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第3話 20××年 5月2日 その3
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第3話 20××年 5月2日 その3
俺は真夜中に学校に忘れ物を取りに家を出たヤヨイちゃんを家に連れ戻すために、夜道を走る。
おそらくヤヨイちゃんの言っていた忘れ物というのはウソだろう。
実際は彼氏なにかに会いに行ったに違いない。
それにこの真夜中だ!もうどんな間違いが起きてもおかしくない!
ヤヨイちゃんの実母のアカリさんが家出した今、ヤヨイちゃんをオオカミと化した男子高校生から守れるのは義父の俺だけなんだ!
しかし、学校まであともうすこしというところで俺はとんでもないものを遭遇してしまった。
俺の目の前に金髪のツインテ―ルが特徴的な女子高生が道の真ん中で全身血塗れになった状態で仰向けに倒れている。
なぜ、このタイミングで!
いやいや、ここは人命優先だ、俺は携帯電話で救急車を呼ぼうとした。
「やめて!救急車は呼ばないで!」
血塗れの女子高生が叫んだ。
「そ、そんなこと言ったって君、このままだと、どう考えても死んじゃうぜ?」
「あのね、私はあんたのためを思っていってるの」
「そ、そんなこと言っても、ここで君を見捨てたら俺は一生後悔すると思う」
「増援が来れば、私は助かるから、このまま放っておいて」
「増援?なんだ、君は軍人なのか?でも、こんな暗い夜道の真ん中で倒れてたら車に轢かれてしまうぞ!」
俺は女子高生の体を肩に担いで、街路の脇に横たわらせる。
おそらくもう五分は過ぎたはずだ。
それなのに、女子高生が言っていた増援とやらは来ない。
「おい、増援、来るんじゃないの?」
「もしかたしたら、見捨てられたのかもね...」
「そ、そんな...じゃあ、なおさら救急車を呼んだほうが...」
「学校で友達が死んだわ...」
「ふぇ?」
「いつもニコニコしてる無神経な女だった...だから一発ビンタをくらわせてやったわ」
「バ、バイオレンス...」
「でも、その子、笑ってた。まるでこの世界に怖いものなんて何一つないみたいに...」
「そ、その子死んじゃったの?」
「ええ、そうよ。でも私はあの子と違って、まだ死にたくないわ...」
「なら、救急車を!」
「救急車を呼んだらおそらくあなたはもう今の生活には戻れない...」
「ふぇ?」
「あなた達が当たり前だと感じているつまらない日常を大事にしなさい...そうすれば私達の努力はきっと報われる」
俺と女子高生の前にサイレンを鳴らしていない救急車が急停止する。
救急車からはスーツ姿のイカしたおじさんが出てくる。
「おいおい、なにおセンチな気分に浸ってんだよ、サツキちゃん」
「遅いわよ...!バカ...!」
「あ、あの...」
俺の存在に気づいたイカしたおじさんが満面の笑みを浮かべて口を開く。
「ああ、俺、サツキちゃんの彼氏です」
「死ね...」
「冗談冗談。サツキちゃんさ、怒ると傷口が開いちまうぜ」
救急車から担架を持った医療スタッフたちが出てくる。
「君、高村友助だろ?」
「は、はぁ...なんで俺の名前知ってんの?」
「そりゃあ、知ってるに決まってるだろぉ~」
「おい!ジジイ!あまり私たちのことは...」
担架に乗せられたサツキちゃんがイカしたおじさんを叱責する。
「はいはい。とにかく、足を負傷して動けないサツキを道路脇に寄せてくれてありがとな」
「み、見てたんですか?」
「GPSだよ、G・P・S!じゃあな!」
どこか陽気でイカしたおじさんはサツキちゃんを乗せた救急者の助手席に乗り込む。
そしてそのまま、瀕死の女子高生を乗せた救急車はサイレンも鳴らさず、俺の前から走り去って行った。
携帯の着信音がなる。
電話に出ると受話口からヤヨイちゃんの声が聞こえる。
「友助さん、どこか出かけてるんですか?ケガはないですか?」
ヤヨイちゃんの声が震えている、もしかして泣いてるのかな?
「お、俺は大丈夫、ちょっとジュース飲みたくなって、自販機で買ってきただけだから。それより忘れ物、学校にちゃんと取りにいったの?」
「は、はい...体操着、今日結構、汗かいちゃったんで洗濯しなくちゃって思って...」
「あっそぉ!な~んだ!俺の誤解か、よかったよかった!」
「誤解?」
「ううん、こっちの話、ほんじゃ、電話切って家に帰るわ」
「友助さんのお夕飯、温めておきますね」
「うん、ありがとう」
俺は電話を切る。
俺は家に帰ることにした。
「友助さん、自販機にジュースを買いに行った割には、ずいぶんと汗だくですね」
「ハハ...そんなことより俺、腹減っちゃったよ」
「お夕飯、今、温め終えたばかりですよ」
「そうなの?いや~たすかるな~!」
俺とヤヨイちゃんは夕食を再開させる。
それにしても、あのイカしたおじさん、どうして俺の名前を知っていたのだろうか。
「友助さん、おいしいですか?」
「うん、おいしい」
ヤヨイちゃんの笑顔がまぶしかった。
次回予告 第4話 20××年 5月3日
俺は真夜中に学校に忘れ物を取りに家を出たヤヨイちゃんを家に連れ戻すために、夜道を走る。
おそらくヤヨイちゃんの言っていた忘れ物というのはウソだろう。
実際は彼氏なにかに会いに行ったに違いない。
それにこの真夜中だ!もうどんな間違いが起きてもおかしくない!
ヤヨイちゃんの実母のアカリさんが家出した今、ヤヨイちゃんをオオカミと化した男子高校生から守れるのは義父の俺だけなんだ!
しかし、学校まであともうすこしというところで俺はとんでもないものを遭遇してしまった。
俺の目の前に金髪のツインテ―ルが特徴的な女子高生が道の真ん中で全身血塗れになった状態で仰向けに倒れている。
なぜ、このタイミングで!
いやいや、ここは人命優先だ、俺は携帯電話で救急車を呼ぼうとした。
「やめて!救急車は呼ばないで!」
血塗れの女子高生が叫んだ。
「そ、そんなこと言ったって君、このままだと、どう考えても死んじゃうぜ?」
「あのね、私はあんたのためを思っていってるの」
「そ、そんなこと言っても、ここで君を見捨てたら俺は一生後悔すると思う」
「増援が来れば、私は助かるから、このまま放っておいて」
「増援?なんだ、君は軍人なのか?でも、こんな暗い夜道の真ん中で倒れてたら車に轢かれてしまうぞ!」
俺は女子高生の体を肩に担いで、街路の脇に横たわらせる。
おそらくもう五分は過ぎたはずだ。
それなのに、女子高生が言っていた増援とやらは来ない。
「おい、増援、来るんじゃないの?」
「もしかたしたら、見捨てられたのかもね...」
「そ、そんな...じゃあ、なおさら救急車を呼んだほうが...」
「学校で友達が死んだわ...」
「ふぇ?」
「いつもニコニコしてる無神経な女だった...だから一発ビンタをくらわせてやったわ」
「バ、バイオレンス...」
「でも、その子、笑ってた。まるでこの世界に怖いものなんて何一つないみたいに...」
「そ、その子死んじゃったの?」
「ええ、そうよ。でも私はあの子と違って、まだ死にたくないわ...」
「なら、救急車を!」
「救急車を呼んだらおそらくあなたはもう今の生活には戻れない...」
「ふぇ?」
「あなた達が当たり前だと感じているつまらない日常を大事にしなさい...そうすれば私達の努力はきっと報われる」
俺と女子高生の前にサイレンを鳴らしていない救急車が急停止する。
救急車からはスーツ姿のイカしたおじさんが出てくる。
「おいおい、なにおセンチな気分に浸ってんだよ、サツキちゃん」
「遅いわよ...!バカ...!」
「あ、あの...」
俺の存在に気づいたイカしたおじさんが満面の笑みを浮かべて口を開く。
「ああ、俺、サツキちゃんの彼氏です」
「死ね...」
「冗談冗談。サツキちゃんさ、怒ると傷口が開いちまうぜ」
救急車から担架を持った医療スタッフたちが出てくる。
「君、高村友助だろ?」
「は、はぁ...なんで俺の名前知ってんの?」
「そりゃあ、知ってるに決まってるだろぉ~」
「おい!ジジイ!あまり私たちのことは...」
担架に乗せられたサツキちゃんがイカしたおじさんを叱責する。
「はいはい。とにかく、足を負傷して動けないサツキを道路脇に寄せてくれてありがとな」
「み、見てたんですか?」
「GPSだよ、G・P・S!じゃあな!」
どこか陽気でイカしたおじさんはサツキちゃんを乗せた救急者の助手席に乗り込む。
そしてそのまま、瀕死の女子高生を乗せた救急車はサイレンも鳴らさず、俺の前から走り去って行った。
携帯の着信音がなる。
電話に出ると受話口からヤヨイちゃんの声が聞こえる。
「友助さん、どこか出かけてるんですか?ケガはないですか?」
ヤヨイちゃんの声が震えている、もしかして泣いてるのかな?
「お、俺は大丈夫、ちょっとジュース飲みたくなって、自販機で買ってきただけだから。それより忘れ物、学校にちゃんと取りにいったの?」
「は、はい...体操着、今日結構、汗かいちゃったんで洗濯しなくちゃって思って...」
「あっそぉ!な~んだ!俺の誤解か、よかったよかった!」
「誤解?」
「ううん、こっちの話、ほんじゃ、電話切って家に帰るわ」
「友助さんのお夕飯、温めておきますね」
「うん、ありがとう」
俺は電話を切る。
俺は家に帰ることにした。
「友助さん、自販機にジュースを買いに行った割には、ずいぶんと汗だくですね」
「ハハ...そんなことより俺、腹減っちゃったよ」
「お夕飯、今、温め終えたばかりですよ」
「そうなの?いや~たすかるな~!」
俺とヤヨイちゃんは夕食を再開させる。
それにしても、あのイカしたおじさん、どうして俺の名前を知っていたのだろうか。
「友助さん、おいしいですか?」
「うん、おいしい」
ヤヨイちゃんの笑顔がまぶしかった。
次回予告 第4話 20××年 5月3日
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