勇者になんかなりたくないけど異世界では勇者だった!

オレオ

文字の大きさ
35 / 47
ジークフリード編

35話 異世界なんかで試練なんて受けたくないけど 試練1 巨人の樹海

しおりを挟む
「——さん起きてください」

 マリンの声が聞こえる。

「十夜さん、十夜さん」

 体を揺さぶられ意識が少しずつハッキリとしていく。
 だが体は動かない。

「十夜くん起きてください」

 メティスの声も聞こえる。

「...こ、ここは...」

 目をゆっくりと開ける。

「やっと起きたか!」

「ポセイドンもいたのか」

「俺もいるぜ」

 目を開けるとその場にはマリン、メティス、ポセイドン、アレスがいた。
 それと同時に俺の目には薄暗い森が写った。

「なんでこんなところに」

「恐らくこれがレヴィアタンの言っていた試練ですわ」

 確かにレヴィアタンは俺たちに最後、ジーク島の試練を受けてもらうと言っていた。
 ということはここはジーク島のどこかの森ということか。

「恐らくですが、この森に飛ばされたということはこれが3つのうちの1つ『巨人の樹海』でしょうか」

 メティスがレヴィアタンの言葉を思い出し呟いた。

「ところでここに飛ばされたのは俺たちだけなのか?」

「全員ここで気絶してたぜ!俺が1番早く目を覚まして確認した!」

 ポセイドンが自慢げに言った。

「他の奴らが心配だ。ここにいるのは5人、残りの8人が均等に別れているかわんかねぇし、そもそもあの竜巻で全員生きてるかもわかんねぇ」

「心配しなくても大丈夫だアレス。みんな強い。こんな事じゃ簡単にしなないさ」

「し、心配なんてしてぇ!?」

 心なしか俯いているように見えたアレスに声をかけたが余計なお世話だったらしい。

「皆さん見てください。ここ、道が開けていますわ」

 本当だ。進んでくださいと言わんばかりにあからさまに道がある。
 しかもご丁寧に俺たちの後ろは崖。
まあこっちに進むしかないか。

「こんな試練さっさと突破してみんなと合流しよう!」

 俺はみんなを元気づけようと先頭に立った。

「というか女の子一人と男四人はなかなかむさ苦しいですわ」

「マリンちゃん申し分ありません...」

 メティスがバツが悪そうに軽く頭を下げた。
 だが確かにわざわざ俺たちを分断させたのには何か意味があるのだろうか。

「メティスさっき『巨人の樹海』っていったよな?だとしたら試練の内容は巨人討伐ってところか?」

「その可能性は高いですね」

「なら楽勝じゃねぇか!俺たちなら一瞬で終わるんじゃねえか?」

 確かにポセイドンの言う通り討伐ならまだ単純な内容だ。だが試練と言うほどだ、そんな単純なものなのか?

「十!俺が最初に正面から殴る!っで後からお前らが追撃だ!」

「待ってくださいアレスくん。ここは慎重に行かないと」

 そういえばアレスは以前俺の傷を治癒してくれたことがある。貴重な回復役としてはもっと慎重に行動させる方がいいだろう。

「そうだぞアレス。お前は回復役としての役割もある。もしモンスターが出てもここは慎重に行くぞ——うぉ!」

「おい西木!あれみろよ!」

 アレスと話している最中、ポセイドンが俺の襟を引っ張り自分の目線の先を俺に見せた。

「なんだ...あれ...」

 俺たちの目の前に現れたのは巨大な鎧。
それは巨大だが草木に侵食されその場に横たわっていた。

「これが巨人、いやただの鎧か?」

 俺達は恐る恐る近ずいた。

「皆さんお静かに」

 マリンが耳をすましながらその場で立ち止まった。

「何か歌が聞こえますわ」

 俺たちはマリンの言葉を聞き耳をすました。
 すると巨大な鎧がある方から微かに女性の歌声が聞こえた。
 それはとても美しく自然と足が吸い寄せられるようだった。

「みんな慎重に行くぞ」

 俺たちは息を殺して歌声の方へと足を運んだ。

「あそこに誰かいるぞ」

 アレスが指をさした方向には鎧に祈りを捧げるように美声を森に響かせる白髪の美しい女性がいた。

「綺麗だ」

 思わず声に出てしまうほどに美しい歌声だった。
 聞き惚れているうちに歌が終わり女性はその場にゆっくりと立ち上がった。

「隠れていないでこちらへいらっしゃってください」

 バレていたか。
 5人で覗いていれば何となく気配を感じるのだろうか。

「どうか警戒しないでください。ただ俺たちは通りすがりに美しい声が聞こえたもので聞き惚れていただけです」

「あら、お世辞がお上手ですのね。私はヘレナ。近くの村の教会でシスターをしております」

 ヘレナはその場で丁寧にお辞儀をした。

「俺は十夜」

「俺様はポセイドンだ!」

「メティスです」

「俺はアレスだ」

「マリンです。どうぞよろしくお願い致しますわ」

 各自挨拶を済ませるとヘレナはニコッと笑いもう一度お辞儀をした。

「ヘレナさんはなぜこんなところに?」

「...」

 ヘレナは少し黙り込み鎧へと歩み寄った。

「この鎧は父の形見なんです」

 こんな大きいものがヘレナさんのお父さんの形見...。

「父は偉大な戦士でした」

 ヘレナはどこか遠い目をして話を続けた。

「このジーク島にはジークフリードという龍がいます。ですが、力を無くしたジークフリードでは魔物の力を抑えきれず島の魔物が年々力を増してきています」

「あのジークフリードが力を無くすなんて...」

 ヘレナの言葉にメティスが戸惑っていた。

「3年前、村を襲った魔物達により父は戦死しました...。そして形見であるこの鎧は誰も動かせぬままここに放置されています」

 ヘレナの目には少しの涙があった。

「この巨人はそんな大切な物だったんですね」

 十夜は胸が熱くなるのを感じた。

「さあ、ここにいると危険な魔物が来るかもしれません。私の村へ案内いたします」

 そう言ってヘレナさんは俺たちに背を向け、見えないように涙を拭った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...