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4.惚れてまうやろ
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絡まれた貴族の攻撃から守ってくれたのは、アンバーの瞳を持つ凛々しい人物であった。
女性である。恐らくここの女学校の生徒だ。
ややふっくらとした体格であるが、難癖をつけてきた貴族と異なり、こちらは筋肉だろう。
鍛え盛り上がった筋肉がドレスを膨らませている。姫を助けに現れる絵本の騎士のようだ。
「無知は恥ではないわ。知らない事を知らないままでおく事こそ、恥と思うべきだわ。」
振り返るとダンスをしていた金髪の生徒が居た。
「先程の話を耳にしてしまったのですが、貴族と平民が対等に接することに反対であると。
あなたはログナス男爵家の跡目として正式表明しておりますので、それはログナス家の意志と言うことですわね。
でしたらロスチャイルド家との取り引きもお辞めになるべきですわ。ソフィア?」
「公爵令嬢であるアシュレー様がお聞きになった言葉であれば、父もそれに同意すると思います。」
すぐ近くにいたピアノを弾いていた黒髪の少女、ソフィア様が答えた。
太った生徒が言い返す。
「好きにしたら良いじゃない!たかだか平民に何ができるのよ!」
「ログナス様とは、税として領民より納められた農業作物の約9割を購入させて頂いております。」
「たった9割じゃない!平民のくせに偉そうに!」
…9割ってほぼ全てだけど。この令嬢頭大丈夫?
取り引き停止したらお金が得られなくて、国への税も払えなくなる。そんなことしたら貴族はお家断絶のはずだが。
そんな税の仕組みなんてこの国の男なら誰だって知っている。
「また融資は現在までに5000万リーフほどですが、こちらも即時停止可能です。」
「たかだか5000万リーフが何よ!!!」
そのときアシュレー様がふふっと笑った。
「そうね、5000万リーフくらいだもの。」
美しく優雅な笑みを浮かべる。
内心狼狽していたログナス嬢も、つられて笑みを浮かべた。
「ログナス領全土を国に買い上げてもらい、屋敷と服装飾品も全て売却。それでもかなり足りないかと思うので、身売りして返済してゆくのが宜しいかと思いますわ。」
さらっと酷いこと言った!
やっとログナス嬢もロスチャイルド家に手を引かれると大変だと気がついたようだ。
「え…あっ…あ……」と言葉が出ないほど狼狽えている。過呼吸で倒れないか心配だ。
「大丈夫ですわ。今すぐに、と言うわけではないのですから。」
「あ!…ありがとうございます!!!」
ログナス嬢は齧り付くようにアシュレー様にお礼を言い走るようにホールから去って行った。後に控えていた取り巻きのような令嬢達も、蜘蛛の子を散らすようにいなくなる。
…今すぐにではない、といっただけで真っ暗な未来の否定しなかったが、良いのか?
「助けていただき大変有難うございました。カレン教授の元にいるクーと申します。」
アシュレー様、ソフィア様、そして女騎士の様な生徒様に感謝を伝えた。
「私はアシュレー・ド・リオンヌですわ。リオンヌ公爵家の長女ですの。どうぞアシュレーとお呼びくださいね。
あなたの事はカレン教授より、大変有望な方だと聞き及んでおります。」
緩く波打つバターブロンドがシャンデリアの明かりを反射しキラキラ輝く。
すみれ色の瞳を見て、既視感が起こる。
この人に以前あったことがある?
それともよく似た人を知っているのか。
「こちらの方はソフィア・ロスチャイルド様。ロスチャイルド家の次女でいらっしゃいます。
諸外国事情に通じ、語学堪能。さらに楽器の演奏にも秀でた才女でいらっしゃいますのよ。」
「ソフィアとお呼び下さい。ロスチャイルド家も貴族ではないので、どうぞ親しくして下さい。」
黒髪のせいかやや幼く見えるが、アシュレー様と同じ18歳らしい。グレーの瞳がいたずらっ子のようにきらめく。
「そして、こちらの方はキュレット・ド・ザントライユ様。陸軍大尉であるオーギュスト・ド・ベル様の家で過ごされてますので、武術に長けていらっしゃいますの。騎士様のようでとても素敵ですよね。」
「またアシュレー様はそのように庇って下さって…先程は女人としてはしたない姿をお見てして申し訳ありません。」
キュレット様が頭を下げる。
「そんなことありません!キュレット様に守って頂かなかったら怪我をしていました。貴族に口答えした私が悪かったのですがとても助かりました!」
「そうですわ。先程のログナス家などは貴族至上主義の方々なのです。度々平民の方を虐め、遺憾ながら同じ貴族として大変恥ずかしく思います。」
「でも貴族至上主義の筆頭であるメディンヌ家のジュリエット様がこの場におられず幸いでしたね。」
「そうですわね。このところジュリエット様をあまりお見かけしませんが…」
いつの間にか講義の時間は終わり、生徒達は各自自由に過ごしているようだ。
「ところで、クー様はカレン教授より科学を学んでいると聞きましたが、本当ですか?」
ソフィア様が不思議そうに尋ねてきた。この国の女性は科学を始め学問とは無縁なので、それを知ろうとする私を変に思っているのだろうか。
「海を渡ったところにエンリッシュという国があります。そちらでは女性も大学に通っているらしいですのです。なのに何故、科学を志す方がこの様な女学校にいらっしゃるのですか?」
………なに?
「女性も…大学に通える?」
「そのように聞いております。」
生まれてくる国、間違えたー!!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この国、フランツ王国の貨幣は
20円 = 1リーフ = 100ソル
5000万リーフは約1億円です。
肉体労働者の一日の賃金は1リーフ程ですが、貴族令嬢一日の衣装代は500リーフ、王族だと6000リーフかかる世界です。
女性である。恐らくここの女学校の生徒だ。
ややふっくらとした体格であるが、難癖をつけてきた貴族と異なり、こちらは筋肉だろう。
鍛え盛り上がった筋肉がドレスを膨らませている。姫を助けに現れる絵本の騎士のようだ。
「無知は恥ではないわ。知らない事を知らないままでおく事こそ、恥と思うべきだわ。」
振り返るとダンスをしていた金髪の生徒が居た。
「先程の話を耳にしてしまったのですが、貴族と平民が対等に接することに反対であると。
あなたはログナス男爵家の跡目として正式表明しておりますので、それはログナス家の意志と言うことですわね。
でしたらロスチャイルド家との取り引きもお辞めになるべきですわ。ソフィア?」
「公爵令嬢であるアシュレー様がお聞きになった言葉であれば、父もそれに同意すると思います。」
すぐ近くにいたピアノを弾いていた黒髪の少女、ソフィア様が答えた。
太った生徒が言い返す。
「好きにしたら良いじゃない!たかだか平民に何ができるのよ!」
「ログナス様とは、税として領民より納められた農業作物の約9割を購入させて頂いております。」
「たった9割じゃない!平民のくせに偉そうに!」
…9割ってほぼ全てだけど。この令嬢頭大丈夫?
取り引き停止したらお金が得られなくて、国への税も払えなくなる。そんなことしたら貴族はお家断絶のはずだが。
そんな税の仕組みなんてこの国の男なら誰だって知っている。
「また融資は現在までに5000万リーフほどですが、こちらも即時停止可能です。」
「たかだか5000万リーフが何よ!!!」
そのときアシュレー様がふふっと笑った。
「そうね、5000万リーフくらいだもの。」
美しく優雅な笑みを浮かべる。
内心狼狽していたログナス嬢も、つられて笑みを浮かべた。
「ログナス領全土を国に買い上げてもらい、屋敷と服装飾品も全て売却。それでもかなり足りないかと思うので、身売りして返済してゆくのが宜しいかと思いますわ。」
さらっと酷いこと言った!
やっとログナス嬢もロスチャイルド家に手を引かれると大変だと気がついたようだ。
「え…あっ…あ……」と言葉が出ないほど狼狽えている。過呼吸で倒れないか心配だ。
「大丈夫ですわ。今すぐに、と言うわけではないのですから。」
「あ!…ありがとうございます!!!」
ログナス嬢は齧り付くようにアシュレー様にお礼を言い走るようにホールから去って行った。後に控えていた取り巻きのような令嬢達も、蜘蛛の子を散らすようにいなくなる。
…今すぐにではない、といっただけで真っ暗な未来の否定しなかったが、良いのか?
「助けていただき大変有難うございました。カレン教授の元にいるクーと申します。」
アシュレー様、ソフィア様、そして女騎士の様な生徒様に感謝を伝えた。
「私はアシュレー・ド・リオンヌですわ。リオンヌ公爵家の長女ですの。どうぞアシュレーとお呼びくださいね。
あなたの事はカレン教授より、大変有望な方だと聞き及んでおります。」
緩く波打つバターブロンドがシャンデリアの明かりを反射しキラキラ輝く。
すみれ色の瞳を見て、既視感が起こる。
この人に以前あったことがある?
それともよく似た人を知っているのか。
「こちらの方はソフィア・ロスチャイルド様。ロスチャイルド家の次女でいらっしゃいます。
諸外国事情に通じ、語学堪能。さらに楽器の演奏にも秀でた才女でいらっしゃいますのよ。」
「ソフィアとお呼び下さい。ロスチャイルド家も貴族ではないので、どうぞ親しくして下さい。」
黒髪のせいかやや幼く見えるが、アシュレー様と同じ18歳らしい。グレーの瞳がいたずらっ子のようにきらめく。
「そして、こちらの方はキュレット・ド・ザントライユ様。陸軍大尉であるオーギュスト・ド・ベル様の家で過ごされてますので、武術に長けていらっしゃいますの。騎士様のようでとても素敵ですよね。」
「またアシュレー様はそのように庇って下さって…先程は女人としてはしたない姿をお見てして申し訳ありません。」
キュレット様が頭を下げる。
「そんなことありません!キュレット様に守って頂かなかったら怪我をしていました。貴族に口答えした私が悪かったのですがとても助かりました!」
「そうですわ。先程のログナス家などは貴族至上主義の方々なのです。度々平民の方を虐め、遺憾ながら同じ貴族として大変恥ずかしく思います。」
「でも貴族至上主義の筆頭であるメディンヌ家のジュリエット様がこの場におられず幸いでしたね。」
「そうですわね。このところジュリエット様をあまりお見かけしませんが…」
いつの間にか講義の時間は終わり、生徒達は各自自由に過ごしているようだ。
「ところで、クー様はカレン教授より科学を学んでいると聞きましたが、本当ですか?」
ソフィア様が不思議そうに尋ねてきた。この国の女性は科学を始め学問とは無縁なので、それを知ろうとする私を変に思っているのだろうか。
「海を渡ったところにエンリッシュという国があります。そちらでは女性も大学に通っているらしいですのです。なのに何故、科学を志す方がこの様な女学校にいらっしゃるのですか?」
………なに?
「女性も…大学に通える?」
「そのように聞いております。」
生まれてくる国、間違えたー!!!!
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この国、フランツ王国の貨幣は
20円 = 1リーフ = 100ソル
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肉体労働者の一日の賃金は1リーフ程ですが、貴族令嬢一日の衣装代は500リーフ、王族だと6000リーフかかる世界です。
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