日常平凡

ムロヒ

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春の季節:初めての実技

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4月16日

8時30分

昨日の夜の寒さが嘘のように朝の春の陽射しは暖かく心地よい
新緑が目に眩しく公園には家族連れの子供達がブランコを楽しんでいる

「ふっ子供は幸せだな…」

あ~暖かい車の窓から見える風景はとても暖かいだが…
私の心は叱られた時の余韻がまだ拭いきれない…
私の心は氷のように凍りついたままで言葉の一つ一つが胸に突き刺さり息苦しさが広がっていた……うぐっ魔王め!

「はぁ…」
昨日は最悪だったなぁ…

「やよい何ため息してるの?」

「昨日バイトでやらかした…」
あの魔王の目つきやばかったな吊り目で…
きっと童貞だ…うん!

「やらかしたって何で昨日の夜話してくれなかったのよ!」

「お母さん幸せそうにはしゃぎながら肉食べていたから言い出せなかった!
それにクソ兄もいる前で喋りたく無い!」
あんな思い2度としたく無い…

「今日休みで良かった~」
でも明日からバイト……

お母さんも今日はパートが休みで良かった教習所にマジでバスで通うってありえない
乗り継ぎなんて出来ないし…

「で?なにしでかしたの?」

「かくかくしかじかで!」

「は?」

「だからかくかくしかじかで!」

「はぁぁん?
かくかくしかじかじゃ分からないわよ!ちゃんと喋れ!!何がかくかくしかじかよ!」

「もうめんどくさいな!仕事中に先輩と楽しく喋っていたら店長が外から監視してたみたいで怒られた!ものすごく!しかも先輩だけが!!
私は怒られなかった!それが先輩に対して申し訳なくてもうバイト行きたく無い!!気まずい!!!」

「はぁぁぁぁん!!あんたが悪んじゃない仕事中に喋るから!」

「先輩の話が面白いからつい!」

「いい勉強になったんじゃない?これから気をつけなさい!絶対辞めさせないわよ!お母さんとの約束を守るまでは!」

「ハイハイ…分かってますよ
店長は魔王って呼ばれているんだって!バイト仲間の間で!ウケるよね!」

「魔王って…じゃ勇者もいるのかしら?」

勇者ってアニメじゃあるまいし!

「それは知らない!今度先輩に聞いてみる!」

8時50分

教習所に着いたか…

うおぉ!何だこの車の数は平日なのに…

「お母さん止める所無いね!」

「あんたもうここで降りて!」

「え~もっと入り口に近いところまで行ってよ!」

「じゃ帰りはバスね!」

「分かったって降りるよ!」

まぁいいか…ってか早く免許取って車運転してみたい踏ん張り期ね!

「じゃ終わったら電話するから」

「頑張って!」






まずは受付で確認ね!
ここが入り口?うわぁなんてお手本のような明るい笑顔で迎える受付嬢なんだ

「おはようございます!」

「お おはようございます…」

なんて眩しい笑顔こいつモテるな!
でかい!なんてでかい胸なんだ!何人の男にチヤホヤされてきた?聖女様って所だな!

私もこの女性のように大人の女性に…
なぜ私のこの胸は中学に頃から変わらない?
なぜだ!まさか私の胸だけ時が止まっているのか?ありえない現実的にあり得ない事だ!

「午前中はあちらの教室で午後からは実技になります」

「はーい!」

「外にベンチがありますのでそこで一時までには待機しててください担当の教官が来ますので」

「はーい!」

午前中に学科の勉強をし午後から実技を受けるみたいだな

9時01分

あれ?教室に入るとそんなに人多くないな
あ!あいつが先生?

「おはようございます!席について下さい!
ようこそ教習所へここでは交通ルールや安全運転の基本を学びます
将来的には一人前のドライバーとして道路を走ることができるようになります
それには皆さんの努力と集中力が必要です居眠りはしないように!一緒に頑張りましょう!」

うむ!寝ずに頑張らなければ!!
しかしなんてイケメンだ!
奴はできるギルドマスターって所か!
はぁ…帰って早くWeb小説読みたい意外と素人投稿小説面白いのよね





12時57分

お昼ご飯も食べたし!次は初めての実技!
一時からだったな!

「こんにちは教官の山田ですあの車に早速乗りましょうか」

はぁおっさんか…女性には女性の教官がつくべきだろ!

「車を持つようになったら車に乗る前に
車の前後を確認してから車に乗り込みましょう!特に後ろに気をつけてください
子供が車の後ろにうずくまっていてバックした所引いたケースがありますから!」

そんなケースがあるのか……どんな状況だよ
あ!あったなお兄ちゃんが小学生の時に家の駐車場でうずくまって遊んでたらお母さんがバックしてきて兄ちゃん引いた…
よく生きて帰れたもんだよ!

ハイハイ前と後ろを確認っとお兄ちゃんは居ないね!!

「それでは乗って下さい!」

うっ!お母さんの軽自動車と違って広いし…しかも前が見えにくい…練習の車は軽自動車じゃ無いのか?前がこんな見えにくい状態で運転なんて不可能だ!

なるほど周囲を確認せずにいざ運転席に座ると危ない…運転席からは子供の姿なんて見えないな!
なんて恐ろしい乗り物だ…

「最初の課題は車の操作に慣れて下さい」

「はい…」

「クラッチを踏んでギアを入れてください
アクセルとブレーキを使いながら車を動かしてくださいブレーキはゆっくりと少しずつ離して下さい急に離すとエンストします」

「ううっ」
難しい

「我慢ですゆっくりゆっくりアクセル踏んでゆっくりとブレーキを緩める」

「ううっ」
こうか?

動いた!!

「上手いですよ!スムーズに発進できましたね!」

「うむ!」
動いただが前が見えにくい…緊張する

「発進できましたしあそこに駐車してみてください」

「うむ!」
うわぁハンドル手汗でベトベトじゃ…

「そうですそのまま駐車スペースに入り車を停めてください正確な位置に停めることが重要です」

「うむ!」
うりゃ!

「素晴らしいですよ!ちゃんと真っ直ぐ止めれましたね!じゃまた動かしてぐるっと回りましょ!所々に信号がありますので信号も意識して下さい
ここまでいい感じですね完璧です」

「そんな褒めすぎですよ!スピードもゆっくりで遅いし」

「いえいえ最初の動き出しでエンストする方もいるんですよ!スムーズに発進出来たし駐車も完璧!」

「ありがとうございます」
いい人で良かったおっさんだから緊張はしたが私が褒められるとは!

発進は確かアクセルとブレーキを…

「上手いですね!初めてでエンストしないなんて」

「どうも…」

「はい前みて!信号赤です停止線で停まりましょう!停止線は越えないように!」

「はい!」

「ブレーキはアクセルペダルから足を離したらひと呼吸おいてかかとをつけずに足の指の付け根あたりでじわっと踏み出します
ブレーキを一度緩めて減速しほぼ停車したらブレーキを踏みこむのがコツですよ
アクセルからブレーキをいきなり踏むのではなくひと呼吸おくのがポイントです」

「え?え?え!
わぁいきなり何言ってるか分からない運転中に話しかけないで!」

「停止線超えますよ!ブレーキかけて!!」

“キキィーガックン”

「…はいこれが急ブレーキってやつです!
これはやってはいけないブレーキの仕方なので気をつけてください
助手席には大事な人を乗せていると思って優しくブレーキを踏み込んでください!
こちらの“助手席側“にもブレーキが付いているので安心して下さい万が一の事があればこちらでブレーキをかけます!」

「…はい気をつけます……」
長々と話しかけるから…

「青になりました発進して下さい」

「はい…」
優しく…優しく…

あ!次の信号赤だ
優しく優しく…

「はい!今そこで“ポンピングブレーキ”!!ブレーキペダルを“数回にわけて踏む”!!!
ブレーキランプを複数回点灯させて後続車に停止をアピールする意味でもあるんですよ!」

「え?ポンピング?え??数回に分けて?アピール?!運転中にいきなり話しかけないで!」
数回!数回に分けて踏み込む!!踏み込む!!踏み込む!!!

“キキィーガックン”“ガックン”“ガックン”
“ガックン”

「…えーと……お名前又吉さんでしたね」

「…はい又吉です…」

「さっきも言いましたよね!!優しくと優しく踏めと!何で断続的に急ブレーキしてるんじゃわれ!!」

「数回に分けてと言っていましたので…
急にわからない単語もありましたし!」
キレた!!こわっ!

「午前中の学科でポンピングブレーキについて教えているはずですよね!!」

「気持ち悪いですよねこんなふうにされたら」

”ガックン”“ガックン”“ガックン”“ガックン”

教官は助手席に付いているブレーキメダルを強く踏み込んだ

私の体は激しく前後へと揺れる

「や やめてくださいこれが万が一の事ですか……気持ち悪いです…」

「なぁなぁなぁ!気持ち悪いだろ」

ガックン”“ガックン”“ガックン”
“ガックン”

ずっと私の体は激しく前後へと揺れる

「はい気持ち悪いです…
もう分かりましたからその急ブレーキの踏み込みやめてください…」

ガックン”“ガックン”“ガックン”
“ガックン”

揺れる前後へと私の体が激しく!

「だろお前はこんなふうに急ブレーキをしてるんだぞ」

ガックン”“ガックン”“ガックン”
“ガックン”

「分かりましたから…気をつけますから…それやめてもらって良いですか…」

私の体は前後へと揺れる

「次また急ブレーキしたらこのペンで刺すよ!」

「刺してる!刺してる!!!」

私の二の腕をペンでプスプスと刺してきた

こうして私の初めての実技は終わった
















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