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六月
掴み取れ! 勝利をこの手に! その9
「護! 駄目だ、早く逃げるんだ! っあああ!」
「ふははははは! 護くんは貴様では守りきれんということが証明されたようだな!」
「うわあああ! 護! 護ー!」
違うチームからの猛攻を受ける太刀根と会長。ちなみに馬は太刀根で会長を肩車している。それを遠目に見ながら、俺は迫りくる猛攻をよけまくる馬、いや俺を肩車している猫汰を、すげぇなぁと感心しながら見ていた。
時は騎馬戦前まで遡る。
集合場所にて、俺は太刀根と猫汰と共に、会長の騎馬戦への熱い宣誓を聞いていた。周囲の生徒たちが何やら感銘を受けているが、人生最大の危機となるであろう戦いを前にして、俺は話の内容なぞひとつとして入ってこない。
「ということで、彼が我がチームの大将、御竿護くんだ!」
「へ? 何?」
いきなり指名され、一斉に男子生徒の熱い視線が俺に集まってくる。その狂気に塗れた視線は、会長への信仰からくるものか。それとも違う何かなのか。
「彼を守ることは我がチームの勝利、それはともすれば貴公らの勝利へと繋がる! 各々が重く受け止め、我らの明日を掴み取るのだ!」
「「「うおおおおお!」」」
空気が震えるほどの雄叫びを発し、三年生の先輩たちが力強く拳を掲げた。俺たち二年生もつられるように手を上げれば、一年生もノリノリで声を張り上げた。
「さて。護くん、よく来てくれた」
「来たも何も、集合場所ここっすから」
「護くんを大将にしたのは正解だった。彼らの闘志をここまで引き上げられるとは……。このオレも予想外だ」
「いや、全部会長が勝手に決めたんすよね」
人の話を聞こうともせず、会長は「オレの見込んだだけはある」と一人で納得している。ここまできたら腹を括るしかないのか……。
「さて、名誉あるオレの馬だが、太刀根攻。貴様を指名してやろう」
ずびし! と人差し指を突きつけられ、太刀根は一瞬目を丸くしたものの、すぐに「はあ!?」と声を荒げた。会長に大股で近寄ると、同じくらいの背丈である会長をきつく睨む。
「なんで俺が会長の馬になんなきゃいけねぇんだよ!」
「適材適所というやつだ。貴様は暴れ馬だからな、誰かがきっちり手綱を握っててやらねば」
「俺は護の馬だ! 俺の上に乗っていいのは護だけなんだよ!」
色々訂正したい。第一、俺の馬ってなんだよ。エロゲで見る三角馬を一瞬想像し、いやいや、あれに跨るのはヒロインの役目でしょと頭を振った。
てか男があれに跨っても玉が潰れて痛そう。いやいや、なんで跨る前提になってんだ。
「全く。口だけでなく動き方も躾ける必要があるな。さて護くん、栄えあるキミの馬は、猫汰巧巳くんだ。存分に走らせてあげたまえ」
「おい話を……」
「わかりました、会長。御竿くんのことは、僕にお任せください」
「流石は次期会長と噂されるだけあって、キミはそこの暴れ馬とは違うようだ。キミはキミの考えで動くといい」
「わかりました」
「だから話を……」
そう話に割り込もうとしていた太刀根に対し、会長が呆れたようにため息をついた。そしてなんの前触れもなく、自分の指を太刀根の口へと突っ込みやがった!
「んっ」
「はぁ……、馬がいつまでも人語を介すな。貴様は大人しく人参でも咥えて、言われた通りに走っていろ」
「んぁ、はふっ……」
怖い。
この異常な行動も。そして周囲から湧き上がる男子共の「会長ぉぉおおお!」と地響きを起こすほどの叫びも。
くちゅりと音を立てて指を引き抜かれ、太刀根は口元の涎をぐいと拭ってから「会長はいつも……」と潤んだ目で会長を睨んでいた。
「さ。行こうか、御竿くん」
「お、おう……」
そう屈んだ猫汰の首に跨るようにすれば、あとは戦い開始の合図を待つだけになった――
「ふははははは! 護くんは貴様では守りきれんということが証明されたようだな!」
「うわあああ! 護! 護ー!」
違うチームからの猛攻を受ける太刀根と会長。ちなみに馬は太刀根で会長を肩車している。それを遠目に見ながら、俺は迫りくる猛攻をよけまくる馬、いや俺を肩車している猫汰を、すげぇなぁと感心しながら見ていた。
時は騎馬戦前まで遡る。
集合場所にて、俺は太刀根と猫汰と共に、会長の騎馬戦への熱い宣誓を聞いていた。周囲の生徒たちが何やら感銘を受けているが、人生最大の危機となるであろう戦いを前にして、俺は話の内容なぞひとつとして入ってこない。
「ということで、彼が我がチームの大将、御竿護くんだ!」
「へ? 何?」
いきなり指名され、一斉に男子生徒の熱い視線が俺に集まってくる。その狂気に塗れた視線は、会長への信仰からくるものか。それとも違う何かなのか。
「彼を守ることは我がチームの勝利、それはともすれば貴公らの勝利へと繋がる! 各々が重く受け止め、我らの明日を掴み取るのだ!」
「「「うおおおおお!」」」
空気が震えるほどの雄叫びを発し、三年生の先輩たちが力強く拳を掲げた。俺たち二年生もつられるように手を上げれば、一年生もノリノリで声を張り上げた。
「さて。護くん、よく来てくれた」
「来たも何も、集合場所ここっすから」
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「いや、全部会長が勝手に決めたんすよね」
人の話を聞こうともせず、会長は「オレの見込んだだけはある」と一人で納得している。ここまできたら腹を括るしかないのか……。
「さて、名誉あるオレの馬だが、太刀根攻。貴様を指名してやろう」
ずびし! と人差し指を突きつけられ、太刀根は一瞬目を丸くしたものの、すぐに「はあ!?」と声を荒げた。会長に大股で近寄ると、同じくらいの背丈である会長をきつく睨む。
「なんで俺が会長の馬になんなきゃいけねぇんだよ!」
「適材適所というやつだ。貴様は暴れ馬だからな、誰かがきっちり手綱を握っててやらねば」
「俺は護の馬だ! 俺の上に乗っていいのは護だけなんだよ!」
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てか男があれに跨っても玉が潰れて痛そう。いやいや、なんで跨る前提になってんだ。
「全く。口だけでなく動き方も躾ける必要があるな。さて護くん、栄えあるキミの馬は、猫汰巧巳くんだ。存分に走らせてあげたまえ」
「おい話を……」
「わかりました、会長。御竿くんのことは、僕にお任せください」
「流石は次期会長と噂されるだけあって、キミはそこの暴れ馬とは違うようだ。キミはキミの考えで動くといい」
「わかりました」
「だから話を……」
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「んっ」
「はぁ……、馬がいつまでも人語を介すな。貴様は大人しく人参でも咥えて、言われた通りに走っていろ」
「んぁ、はふっ……」
怖い。
この異常な行動も。そして周囲から湧き上がる男子共の「会長ぉぉおおお!」と地響きを起こすほどの叫びも。
くちゅりと音を立てて指を引き抜かれ、太刀根は口元の涎をぐいと拭ってから「会長はいつも……」と潤んだ目で会長を睨んでいた。
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そう屈んだ猫汰の首に跨るようにすれば、あとは戦い開始の合図を待つだけになった――
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