日常平凡

ムロヒ

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春の季節:私のお母さん

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タイムカードを押し無事バイト初日が終わった

「あれ?」
副店長が見当たらない?

私はバックヤードをでてレジにいる奈緒子先輩に声をかけた

「あの先輩」

「どうしたの?」

「副店長見かけませんでした?」

「ああ副店長なら冷蔵庫の中で商品を発注してるよ」

「冷蔵庫?」

「え?気づかなかったの?バックヤード入ってすぐ左手に冷蔵庫の入り口があるでしょ!」

「なるほど!」
全然気づかなかった

私はバックヤードを入り冷蔵庫内でタブレットを使い発注をしている副店長に話しかける

「副店長お疲れ様でした帰っても良いですか?」

「もう二時になったか?!今日一日どうだった?」

「まだ初日なのでまだ何ともです…」

「まぁそうだな
じゃ上がって良いよ!タイプカード押し忘れるなよ」

「大丈夫ですもう押しました」

私はふと端の隅にペコ缶があるのに気づく

「副店長…このコーラ真ん中潰れてますね?捨てるんですか?」

「いやこれはもう商品として売れないから
“俺が買い取る”缶落として売り物にならなかったら落とした人に買い取ってもらうから!」

「え?!そうなんですか…」

「1回目は許す!
2回目は買い取ってもらうからな!」

「はい…落とさないように気をつけます」

「そんなテンション下がるな!大事な商品だから責任感を待たせる為なんだそれと買取は半額だ!お得だろ?」

「半額!副店長!!このコーラ買います!
ってかペコ缶があれば私が買います!コーラ限定でお願いします!!」

「良いよ!じゃこれコーラレジに持って行って半額で打ってもらえ!半額って聞いてだからといってわざと落とすなよ!」

「もちろんです!」

ラッキー!ペコ缶は弁償だけど半額ならお得じゃ

早速私はペコ缶をレジに持って行く

「先輩!このコーラお願いします!」

「ペコ缶ね!やよいちゃんが自分で打ってみる?今日見てただけだからレジ打ち練習しなよ!」

「はい!やってみます!!」

私の初のレジ打ちは自分の買ったコーラ

“ピっ”

【10代~】のボタンを押し【女性】のボタンを押そうとした時先輩が止める

「ちょっと待って!
これ半額にしなきゃ缶の場合は割引設定はされてない
商品をフリー商品にしなきゃいけないのここの数字の【8】と【9】のボタン押してスキャンするそれから半額の75円を入力して!」

「こうですか?」

「そう!」

「じゃこれ100円を入力するんですね!」

私は財布から100円玉を取り出した

「そうそう!【10代~】ボタンと【女性】を押して!」

「こう!」

“チン”

「出来た!」

私はお釣り25円を自ら受け取った
ちゃんと25円を取った事を先輩に見せた

「はい!上出来!これでもうレジうち完璧ね!」

「いやいや早いですよまだまだこれからです!」

“テレテレテェレェテレテレテェ”

「いらっしゃいませ!お客さん来たからまた明日ね」

「はい!また明日よろしくお願いします!」

私はウキウキでコーラを片手にコンビニを出た

「よし!得したぁ!早速仕事終わりの一杯コーラを」

“プシューーーーーーーーーーーーーーーゥ”

私がコーラを開けると勢いよく吹き出して顔にかかった手もびしょびしょでベタベタ!

「でしょうね…」
落としたてホヤホヤだった…

コーラは半分以上こぼれた

「最悪だぁ…」
酸抜けたし…
コーラだけは絶対落とさないでおこう…

私は愛用のカブに鍵を差し込みエンジンをかけるがなかなか始動しない…

「うわっ最悪…エンジンかからない…」

数分後…

私はスマホで時間を見ると
14時40分になっていた

ゲっ!もうこんな時間になってる
ダメだ全然かからない…
もう私の愛車とはここでお別れなのね…
二代目よさらばだ短い付き合いだった…
私は忘れないわあなたとの思い出…
はぁこれじゃ帰れない!そうだ!!

私はスマホを取り出しお母さんに電話を掛けた

「お母さん!バイクエンジンがかからない!
車で迎えにきて!」

「は?!歩いて帰ってきてよ!お母さん今テレビ見るって忙しい!」

「は?!私歩かないわよ!
22分も歩けって言うわけ?私の歩幅が狭いの知ってるでしょ?舐めんな!」

「知らんわ!!自分で歩いてきて!
通販見るって忙しいの!」

「…プレミアム商品券一万円分……」

「え?!そこ動くな!すぐ行く!!」

「ふっ…」
ちょろい!!

私は副店長に事情を話しバイクが邪魔にならない所に置かしてもらった

「ふぅ次3代目は何を買おうか?」

“ぷーぷー”

突然のクラクションの音

私はスマホの時計を見ると14時42分

「やよい~やよい~こっち!」

「お母さん?!早っもう着いたのね!
それにお母さん!!大きい声で名前呼ばないで恥ずかしい!」

「あんたがスマホ見て気づかないからでしょ」

私は駆け足で車に乗り込む
お母さんの車はシルバーのムーブ660 Lに乗っている

「やよい!わかってるわよね?」

「わかってるよ初給料貰ったらちゃんとプレミアム商品券一万円分渡すから送り迎えお願いね!」

「は?無理よ!お母さん今日たまたまパートが休みだったから迎えに来れるけどあんたに合わせて送り迎えできないから!」

「じゃ私はどうやってバイトに行くのよ!」

「歩けって!」

「やだ!」

「じゃお母さんがお金出すからそろそろ車の免許取りなさい!」

「え?お金出してくれるの?やった!」

「は?何言ってるの?貸すんだよ!バイト代貯めて返せよ!」

「ははっですよね…」

「最初からお母さんはバイクなんて反対だったのよ!高校1年の時に勝手にバイクの免許取りに行くなんて…あんな危険な乗り物はもう乗らないで!」

「危険ってお母さんが下手だったのよ!」

私が高校1年の時
学校をサボって免許を取りに行った事を懐かしむように思い返した

お母さんが“危険な乗り物“と言ってその言葉に私は当時の事を思いだした
あれは忘れもしない出来事

「ねぇお母さん覚えてる?お母さんが初めて私のバイクに乗ったの!」

「うーん記憶にないわね!」

「あんな衝撃的な出来事忘れないでよ!」




高校1年の夏
16歳を迎えたある日
この日は灼熱の太陽が空から照りつけ
地面は熱く足元がジリジリと感じられる
蒸し暑さが湿った空気と共に包み込み私の額に汗がじわじわと流れ落ちる

気温38度

「あ~暑いぃ…」

私は歩いて学校に向かっていた
学校は徒歩7分で着く距離

「あ~…」
クソ暑い溶ける~何で歩かなきゃ行けないのよ!お母さんめ!学校まで送ってくれても良いじゃん!

ダラダラと私が歩いていると私の横をすいっと原付バイクが横切る

「あ?うちの制服だ…」
バイク通学禁止のはず

バイクに乗っていたのは同じクラスの男子生徒だった

バイクは人目のつかない所に隠すように停車させている所を目撃した

「ははーん!そう言う事か…」
あのデブめ!!先生にチクってやる!
この私でさえ歩いているんだ!だからお前は太ってるんだよ!

私はこの男子生徒がバイク通学している事を先生に報告しようとしたが思い止まった
この男子生徒が乗っているバイクが小さくて可愛かったのでバイクに興味をもってしまった

「ふーん…」
可愛いバイクねあんな小さいバイクもあるんだ

スマホで男子生徒が乗っていたバイクを調べた

「ん?……」
モンキーバイク?
ドンキーコングの間違いだろ!後ろ姿マリオカートのドンキーコングだったぞ!

他のバイクもあるのか!!あ!これ可愛い
よーし!

私は急に思い立って即刻出発した私が向かったのは学校ではなく運転免許試験場

学校なんて行かん!!

私はこの日初めて学校をずる休みをした
なんやかんやでバイクの免許を取得した
学科は一回落ち日を跨ぎ二回目で受かった

「ふふふ!」
お年玉貯めてて良かった中古で安いバイクが買える!

それはビーノ1万円だ!!
私は近所のバイク屋でビーノを買った

私はニヤニヤしながらバイクで家に帰るとちょうどお母さんもパートから帰って来ていた
見事に鉢合わせした

「ぁい!あんたこのバイクどうしたの!?
まさか買ったの?免許はあるの?無免じゃないでしょうね?!」

お母さんは興奮気味に質問攻めをした

「ちゃんと自分のお金で買ったし免許もある!自分のお金で買ったんだから別に良いでしょ!」

「自分のお金で買ったにしても危ないんじゃないの?」

「大丈夫よ!ほら!」

私はグルグルと周りお母さんの目の前ですいすいと運転して見せた

「あら!良いわね楽しそう!お母さんにも乗らせて!」

「良いよ!実際乗ってみたらお母さんだって欲しくなるよ!」

お母さんはビーノにまたがる

「良いわね!ちなみにいくらしたの?」

「お母さん聞いて驚くな何と一万円よ!」

「そんなに安いの?」

「うん!安かった不具合があったらすぐ持ってきてってバイク屋のおっちゃんが言ってた!ってお母さんほんと大丈夫?乗れる?」

「大丈夫よこれくらいここがアクセルでしょ?」

「うん!そこ右手首を下にひねれば動くから」

うちのお母さんは何を血迷ったのかアクセル全開で急発進!

「ブレーキ効かないよ!ブレーキ!!ブレーキが効かない!!!やよい~!!!!」

見事に近所のサトウキビ畑へ突っ込み姿を消した

「うん!さすが一万円!妥当だ!
早速明日バイク屋に行こうっと!」




私は車の中でお母さんと当時のことを喋っていた

「ああ~!思い出したそんな事もあったわね!」

「そうよ!私心配してたけど内心爆笑してた!あ!そんな話は良いの!!早く車エンジンかけて!帰ろうよ!!」

「もう3時じゃない!話し込んじゃった!
通販番組終わってるあんたのせいよ!」

「何でだよ!お母さんが運転しながらだと喋れないからじゃん!」

時刻15時10分





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