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八月
恐怖体験、コミックマーケット! その2
「お待たせしました! 助っ人を連れてきましたよ!」
手伝い、と称されて連れて来られたのは、隅でブースを開いているサークル(?)だった。俺より少し年上のお姉さんが、涼しげな水色のワンピースを着て、本を買いに来たであろう人たちに微笑んでいる。
そのお姉さんの淡黄色の目に観手、それから俺が映り、嬉しそうに細められた。美人だ。
「あ、ますよちゃん! じゃあ、その子が?」
「はい! 早速着替えさせてきますね!」
俺はお姉さんに話をする間もなく、ずるずるとブースの後ろに連れて行かれ、なぜだか学ランを渡された。
「はい、着替えてください。着替えたら前に出てきて、そのまま座っていてくれるだけでいいので」
「手伝いって、そんだけ? 列の整理とか、本の管理とかじゃなくて?」
「大事な本を御竿さんに触らせるわけないじゃないですか。さ、早くしてください」
なんだろう。絶対本には触るなオーラがすごい……。ま、ここで出すために一生懸命作ったものだろうし、素人の俺が触るのはマズいこともあるのだろう。
「わかった、わかったから。着替えたらすぐ表に行くから」
「お願いしますね、御竿さん」
観手は俺に、語尾にハートマークをつけたような声色でウインクし、それから「こんにちは~」と明るい挨拶と共に表に行ってしまった。
とりあえず学ランを手に取る。BL学園はブレザーだから、学ランを着るのは前世の中学生以来だ。久々の学ランに多少わくわくするが、袖を通し、ズボンを履いてから気づく。
「……サイズピッタリ過ぎない?」
そう。腕の長さも、背丈も、ズボンの裾も。全部が、俺の体型ピッタリなのだ。
「なんで? どうして?」
「御竿さん、まだですか~?」
頭を傾げる俺に、観手の急かす声が飛んできた。
「あ、あぁ! 今行く!」
俺は脱いだ服を、用意されていた籠に丸めるようにして入れる。それからすぐに表に出れば、あのお姉さんを筆頭に、黄色い歓声が湧き上がった。
「きゃあああ! すごい! すごい似合っているわ! それじゃここ、座っててね!」
用意された椅子に座る。本を手にするお客さんたち(主に女性)が、ちらちらと俺を見ては「ナマだ……」と小さく呟いていく。
なんだ、なんか嫌な予感がする。
「な、なぁ観手……」
「はい、なんですか?」
隣に座る観手を肘でつついて、そっと耳打ちをする。ちなみに俺の右にはあのお姉さん、左に観手がいる。
「これは、その、どういった本なんだ……?」
本は丁寧に装丁されていて、しかもそのカバーも手造りらしく、中身が見えないようになっている。唯一試し読みの数冊が見れるようだが、俺からは内容はもちろん、外身の“そ”の字すら見えない。
「これはですね、私が所属しているサークルの創作本ですよ。ちなみにお隣のかたはヨシさんといって、一緒に活動してくださっている同志です!」
「さっきは挨拶出来なくてごめんね? 不二ヨシです。よろしくね、御竿くん」
可愛らしいお姉さん、いやヨシさんは、そう言って柔らかく笑ってきた。えくぼが可愛いし、何よりいい匂いがする。大人の魅力たっぷりなそれに、俺はギクシャクしながら「は、はい」と返すのが精一杯だ。
そうしてだいぶお客さんを対応しきった頃だ。
「次のかた~!」
観手が次に並んでいたお客さんを誘導する。そして先頭に来たお客さんの顔を見て、俺の顔は酷く歪んだ。
「げ。なんで会長が……」
「護くん、二週間ぶりぐらいだな。今日は子女の手伝いか? 奇遇だな、オレはその本を買いに来たのだ」
「……」
聞いてもないのに、会長はつらつらと理由を述べると、試し読み用の本はそっちのけで、装丁してある本を迷うことなく手に取った。
「ちょ、ちょっと待ってください会長。なんで会長が、その、観手のサークルの本を?」
「ん? 見ていないのか。この素晴らしき真実はここにありを!」
「どういうこと!?」
俺は堪らず会長から本を奪い取る。当たり前だが、そんなことはマナー違反だから絶対にしちゃいけないからな。会長だから俺はやっただけだからな。
装丁を一応丁寧に外してから、俺はそっと表紙に視線を落とした。手が震える。呼吸も荒くなる。視界に入ってきた文字は、
『放課後アフターケア ~生徒会室でも張り裂けそう~』
「なななななな!?」
どう見ても俺としか思えない男子高校生(学ラン)が、どう見ても会長(学ラン)としか思えない男子高校生に、後ろから抱かれ顎に手をやられている表紙。
震える手でパラリとページを捲る。
『やめろよ……、やめろってば……! んぁっ』
『そう言うが、ここはオレを待っているようだな』
『んんん、ち、ちがっ』
「ぎゃあああ! 待ってたまるかクソボケぇ!」
言葉にするのもおぞましい行為を、この絵の二人は嬉しそうにやっている。そんな本を俺は容赦なく床に叩きつけた。
もちろん、そんなこと普通はやっちゃいけないからな?
手伝い、と称されて連れて来られたのは、隅でブースを開いているサークル(?)だった。俺より少し年上のお姉さんが、涼しげな水色のワンピースを着て、本を買いに来たであろう人たちに微笑んでいる。
そのお姉さんの淡黄色の目に観手、それから俺が映り、嬉しそうに細められた。美人だ。
「あ、ますよちゃん! じゃあ、その子が?」
「はい! 早速着替えさせてきますね!」
俺はお姉さんに話をする間もなく、ずるずるとブースの後ろに連れて行かれ、なぜだか学ランを渡された。
「はい、着替えてください。着替えたら前に出てきて、そのまま座っていてくれるだけでいいので」
「手伝いって、そんだけ? 列の整理とか、本の管理とかじゃなくて?」
「大事な本を御竿さんに触らせるわけないじゃないですか。さ、早くしてください」
なんだろう。絶対本には触るなオーラがすごい……。ま、ここで出すために一生懸命作ったものだろうし、素人の俺が触るのはマズいこともあるのだろう。
「わかった、わかったから。着替えたらすぐ表に行くから」
「お願いしますね、御竿さん」
観手は俺に、語尾にハートマークをつけたような声色でウインクし、それから「こんにちは~」と明るい挨拶と共に表に行ってしまった。
とりあえず学ランを手に取る。BL学園はブレザーだから、学ランを着るのは前世の中学生以来だ。久々の学ランに多少わくわくするが、袖を通し、ズボンを履いてから気づく。
「……サイズピッタリ過ぎない?」
そう。腕の長さも、背丈も、ズボンの裾も。全部が、俺の体型ピッタリなのだ。
「なんで? どうして?」
「御竿さん、まだですか~?」
頭を傾げる俺に、観手の急かす声が飛んできた。
「あ、あぁ! 今行く!」
俺は脱いだ服を、用意されていた籠に丸めるようにして入れる。それからすぐに表に出れば、あのお姉さんを筆頭に、黄色い歓声が湧き上がった。
「きゃあああ! すごい! すごい似合っているわ! それじゃここ、座っててね!」
用意された椅子に座る。本を手にするお客さんたち(主に女性)が、ちらちらと俺を見ては「ナマだ……」と小さく呟いていく。
なんだ、なんか嫌な予感がする。
「な、なぁ観手……」
「はい、なんですか?」
隣に座る観手を肘でつついて、そっと耳打ちをする。ちなみに俺の右にはあのお姉さん、左に観手がいる。
「これは、その、どういった本なんだ……?」
本は丁寧に装丁されていて、しかもそのカバーも手造りらしく、中身が見えないようになっている。唯一試し読みの数冊が見れるようだが、俺からは内容はもちろん、外身の“そ”の字すら見えない。
「これはですね、私が所属しているサークルの創作本ですよ。ちなみにお隣のかたはヨシさんといって、一緒に活動してくださっている同志です!」
「さっきは挨拶出来なくてごめんね? 不二ヨシです。よろしくね、御竿くん」
可愛らしいお姉さん、いやヨシさんは、そう言って柔らかく笑ってきた。えくぼが可愛いし、何よりいい匂いがする。大人の魅力たっぷりなそれに、俺はギクシャクしながら「は、はい」と返すのが精一杯だ。
そうしてだいぶお客さんを対応しきった頃だ。
「次のかた~!」
観手が次に並んでいたお客さんを誘導する。そして先頭に来たお客さんの顔を見て、俺の顔は酷く歪んだ。
「げ。なんで会長が……」
「護くん、二週間ぶりぐらいだな。今日は子女の手伝いか? 奇遇だな、オレはその本を買いに来たのだ」
「……」
聞いてもないのに、会長はつらつらと理由を述べると、試し読み用の本はそっちのけで、装丁してある本を迷うことなく手に取った。
「ちょ、ちょっと待ってください会長。なんで会長が、その、観手のサークルの本を?」
「ん? 見ていないのか。この素晴らしき真実はここにありを!」
「どういうこと!?」
俺は堪らず会長から本を奪い取る。当たり前だが、そんなことはマナー違反だから絶対にしちゃいけないからな。会長だから俺はやっただけだからな。
装丁を一応丁寧に外してから、俺はそっと表紙に視線を落とした。手が震える。呼吸も荒くなる。視界に入ってきた文字は、
『放課後アフターケア ~生徒会室でも張り裂けそう~』
「なななななな!?」
どう見ても俺としか思えない男子高校生(学ラン)が、どう見ても会長(学ラン)としか思えない男子高校生に、後ろから抱かれ顎に手をやられている表紙。
震える手でパラリとページを捲る。
『やめろよ……、やめろってば……! んぁっ』
『そう言うが、ここはオレを待っているようだな』
『んんん、ち、ちがっ』
「ぎゃあああ! 待ってたまるかクソボケぇ!」
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もちろん、そんなこと普通はやっちゃいけないからな?
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