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口を開けて?
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「……いや、申し訳ございません。娘の体調が悪いと言えど、何日も宮に留まるなど」
リセク国宮夕餉。いつもなら十個しかない席が、今宵は十二個ある。そしてその席に座っているのは前のパーティーで貴族代表だったコヌルとその娘サナだ。
「あぁ、そのことなのだがね、コヌル。そなたの娘は体調不良ということなのだろうね?」
「え? えぇ、そうですが……」
くすりと笑ってコヌルに問うカトレル。それに対して戸惑ったようにコヌルは肯定する。
「それはおかしいですね。体調不良の貴族の娘が、私の部屋を連日訪れており、仕事もままならないのですが」
「え……クラネス様!?」
「貴様がその名を呼ぶな。腐る」
吐き捨てるように言うニーアリアン。
あの後クラネスは、ドアの外にいたらしいニーアリアンと遭遇した。彼女もサナを疎ましく──否、言ってしまえば邪魔だと思っていたらしかったので、クラネスは例の作戦の協力を頼むことにしたのだ。
「……サナ。あなたは少しやりすぎたわね」
そしてアーリゼア。彼女自身も自分でサナがクラネスに言い寄っていることに気づいていたらしい。
「サ、サナ!? お前は何をしたんだ!?」
「──ち、ちうえ……」
「……なーんて、ね。サナの名前も腐るわね」
「……え?」
「申し訳ございません、クラネス様。私、一つ隠し事をしてございました」
そう言うニーアリアンの目は、これまでに見たことがない清々しさを秘めている。
「……彼女は、ただ父の言う事を聞いていただけでございます」
「──どういう事だ?」
俯いたまま何も話さないサナと、顔を真っ赤にしているコヌル。まるで親子のようには見えない。
「まず事の始まりは、シレーグナ様の失踪。これを好機と見たコヌルは娘をクラネス様に嫁がせる事、そして自分の地位を上げる事を思いつきます」
「あぁ、そこまでは分かる」
「しかし彼女には──まぁ、様々な理由があり、義兄上に嫁ぎたいとは思えませんでした。理由は察していただけるかと存じます」
ですが彼女の願いは父の欲望と相反しました、そうニーアリアンは吐き捨てた。
「コヌルはサナをクラネスに嫁がせる為、彼女と義兄上の距離を縮めようとします、が──まぁ見ての通り、失敗したようですね。ルクレオ!」
フンと鼻で笑い、誰かの名前を読んだ彼女。するとその名前なのであろう男が物陰から歩き出した。
「……ありがとうございます、姫様」
「無粋なことは嫌いなのよ。それにサナだってやりたくてやったことではないでしょう」
「……さて、そういうことです、父上。罪状は十分かと考えますが、如何致しますか」
歌うように言ったアーリゼア。しかしニーアリアンが、またそれを遮る。
「いいえ、まだ終わってはございません」
罪状はまだある。そう聞いたコヌルの口は、まるで他人事かのようにあんぐりと開いていた。
リセク国宮夕餉。いつもなら十個しかない席が、今宵は十二個ある。そしてその席に座っているのは前のパーティーで貴族代表だったコヌルとその娘サナだ。
「あぁ、そのことなのだがね、コヌル。そなたの娘は体調不良ということなのだろうね?」
「え? えぇ、そうですが……」
くすりと笑ってコヌルに問うカトレル。それに対して戸惑ったようにコヌルは肯定する。
「それはおかしいですね。体調不良の貴族の娘が、私の部屋を連日訪れており、仕事もままならないのですが」
「え……クラネス様!?」
「貴様がその名を呼ぶな。腐る」
吐き捨てるように言うニーアリアン。
あの後クラネスは、ドアの外にいたらしいニーアリアンと遭遇した。彼女もサナを疎ましく──否、言ってしまえば邪魔だと思っていたらしかったので、クラネスは例の作戦の協力を頼むことにしたのだ。
「……サナ。あなたは少しやりすぎたわね」
そしてアーリゼア。彼女自身も自分でサナがクラネスに言い寄っていることに気づいていたらしい。
「サ、サナ!? お前は何をしたんだ!?」
「──ち、ちうえ……」
「……なーんて、ね。サナの名前も腐るわね」
「……え?」
「申し訳ございません、クラネス様。私、一つ隠し事をしてございました」
そう言うニーアリアンの目は、これまでに見たことがない清々しさを秘めている。
「……彼女は、ただ父の言う事を聞いていただけでございます」
「──どういう事だ?」
俯いたまま何も話さないサナと、顔を真っ赤にしているコヌル。まるで親子のようには見えない。
「まず事の始まりは、シレーグナ様の失踪。これを好機と見たコヌルは娘をクラネス様に嫁がせる事、そして自分の地位を上げる事を思いつきます」
「あぁ、そこまでは分かる」
「しかし彼女には──まぁ、様々な理由があり、義兄上に嫁ぎたいとは思えませんでした。理由は察していただけるかと存じます」
ですが彼女の願いは父の欲望と相反しました、そうニーアリアンは吐き捨てた。
「コヌルはサナをクラネスに嫁がせる為、彼女と義兄上の距離を縮めようとします、が──まぁ見ての通り、失敗したようですね。ルクレオ!」
フンと鼻で笑い、誰かの名前を読んだ彼女。するとその名前なのであろう男が物陰から歩き出した。
「……ありがとうございます、姫様」
「無粋なことは嫌いなのよ。それにサナだってやりたくてやったことではないでしょう」
「……さて、そういうことです、父上。罪状は十分かと考えますが、如何致しますか」
歌うように言ったアーリゼア。しかしニーアリアンが、またそれを遮る。
「いいえ、まだ終わってはございません」
罪状はまだある。そう聞いたコヌルの口は、まるで他人事かのようにあんぐりと開いていた。
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