・デュマへと向けて距離を詰めて行ったのである。
「・・・・・っ。こ、小僧っ。貴様その姿は!!!」
「待たせたなデュマ。この姿に付いてはお前ならば既に知っているだろう・・・!!!」
そう言うが早いか蒼太は。
「“神威、神空断絶”!!!」
そう叫んで周囲かなりの範囲に渡って結界を張り巡らせ、その内側を完全に異空間に変換させる。
「ここならば多少、暴れても問題は無いだろう。お前とはここでケリを着ける!!!」
「小僧・・・っ!!!」
そう言ってレプティリアンと化したデュマと対峙する事、実に5分。
その間二人は無言で相手を睨み付け、出方を窺っていたモノの、やがてー。
漸く“時”が動き始めた、最初に仕掛けたのはデュマである、彼は躊躇わず獄法を用いると蒼太への攻撃を開始した。
「獄法、黒雲葬送!!!」
「神威、神空裂破!!!」
その言葉を皮切りに。
一柱の神と一匹の魔獣との戦いの火蓋が切っておとされたのである。
黒雲葬送とは魔力をふんだんに含んだ黒雲を出現させて、そこから絶え間なく降り続ける“影の雨”で以て相手を滅多矢鱈に串刺しにしてしまうと言う、残忍で恐ろしい地獄の刑法魔道であったが対する蒼太はその黒雲を刹那にすらも満たない程の、僅かな刻限の間に巻き起こされたる“神風の嵐”によって形成された、これ以上無いほどに強力で鋭利な無数の“真空の刃”で瞬く間に切り刻んで吹き飛ばしてみせたのであった。
「まだだ。獄法、天乱哭走!!!」
「神威、神翼天翔!!!」
それならばとデュマは今度は超が付くほどに巨大な黒雲のスーパーセルを形成させて、赤黒い邪悪な稲妻を蒼太に連続して落とそうとするモノの、蒼太は先程の神威によって辺り一面に吹き荒れていた神のエネルギーによって生み出されていた膨大な数の極めて鋭利な真空の刃を掌一点にまで極集役してそれを一挙に頭上の黒雲目掛けて叩き付け、またも雲散霧消させてしまった。
「獄法、生殺簒奪!!!」
「神威、天地総攬!!!」
今度はデュマは地獄の刑法に照らし合わせて相手の生殺与奪の権利を奪うと言う、所謂(いわゆる)一種の“即死技”を掛けて来た、それを迎え撃つべく蒼太か使用したのが対象者の命運の審判を神々に仰ぐ最高の神威の一つであり、神による裁きを直接的に受ける為に対象者は逃げも隠れもその裁きの結果を防ぐ事も出来なくなる、と言った内容のモノだったのだ。
「獄法、制天魔道!!!」
「神威、破獄天生!!!」
彼はそれを自らに対して用いたのであり、要するにデュマの獄法を無力化したのであるモノの、すると業を煮やしたデュマは最後の賭けに打って出た、この時にデュマが用いた獄法はどう言うモノなのか、と言えばそれは神威を打ち破る為に開発されたそれであり、“宇宙の法則”をその身に宿している事が特徴であった、即ち。
生々流転を繰り返す宇宙の営みの中の“破壊”のエネルギーを極限にまで詰め込んで体現したモノであり、この獄法を上回る力は存在しない上に“真理”に則って生み出されている為にどうやっても打ち消したり、防いだりする事が出来ないと言う厄介極まりない代物であったが一方で蒼太が用いた神威もまた、この恐るべき獄法を完全に破却する事を目的に、新たに生み出されたモノであったのである。
それというのもこの神威もまた“制天魔道”と同じように“宇宙の法則”をその身に宿している事が最大のポイントであり、生々流転する宇宙の内でも特に“創生の能力と意思”そのものを目一杯にまで凝縮し尽くして誕生して来たそれであったが、宇宙の愛と正義と法則の全てを内包していたこの神威にはそれだから、ある桁外れな神能が宿されていた、即ち。
“やった事はやり返される”と言うそれであったがこれもまた真理の一つであって故に宇宙に存在しているありとあらゆる存在も力もこれからは決して逃れる事は出来ない、とされていたのだ。
蒼太は敢えてこの神威を用いる事にした、即ちデュマが放った最強の破壊の力をそっくりそのままデュマ本人に跳ね返してしまったのである。
結果。
「ぐわああああああああっ!!!!!?」
それまでの均衡が一挙に崩れ、デュマが遙かな彼方にまで吹き飛ばされたが、しかしそれをただ黙って眺めている蒼太では無かった、追撃の為の神威が直ちに生成されてはデュマに追い打ちを掛けて行った。
「神威、黄雷雪花!!!」
「神威、王雷絶華!!!」
「神威、神皇花蕾!!!」
「ぐがああああああああっ!!!!!?」
刹那にも満たない合間に駆け抜けて行く、追撃の神威の怒濤の様なエネルギーの奔流にデュマは体をボロボロにしながらそれでも必死に絶え続けていた、しかしこれは拙(まず)い、余りにも拙(まず)い展開だったのだ。
どうやらあの男の神威の力は本物の様だ、その証拠に自分は明らかに劣勢に立たされていた、しかも奴は。
此方が放った最終獄法である“制天魔道”すら打ち破ってみせたのである、これは本物と認めざるを得ない。
(し、信じられん。あの若さで我が“地獄の刑法”を、“獄門の道”を打ち破るとは。し、しかし・・・っ!!!)
デュマは思った、このままでは本気で拙いと、しかしながら。
最早蒼太の溢れんばかりに輝かしい光の神力の前に魔力のオーラは役に立たず、完全に四散してしまっていた、体は全体的に切り刻まれて焼け焦げ、ダメージが蓄積している、蒼太の攻撃が凄まじ過ぎて回復が全く追い付かないのだ。
そうしている内にー。
デュマは奇妙な事に気が付いた、自分の体の彼方此方が光の粒子となって行き、徐々に消え始めてしまっていた、最早これ以上の攻撃を食らうのは絶対に阻止しなければならなかったが、如何せん力が入らない。
完全に誤算だった、とそう思った、まさか“神人化”を扱える大和民族が未だに生き残っていた、等とは。
しかしこのままここで朽ち果てる訳にはいかなかった、かくなる上は。
「ク、クレイディフ・シュバルツ!!!」
デュマは最後の最後まで己が肌身離さず持ち歩いていた魔剣に“すまんな・・・”と声を掛けると次の瞬間、何とその鋭い牙と耳まで裂けた顎の筋肉を駆使して魔剣を切っ先から貪り食い始めてその魔力を体内へと取り込み始めたではないか。
これには蒼太も驚愕した、まさかそんな手妻(てづま)が残されていた等とは。
しかし。
蒼太にだってそれはあった、別に聖剣を貪り食う、等と言う離れ技と言うか大道芸をやってのけるつもりなど毛頭無かった、そんな事をしなくとも彼には力を貸してくれる存在がまだまだ大勢いたのだから。
そして。
その内の最も愛して止まない存在達に、信頼している存在達に蒼太は声を掛ける事にした。
「メリー、アウロラ、オリヴィア。僕に力を貸してくれ!!!」
「あなた・・・っ。はい!!!」
「使って下さいっ!!!」
「待ち侘びていたぞっ!!!」
三人はそう言うと蒼太の為にとますます集中して祈り始めた、夫が何を望んでいるのかが手に取るようにして理解出来た為だったがそんな彼女達の純粋なる真心は蒼太に十二分に響き渡って来た、神となっている今の彼にはそう言った人の思いや念と言うモノが、よくよく伝わって来るようになっていたのであるモノの、それを感じ取った蒼太は。
不意に剣の柄を取って抜き去ると、そこに金色に輝く焔熱である“絶対熱の炎”を纏わせ始めた、そうしておいてー。
「グガアアアアアアアアッ!!!」
瞬く間に魔力を蓄えて反撃に転じて来たデュマを振り返り様に脳天唐竹割りにして返り討ちにするモノの、それは紛れもなく“ハイラート・ミラクル”の力であり、蒼太の神力にメリアリアの霊力を加えた一撃だったのである。
「・・・“天生・極炎煌”!!!」
「グルアアアアアアアアッ!!?」
死の瞬間に断末魔の声を挙げるデュマに対して蒼太は更に、二撃を加える事にした。
「“明光・星界嘯”!!!」
「“閃永・瞬絶華”!!!」
この二振りの必殺の斬撃によって。
蒼太はデュマの胸を横一文字に心臓ごと切り裂き、更には首を体から断絶させてデュマの生涯に幕を閉じさせたのであるモノの、しかし。
「神威、悪鬼滅砕!!!」
「グルガアアアアアアアア・・・ッ!!!!!」
最後の最後でとどめを刺すことを、蒼太は忘れてはいなかった、光の粒子となって消えゆくデュマに対してすかさず“最終神威”を発動させるとその存在の根幹を為している魂ごと彼を抹殺し尽くした挙げ句の果てには暫くの間“残心”を取って周囲の様子を窺った後に、漸く安心だと判断して笑顔で花嫁達の元へと歩いて戻って行ったのである。
「・・・・・っ。メリー、アウロラ。オリヴィア!!!」
「・・・・・っ。あ、あなた?」
「蒼太さん・・・?」
「蒼太・・・!!?」
“終わったの・・・?”と恐る恐る尋ねるメリアリア達に対して蒼太は“ああっ!!!”と力強く頷いて応えた、“終わったよ・・・!!!”とそう言って。
「アイツは・・・。デュマは滅んだ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「あ、ああ・・・っ!!!」
「そ、蒼太。君は・・・っ!!!」
そこまで告げた花嫁達が、まだ何事かを続けようとしたその時だった。
「神威、神饌招来!!!」
蒼太が突然、胸の前で両手を合わせ、新たな神威を招来させるがこれは回復技であり、単なる肉体の傷や疲労を癒して復力させるのみならず、様々な状態異常や呪い、毒気なども全て纏めて解除、浄化する効能を持っていたのだ。
「・・・・・っ。帰ろう、元の世界へ」
眩いばかりの輝きに包まれ、癒されて行く花嫁達を笑顔で見つめながら蒼太はそう言って、“神威、神空断絶”を解除する、すると。
虹色に輝く白っぽい眉がシュルシュルシュルッと消えて行き、元の青空が頭上を覆っていたのであるが、その空は今まで彼等が見た中で一番透き通っており、何処までも青く青く澄み渡っている様に見えた。
「・・・・・っ。本部、此方“α”。使命は達成された、繰り返す、使命は達成された!!!」
“神人化”を解いてセイレーン本部及びミラベルに事の顛末をそう述べると。
蒼太は彼等の援護の為にとポールが派遣してくれていた諜報員に、デュマを倒した証拠品として完全に無力化されて朽ち果てていた“死神の鎌”を提示して本部に持っていってもらう事にして自分達は、足早にバチカンを後にした。
“父さん、母さん”と蒼太は胸中で思いを巡らせていた、“やったよ!!!”とそう言って、すると。
「おじ様、おば様。いいえ義父様、義母様。どうか見守っていて下さい・・・!!!」
彼の側にいたメリアリアもまた、そんな蒼太の思いに何かを感じ取ったかのようにそう告げて天を仰ぎ、その双眸をソッと瞑った。
ーーーーーーーーーーーーーー
ずっと以前に何処かの後書きか何かで書かせていただいたのですが、蒼太君は“神人化”すればマグマの中や極寒の深海、はたまた宇宙空間でも平然と生きて行けます。
そしてそれはレプティリアン化したデュマも同様です、ですので“星振魔法”ではデュマにとどめが差し切れなかったのですね(もし“人間形態”の時であれば、“マグネター”に接近した段階でその潮汐力により体が細く引き延ばされて、デュマはたったそれだけで死に絶えていたでしょう)、またもう一つだけ、言わせていただきますとメリアリアちゃんやアウロラちゃん、オリヴィアちゃんの扱う“絶対熱の極意”、“星振魔法”、“パルサー呪文”は単なる物理破壊技ではありません。
ただでさえ、あれらには“宇宙の力”が宿っています、それに加えてメリアリアちゃん達の“霊力”がミックスされているので七次元まで影響を及ぼせるのです(蒼太君の神威は八次元の表層までです←神威自体は極めれば極める程、十次元でも十三次元でもその効能を及ぼせますが、今の蒼太君にはこれが限界なのです)、だから以前のデュマとの戦いに於いてもメリアリアちゃんの“絶対熱”は“獄法”の攻撃を防ぐ事が出来たのです←詳しくは“VSレプティリアン戦(デュマ編)”をチェックしていただければお解りいただけるかと存じます。
またアウロラちゃんの“星振魔法”に付いての詳しい説明は“セイレーン編20”を読んでいただければお解りいただけるかと存じます。
その他の特殊能力に付きましても“ハイラート・ミラクル”の詳しい効能や描写等は“ハイラート・ミラクル”を、“絶対熱”や“神威”に付きましては“因縁との対決”~“神威、炸裂!!!”、そして“龍神の咆哮”を御覧下されば解っていただけるかと存じます(面倒臭いなら別に読まれなくても大丈夫です)。
敬具。
ハイパーキャノン。
応援ありがとうございます!
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