彼とのキスは、乾杯のあとで。

天海 時雨

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番外編

番外編 梨紗の憂鬱:5 

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「……それで、メールってなんだよ」
「……こ、これ」

 たまりにたまった迷惑メールの数々。

「……んだよ、これ」

 たちまち、蓮の眉間に深い皺が寄る。まだ母親の子宮の中にいる幼児のエコー写真や、ホテルから出てくる男女を撮ったもの──しかしよく考えてみるとこれは第三者が撮影したものであり、おかしいと梨紗は今更に思った。

「……ふーん」

 その一言にも満たない言葉に、怒りと苛立ちが凝縮されている。思わずくすっと笑いそうになったのを抑えて、封じ込めるようにスマートフォンの画面を暗くした。

「なるほどね……メルアドは?」
「これ。でも全く見覚えないし、知らない」
「俺が知ってる。言っとくから、心配しないで」
「か、軽く、で……」
「……で?」

 少しからかうように、続きを促した蓮。

「えっ……『で?』って、何? 私、何かした……?」
「……こんなメールだけで俺を信用しなくなるとは、まだが足りてないみたいだね?」

 にやりと不敵な笑い──蓮が何かを企む時の笑みだ。この笑いを見たが最後、梨紗はベッドから起き上がれなくなる。

「そっ、それはないっ!」
「じゃあ何で、すぐ俺に言わなかったの?」
「そ、それは……その……」
「……分かってる、そこまで俺も馬鹿じゃない。言いたくなかった気持ちも分かるよ──でもね? 突然大切な人が、荷物を持って家から出ようとするの見たら、怖くなる」
「ご、ごめんなさい……」

 ずるい、と梨紗は思う。
 いつも不敵でつかみどころがなくて自分を翻弄するくせに、こういう弱々しい口調はずるい。

「……はーぁ、もう一週間以上の出張は行ってやらない」
「それは駄目だよ、、でしょ?」
「俺は梨紗といられるならそれでいい」
「……っ、なんでそういうことを赤くなりもせずに言うかなぁっ……!!」

 ──弱々しい口調は、させないで。
 ──いつも私を、引っ張って。
 そんな君が、一番だから。

「……愛してるよ?」
「……私も」

 結局流されてしまう私は、弱いのかは分からない。
 それでも私は、蓮がいた方が強くなれる。
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