輪廻に踊れウィリアム

佐々木犬蛇MAX

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幕開け

0.0 表現者

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 人は誰もが表現者である。

 人生という舞台の主人公であり、脚本家であり、演出家だ。

 いや、まぁ、実のところ言うと"表現者"という表現こそ鼻につく高飛車な印象があって好きではないのだが、今は便宜上"表現者"と表現させてもらう。いち表現者の端くれとして。
 何かを説明する時に肝要なのは、意見でも思想でもなく明確な事実だからね。"案内人"として分かりやすく伝える義務がある。

 そう、"説明"だ。私はいま説明をしている。明白に説いている。

 "何"を?
 "誰"に?

 もちろん。

 "舞台を楽しむために必要なこと"を
 "観客である君たち"に、だ。

 物語を物語たらしめる。
 最も重要な"観客オーディエンス"である君たちには存分にこの演目に没入してほしい。

 え? "誰もが"等とほざいておいて、観客は表現者ではないんじゃないかって?
 冗談だろう? 観客ほどに舞台に強い影響を及ぼす存在はないじゃないか。
 世界を産み落とし、形造った。そう、神にも等しい表現者。
 それが君たちではないのか?

 ・・・まぁいい。少し話が脱線したな。説明に戻ろう。

 人は生まれた瞬間に舞台の中央へと落とされる。
 スポットライトを独り占め、なんてことはありえないがね。

 主要な場面やキャストは生まれながらに決められている面もあるにはあるが、どう転ぶかはそれこそ無限の選択肢の果てに集約される。
 自分の考えた筋道にアトランダムに配置されたキャスト、偶発的なアクシデント、果てには突然の幕引き、なんてものに至るまで。
 決して思い通りに事が進まない即興劇エチュードは、それこそ表現者としての冥利に尽きるとは思わないか?
 時には捻じ曲げ、時には空かし、自身の思い描く結末へと導く。
 ただ、残念なことに、舞台に立つすべてのキャストが、ヒロインから端役に至るまでその尽くが。自分こそが主人公であり演出家であると思っているものだから大変だ。思い描く通りに―――なんてこと、そうそうありはしないがね。

 あー、つまりだ、何が言いたいかというと、これから"紹介"をする彼らもまた、それを取り巻く人々を含めて全ての人物が

 『これから語られる物語の唯一にして絶対ではない主人公である』

 ということだ。

 少し回りくどかっただろうか?

 わかりやすく端的な説明で君たちを物語の導入へと誘う"案内人"としての役割を私は果たせていただろうか?

 まぁ、なんだ、私もこういった役回りは不得手でね。"あー"だの"まぁ"だのとつい言葉がつっかえてしまうのだがそれもまた即興劇のだいご味ということで一つ。
 私は私の人生という舞台の主役ではあってもプロフェッショナルな役者ではないのでね。

 あー、まぁ、それじゃあさっそく登場人物の紹介と行こうか。

 1人目は、、、、うん、そうだな彼がいい。

 とある亡国の騎士についてだ。。。。
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