22 / 122
五月
GWは引きこもっていたかった! その2
しおりを挟む
全力で噴水公園を飛び出した俺は、一目散に家へ逃げようとし、そこではたと考えた。家の前に会長の家があるやないかと(正しくはマンションだが)。
いやいや。こんなすぐに追いかけて来るはずが……。
「御竿さぁん!」
後ろから観手の声が聞こえたような気がしてちらりと振り返る。なぜかは知らんが、観手ではなく会長と太刀根が俺を追いかけてきていた。
「なんでお前らが!?」
止まろうとしていた足を叱咤し再びダッシュ。ちなみに家はもう通り過ぎた。
「はっはっはっ。御竿くん、いや護くんと呼ぼうか。見ていたんだろう?」
「は!? 会長、気づいてたのかよ!」
会長から名前呼びをされた気がするが、んなもん無視だ無視。捕まったら殺されるどころじゃねぇ、掘られる! ある意味命の危機にも等しい。
「護! 見てたって……、まさかさっきのあれをか!? 違うんだ、勘違いしないでくれ! 俺はこいつとはなんの関係もねぇ!」
なんだその、浮気がバレた時の彼氏の言い訳は! 俺はお前が誰と関係持とうが知ったこっちゃない!
角を曲がり、すれ違う人からは稀有な目で見られ。そうして俺は、少し広い通りへ出た。通行人もいるし、撒くなら今しかない!
更に足を動かそうとし、自分の息が切れていることに気づいた。足もフラフラだ。そりゃそうだ、俺は(前世でも)体力がなかったじゃないか。
「はっ、はぁっ……」
それでもなんとか引きずって、近くの自販機の影に隠れた時だ。
「護!」
「護くん!」
恐らくは通りに出てきた二人の声が聞こえた。
怖い。どんなお化け屋敷に入った時でも、ここまで恐怖を感じたことはなかった。息が自然と荒くなるのを、目の前を通り過ぎる人が見ている気がした。
「護!」
駄目だ駄目だ駄目だ、声が近くなっていく。口に手を当てて小さく震えていると、
「あらん? 御竿ちゃん?」
「ぼ、ぼぐぢせんせぇ……?」
微妙に声が震えたが、今はそんなことどうだっていい。てか、え? 牧地? いつものシャツではなく、白いワンピースに麦わら帽子、しかもばっちり化粧まで決めた先生は、そのへんのモブより明らかに綺麗だった。
「御竿ちゃん、追われてるの? こっち」
頭が追いつかない俺を置いといて、牧地は俺の手を引いてビルの中へ入っていく。閉まったドアの向こうから、太刀根と会長の、
「貴様をダシにしようと思ったが……。全く、使えない奴だ。こうしてやろう」
「ひっ、ぁ、あぁ……」
「いつか護くんもこうなる。楽しみだ」
「ま、護は、俺が、守る……! ぁぁ……」
「精々道化を演じているがいい」
の会話に思わず真顔になり、それから何も聞かなかったことにして、俺は牧地に連れられるままビルの奥へと入っていった。
なになに……、“どっきりばっさりサロン☆ 昨日の自分と、確かな自分へ”。サロン……? へ、へぇ……。
いやいや。こんなすぐに追いかけて来るはずが……。
「御竿さぁん!」
後ろから観手の声が聞こえたような気がしてちらりと振り返る。なぜかは知らんが、観手ではなく会長と太刀根が俺を追いかけてきていた。
「なんでお前らが!?」
止まろうとしていた足を叱咤し再びダッシュ。ちなみに家はもう通り過ぎた。
「はっはっはっ。御竿くん、いや護くんと呼ぼうか。見ていたんだろう?」
「は!? 会長、気づいてたのかよ!」
会長から名前呼びをされた気がするが、んなもん無視だ無視。捕まったら殺されるどころじゃねぇ、掘られる! ある意味命の危機にも等しい。
「護! 見てたって……、まさかさっきのあれをか!? 違うんだ、勘違いしないでくれ! 俺はこいつとはなんの関係もねぇ!」
なんだその、浮気がバレた時の彼氏の言い訳は! 俺はお前が誰と関係持とうが知ったこっちゃない!
角を曲がり、すれ違う人からは稀有な目で見られ。そうして俺は、少し広い通りへ出た。通行人もいるし、撒くなら今しかない!
更に足を動かそうとし、自分の息が切れていることに気づいた。足もフラフラだ。そりゃそうだ、俺は(前世でも)体力がなかったじゃないか。
「はっ、はぁっ……」
それでもなんとか引きずって、近くの自販機の影に隠れた時だ。
「護!」
「護くん!」
恐らくは通りに出てきた二人の声が聞こえた。
怖い。どんなお化け屋敷に入った時でも、ここまで恐怖を感じたことはなかった。息が自然と荒くなるのを、目の前を通り過ぎる人が見ている気がした。
「護!」
駄目だ駄目だ駄目だ、声が近くなっていく。口に手を当てて小さく震えていると、
「あらん? 御竿ちゃん?」
「ぼ、ぼぐぢせんせぇ……?」
微妙に声が震えたが、今はそんなことどうだっていい。てか、え? 牧地? いつものシャツではなく、白いワンピースに麦わら帽子、しかもばっちり化粧まで決めた先生は、そのへんのモブより明らかに綺麗だった。
「御竿ちゃん、追われてるの? こっち」
頭が追いつかない俺を置いといて、牧地は俺の手を引いてビルの中へ入っていく。閉まったドアの向こうから、太刀根と会長の、
「貴様をダシにしようと思ったが……。全く、使えない奴だ。こうしてやろう」
「ひっ、ぁ、あぁ……」
「いつか護くんもこうなる。楽しみだ」
「ま、護は、俺が、守る……! ぁぁ……」
「精々道化を演じているがいい」
の会話に思わず真顔になり、それから何も聞かなかったことにして、俺は牧地に連れられるままビルの奥へと入っていった。
なになに……、“どっきりばっさりサロン☆ 昨日の自分と、確かな自分へ”。サロン……? へ、へぇ……。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
60
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる