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虚無感 クラネスside
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感情を、はっきり表さなかったこと。
それが、今の俺の『後悔』だ。
あのパーティーの夜、彼女がいなくなって、目を離していたことを後悔して。何で見つけられないんだろうと、自分を責めもした。
しかし俺は、元から彼女に、何の感情も表さなかった。
彼女に嫌いだと言っても、彼女は何も言わないだろう。でもそれを言えば──何かは変わっていたのか?
「……クラネス、入るぞ」
ノックをされ、部屋に入るのは義父──いや、そうなるのかも分からなくなってしまった──カトレル王。ニーアリアン──義妹とよく似た漆黒の髪。
「あぁ、カトレル様……」
「……随分とやつれたように見えるのは、私の気のせいだと思いたいな」
「……このまま痩せ細ってしまったら、どうなるでしょうね」
「冗談でも、そんなことを言わないでくれ。──今日ここに来たのはな、そなたに重大な話があるからだ」
「私に、話? 何のお話でしょうか」
「……実は、な──」
そこからの話は、断片的にしか覚えていない。しかし何かに打ち震えるような感覚、そして驚愕、そして微かな──喜びのような感情があった。
「……そう言えば、またコヌルがサナとの婚約を蒸し返して来たぞ。お前からも一度ハッキリと言ってやれ」
「……えぇ、今日言わせていただくつもりでした」
「おぉ、なら良かった。──実の所、あの男は嫌いでな」
「何故です?」
「……図々しく、かと言って美しいわけでもない。あれで美丈夫であれば少しは変わっていたのだろうがな。娘も平凡だ──あれでは地位目当ての男しか寄らない」
やはり降格させるか、と王は言う。
「……一層の事、シレーグナを発見した後処刑してしまってはどうだろう」
「見つかる確証はないですが、それには賛成です」
シレーグナがいなくなったと知った後、あの女──サナだかサヤ。そいつが異常に近づいてくるようになった。体調不良を理由に宮に残っている上、俺の部屋を訪ねてくる。
「……地位目当ての男が寄る女は、地位を欲しがるものなのですね」
「くくっ、まぁいい。事後のことは任せろ」
誰かに聞かれているかもしれないと考え、普通なら明確な発言はしないものだろう。しかし竹を割ったようなこの人の性格が、俺は好きだ。
「えぇ、ありがとうございます」
「それではな、クラネス。もうやつれるなよ」
「善処します」
好きと、はっきり言わなかった。
それが、今の俺の『後悔』だ。
それが、今の俺の『後悔』だ。
あのパーティーの夜、彼女がいなくなって、目を離していたことを後悔して。何で見つけられないんだろうと、自分を責めもした。
しかし俺は、元から彼女に、何の感情も表さなかった。
彼女に嫌いだと言っても、彼女は何も言わないだろう。でもそれを言えば──何かは変わっていたのか?
「……クラネス、入るぞ」
ノックをされ、部屋に入るのは義父──いや、そうなるのかも分からなくなってしまった──カトレル王。ニーアリアン──義妹とよく似た漆黒の髪。
「あぁ、カトレル様……」
「……随分とやつれたように見えるのは、私の気のせいだと思いたいな」
「……このまま痩せ細ってしまったら、どうなるでしょうね」
「冗談でも、そんなことを言わないでくれ。──今日ここに来たのはな、そなたに重大な話があるからだ」
「私に、話? 何のお話でしょうか」
「……実は、な──」
そこからの話は、断片的にしか覚えていない。しかし何かに打ち震えるような感覚、そして驚愕、そして微かな──喜びのような感情があった。
「……そう言えば、またコヌルがサナとの婚約を蒸し返して来たぞ。お前からも一度ハッキリと言ってやれ」
「……えぇ、今日言わせていただくつもりでした」
「おぉ、なら良かった。──実の所、あの男は嫌いでな」
「何故です?」
「……図々しく、かと言って美しいわけでもない。あれで美丈夫であれば少しは変わっていたのだろうがな。娘も平凡だ──あれでは地位目当ての男しか寄らない」
やはり降格させるか、と王は言う。
「……一層の事、シレーグナを発見した後処刑してしまってはどうだろう」
「見つかる確証はないですが、それには賛成です」
シレーグナがいなくなったと知った後、あの女──サナだかサヤ。そいつが異常に近づいてくるようになった。体調不良を理由に宮に残っている上、俺の部屋を訪ねてくる。
「……地位目当ての男が寄る女は、地位を欲しがるものなのですね」
「くくっ、まぁいい。事後のことは任せろ」
誰かに聞かれているかもしれないと考え、普通なら明確な発言はしないものだろう。しかし竹を割ったようなこの人の性格が、俺は好きだ。
「えぇ、ありがとうございます」
「それではな、クラネス。もうやつれるなよ」
「善処します」
好きと、はっきり言わなかった。
それが、今の俺の『後悔』だ。
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