blue moon again

るう

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この想いをその曲に

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 週末になり店がお客も多く忙しく動いている悠斗と新堂さん、その他のスタッフがいた。
店内が落ち着く頃、麻美さんのピアノの演奏が始まる時間となる。

 麻美さんがピアノを引き始めると、しなやかに動く指先に綺麗な旋律が響く。少し騒がしかった店内も麻美さんのピアノの音に耳を傾ける人達がいた。
最後の曲が終わると麻美さんはピアノから離れ美しい笑顔を見せお辞儀をした。

 いつもならこれで終わりだけど、麻美さんがスタッフルームのドアの方に視線を向けた。
その視線の先には薄紫の光沢のあるスレンダードレスを着た凜がいた。

 悠斗は凜だと気がつくと、

「なんで…」

 目を見開いて固まっていた。


 ふんわりとまとめて横に流したヘアスタイルにうっすらとした薄化粧でも大きな瞳に重なるような長い睫毛、ぽってりとした唇に濡れたようなリップ、ほんのりとピンクに色づいた頬は、なんとも可愛らしい。

 凜がゆっくりとピアノの前で一礼する。店内から可愛いとか綺麗などの声が上がり、誰?と聞いている人達もいた。

 そんな声が聞こえてくると悠斗はヒヤリとした気持ちといつもと雰囲気の違う凜から視線を外すことが出来ないでいた。

 ふっと凜と視線がぶつかる。

 あどけない笑顔を悠斗に向けると悠斗がいると安心したかのように椅子に座って一呼吸をした。




 ピアノから奏でる音は「アイノカタチ」のフレーズ、静かなピアノの音の始まりから凜は優しくを歌う。

 甘美な、つややかで繊細な節回し、音の波が、店内をきらきらと光りながら走り抜けるようだ。
 その歌詞の意味を気持ちを込め歌声にする。透き通る声がピアノのと共に聞き手を優しく包み込むように心に染み渡っていく。


あのね、大好きだよ…♪

──

 私の心の中は、あなたでいっぱいで愛が溢れているの。
ずっと、ずっと、大好き。
私の心には悠斗だけ…そんな想いを込めて凜は歌った。

 歌い終わるとたくさんの拍手が店内を響かせた。

 凜はピアノの椅子から立ち上がりお辞儀をして悠斗の方へ歩いてくる。

 緊張がほぐれたのか、ほっとしたようでほんのりと赤くなっていた。

 悠斗はその姿をはにかむような、照れくさいのか少し口角を上げて笑みを浮かべた。





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