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「……早く、帰ってこないかな」
ルカはクラネスと出会ったあと、また家に戻って窓の外を見つめていた。しかしもう一つ考えていることは────。
「……あの人、誰だったんだろう」
ルカはあの男がかつての自分の婚約者ということに、全く気づいていなかった。
「……貴族の人、かな」
静かに、両親たちの帰りを待つ時間──だったはずのその時間は、粉々に砕かれようとしていることも、未だ知らずに。
遠くから聞こえてきたあの忌まわしい音を、またルカは確かな音として耳に捉えた。
「っ、またっ……!?」
あの時とは違い、ルカは恐怖に怯えていた。あの時こそ、『マヤたちを傷つけようとした』ということに対する怒りがあったものの──今は、怒りこそない。
ただただ怯えているルカに、あの時のようなことができるはずもなかった。
そして更に追い討ちをかけるように、ルカを急激な眠気が襲う。ふらふらとする体に鞭を打って、辿り着いた所は、そして力尽きた所は──ただの、固い床だった。
「…………」
眠りに落ちた眠り姫を、守る者は誰もいない。しかし────。
「──何の騒ぎだ? しかもあの兵、コヌルの……」
「っ、あれは……っどうやって!?」
コヌルは、民間に兵を隠していた。
もし自分が牢屋にぶち込まれるようなことがあれば、それは絶対にシレーグナを森に隠したことがバレる時。
そうしたら証拠隠滅の為、シレーグナを本当に消してしまえるように。
「っあの小屋にっ、向かっているようですっ……!」
「サナはすぐ王家に使いを出せ、俺が今ここにいることは誰もが知っている。それとコヌルは──」
「……刑に、処し、ましょう」
サナの声は、震える。王家に刃向かった罪人とはいえ、自分の父がただの肉体となるのを──サナは見たくもなかった。
「……あぁ、そうだな。俺はあの小屋に裏から入る。サナはここで待っていろ」
「いえ、私も後で向かわせて頂きます」
「お前に何かあったら俺はルクレオにどんな面下げて会えばいい?」
「そんなことは絶対させません。ほら、行ってください! 私も後で向かいます故!」
「っ、頼むぞ!」
軽快に走り出したクラネスの背は、サナには頼もしく見えた。まあ、ルクレオほどではないが────、シレーグナはそれを知っていたのか、と今更ながらに思った。
「……シレーグナ様が、いたなら」
クラネス様は、幸せだったのだろう。
少し哀しげに微笑んで、サナは梟を飛ばした。
ルカはクラネスと出会ったあと、また家に戻って窓の外を見つめていた。しかしもう一つ考えていることは────。
「……あの人、誰だったんだろう」
ルカはあの男がかつての自分の婚約者ということに、全く気づいていなかった。
「……貴族の人、かな」
静かに、両親たちの帰りを待つ時間──だったはずのその時間は、粉々に砕かれようとしていることも、未だ知らずに。
遠くから聞こえてきたあの忌まわしい音を、またルカは確かな音として耳に捉えた。
「っ、またっ……!?」
あの時とは違い、ルカは恐怖に怯えていた。あの時こそ、『マヤたちを傷つけようとした』ということに対する怒りがあったものの──今は、怒りこそない。
ただただ怯えているルカに、あの時のようなことができるはずもなかった。
そして更に追い討ちをかけるように、ルカを急激な眠気が襲う。ふらふらとする体に鞭を打って、辿り着いた所は、そして力尽きた所は──ただの、固い床だった。
「…………」
眠りに落ちた眠り姫を、守る者は誰もいない。しかし────。
「──何の騒ぎだ? しかもあの兵、コヌルの……」
「っ、あれは……っどうやって!?」
コヌルは、民間に兵を隠していた。
もし自分が牢屋にぶち込まれるようなことがあれば、それは絶対にシレーグナを森に隠したことがバレる時。
そうしたら証拠隠滅の為、シレーグナを本当に消してしまえるように。
「っあの小屋にっ、向かっているようですっ……!」
「サナはすぐ王家に使いを出せ、俺が今ここにいることは誰もが知っている。それとコヌルは──」
「……刑に、処し、ましょう」
サナの声は、震える。王家に刃向かった罪人とはいえ、自分の父がただの肉体となるのを──サナは見たくもなかった。
「……あぁ、そうだな。俺はあの小屋に裏から入る。サナはここで待っていろ」
「いえ、私も後で向かわせて頂きます」
「お前に何かあったら俺はルクレオにどんな面下げて会えばいい?」
「そんなことは絶対させません。ほら、行ってください! 私も後で向かいます故!」
「っ、頼むぞ!」
軽快に走り出したクラネスの背は、サナには頼もしく見えた。まあ、ルクレオほどではないが────、シレーグナはそれを知っていたのか、と今更ながらに思った。
「……シレーグナ様が、いたなら」
クラネス様は、幸せだったのだろう。
少し哀しげに微笑んで、サナは梟を飛ばした。
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