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七月
夏だ! 海だ! 無人島だ!? その16
スクリーンに映し出された島は楕円形で、半分は砂浜が広がり、もう半分は森が広がっていた。その島の、砂浜に近い森のある一点が赤く点滅している。
「この赤いのって」
「もちろんここだ」
「うわお……」
さも当たり前だと会長は腕を組み、
「オレは言ったはずだが? “クルーズに案内しよう”と」
「え? じゃ、ここって無人島じゃないってこと、か?」
と更に首を傾げる俺を見て、会長は「そもそも」と話を続けていく。
「誰がここを無人島だと言ったのだ」
「いや、だって、高波が来て……。皆攫われて……」
「あぁ、あの波は我が屹立家が開発した波乗り用の波発生装置だ。どうだ、楽しかったろう?」
波乗り用の波発生装置……。いや、それよりも、と俺は必死で記憶を手繰り寄せていく。
そうだ。誰もここが“無人島だ”なんて言っていない。俺が勝手に、ここを無人島だと勘違いして、思い込んで、一人で慌てていただけだ。
「で、でも鏡華ちゃんも人気が無いって言ってただろ?」
鏡華ちゃんに同意を求めれば、鏡華ちゃんは「そりゃあ」と口回りをナプキンで拭った。
「船上には誰もいねぇんだから人気が無くて当り前だ」
「船、上……?」
まさか……。
急に襲いかかってきた高波、突如として現れた島、慌てる様子のないこいつら、極めつけは会長のこの態度。
「はっはっは、驚いたかね? この船はスローライフを体験出来る、変形型クルーズ船だ。今は、船体部分が海の中に潜っている状態になっている」
「……」
つまり、最初から仕組まれていたのだ。知らなかったのは俺だけか? いや、もう誰が知っていて誰が知らなかったとかどうでもいい。
深く項垂れた俺に、会長がいつもの高笑いをしてから、
「ひと夏の思い出には丁度良かったろう。明日には帰る予定だ。今日は余すことなく、残りのスローライフを堪能してくれたまえ!」
と前髪を掻き上げた。
「はぁ……」
まず会長はスローライフの意味を勉強してくれ。なんて言えるわけもなく、俺は酷い倦怠感と一緒に、椅子にずるずると座り込んだ。
そんな俺の気持ちなんて無視するように、爺さんが「クリームブリュレでございます」と美味そうなデザートを置いてくれた。もちろん有り難く頂いた。
各自に充てがわれた部屋にて、俺は二日間の疲れを癒やすように、ベッドにゴロゴロと転がっていた。つか人数分の部屋を作るとか、なんだかんだで会長は優しいかもしれん。
「あー……、ダルい……」
まだ日は高いが、どこも行く気はない。ちなみに他の奴らは海に行くやら、島内を観光するやら、各々出掛けたようだ。俺は全部断った、のだが。
コンコンコン。
「ん? 誰だ?」
「……」
返事がない。誰かいるのは確定なのに、なぜ返事をしないのか。
「おい」
「……」
怪しい奴ではないだろう。ここは屹立家のリゾート船の上なのだし。ならば誰だと思案する。
ギャルゲやエロゲで培った経験を思い出せ、俺。そもそもこの無人島 (ではないが) はイベントの一環だ。ならばイベントの最終日である今日は、誰かと何かしらあるはず。
恐らくは好感度が高い順に選択肢が出て、選んだ相手が扉の向こうにいるはず。もちろん選択肢なぞ見えやしないし、見えたとして男の名前しか並んでいないそれに、なんの意味があるのかと。
「……もしかして、爺さんか?」
なんで執爺の名前を出した俺! いやでも、じゃあ他の奴の名前を出せばよかったのかと言えば、そんなのはもちろんノーである。
「はい。御竿護様、少しお時間よろしいでしょうか」
「あ、あぁ、うん……。いい、ですよ」
何もよくねぇ! 何返事しちゃってんの俺!
そうして控えめに開かれた扉の先には、先ほどと変わらない服装の爺さんがにこやかに立っていた。つか、こんな分岐ってあり? 来たんだからあるんだろう、な……。
「この赤いのって」
「もちろんここだ」
「うわお……」
さも当たり前だと会長は腕を組み、
「オレは言ったはずだが? “クルーズに案内しよう”と」
「え? じゃ、ここって無人島じゃないってこと、か?」
と更に首を傾げる俺を見て、会長は「そもそも」と話を続けていく。
「誰がここを無人島だと言ったのだ」
「いや、だって、高波が来て……。皆攫われて……」
「あぁ、あの波は我が屹立家が開発した波乗り用の波発生装置だ。どうだ、楽しかったろう?」
波乗り用の波発生装置……。いや、それよりも、と俺は必死で記憶を手繰り寄せていく。
そうだ。誰もここが“無人島だ”なんて言っていない。俺が勝手に、ここを無人島だと勘違いして、思い込んで、一人で慌てていただけだ。
「で、でも鏡華ちゃんも人気が無いって言ってただろ?」
鏡華ちゃんに同意を求めれば、鏡華ちゃんは「そりゃあ」と口回りをナプキンで拭った。
「船上には誰もいねぇんだから人気が無くて当り前だ」
「船、上……?」
まさか……。
急に襲いかかってきた高波、突如として現れた島、慌てる様子のないこいつら、極めつけは会長のこの態度。
「はっはっは、驚いたかね? この船はスローライフを体験出来る、変形型クルーズ船だ。今は、船体部分が海の中に潜っている状態になっている」
「……」
つまり、最初から仕組まれていたのだ。知らなかったのは俺だけか? いや、もう誰が知っていて誰が知らなかったとかどうでもいい。
深く項垂れた俺に、会長がいつもの高笑いをしてから、
「ひと夏の思い出には丁度良かったろう。明日には帰る予定だ。今日は余すことなく、残りのスローライフを堪能してくれたまえ!」
と前髪を掻き上げた。
「はぁ……」
まず会長はスローライフの意味を勉強してくれ。なんて言えるわけもなく、俺は酷い倦怠感と一緒に、椅子にずるずると座り込んだ。
そんな俺の気持ちなんて無視するように、爺さんが「クリームブリュレでございます」と美味そうなデザートを置いてくれた。もちろん有り難く頂いた。
各自に充てがわれた部屋にて、俺は二日間の疲れを癒やすように、ベッドにゴロゴロと転がっていた。つか人数分の部屋を作るとか、なんだかんだで会長は優しいかもしれん。
「あー……、ダルい……」
まだ日は高いが、どこも行く気はない。ちなみに他の奴らは海に行くやら、島内を観光するやら、各々出掛けたようだ。俺は全部断った、のだが。
コンコンコン。
「ん? 誰だ?」
「……」
返事がない。誰かいるのは確定なのに、なぜ返事をしないのか。
「おい」
「……」
怪しい奴ではないだろう。ここは屹立家のリゾート船の上なのだし。ならば誰だと思案する。
ギャルゲやエロゲで培った経験を思い出せ、俺。そもそもこの無人島 (ではないが) はイベントの一環だ。ならばイベントの最終日である今日は、誰かと何かしらあるはず。
恐らくは好感度が高い順に選択肢が出て、選んだ相手が扉の向こうにいるはず。もちろん選択肢なぞ見えやしないし、見えたとして男の名前しか並んでいないそれに、なんの意味があるのかと。
「……もしかして、爺さんか?」
なんで執爺の名前を出した俺! いやでも、じゃあ他の奴の名前を出せばよかったのかと言えば、そんなのはもちろんノーである。
「はい。御竿護様、少しお時間よろしいでしょうか」
「あ、あぁ、うん……。いい、ですよ」
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