サ帝

紅夜蒼星

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「よぉ大海。今日は早いな」
 部室前で愕然としていると、先輩方が到着した。滝部長、竹沢先輩、石川先輩の三人だ。
 蒼はどうやら一緒ではないらしい。
「蒼なら今日は生徒会だぜ。生徒会と部活の掛け持ちなんざ、大変だよな。それで特進クラスなんだから頭が下がる」
 何も聞いていないのに、竹沢先輩から蒼についての情報が提供された。
 別にきょろきょろと周りを見渡したわけでもない。明らかに蒼に目を付けている新入部員だと思われている。
 いよいよ取り返しのつかないところまで来ているらしい。
 入部したばかりなのに。
 これでは入墓もままならない。
 墓に秘密を持っていくためにも、やはり部員であり続ける必要はありそうだ。
「それを言うなら竹沢、お前以外は特進クラスだからな」
「俺は部活の推薦で入ってんだから仕方ねーだろ」
「聞いたことねぇよGTS部にそんな枠」
 どうやらGTS部には推薦制度はないらしい。
 あれば最悪利用してもよかったかもしれない。
 当時の俺であれば絶対に考えすらしなかったことを、なんとはなしに浮かべてみる。
「今日も昨日と同じメニューなんすか?」
「あぁ。新人戦も近いし、基本のメニューをこなしていく。最後にはGTSを今日からは2セット入れていくけどな」
 あの地獄の走り込みと勉強のセットは、どうやら基本の練習メニューらしい。
 スパルタ部活もいいとこである。
 ウチはGTS強豪校なのか? あまり好成績を上げた話は聞いていないが……。
「そうなんすね。ちょっと体調が優れないので今日は見学でいいですか?」
「大丈夫。走って勉強してサウナに入れば誰でも元気になるさ」
「たった今の話なんですが、用事が出来ました」
「大丈夫。走って勉強してサウナに入れば誰でも用事はなくなるさ」
「そんなわけないでしょ」
なんで記憶失ってるんだよ。
「いいからやるぞ大海。お前を新人戦までに全盛期の調子に持っていかん。何周かかっても戻してもらう」
「部長。そういうのなんていうか知ってますか?」
「……優しさ?」
「パワハラだよ!」
 そんなもんが優しさであってたまるか。
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