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九月
大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その7
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それから毎日、放課後は生徒会の仕事に追われた。俺の仕事は主に、出店するクラスや部活のブースに行って進捗を聞いたり、経費がどうとか物資はあるかとか、そういったことを確認して報告することだ。
「お、御竿」
「鏡華ちゃん」
先生たちから資料を受け取り、報告書を届けるために生徒会室へ向かおうとしていたところを、保健室から出てきた鏡華ちゃんに呼び止められた。
「今から生徒会室に行くんだよな?」
「まぁ……。行きたくないんすけど」
スンとした顔と低めのトーンで言えば、鏡華ちゃんは「そーかそーか」と鼻を鳴らして笑った。
「なら壱を呼んできてくれねぇか? 俺様が呼んでるって言えば伝わるはずだ」
「校内放送使えばいいじゃないすか」
「あー、今ちっとばかし手が離せなくてな……」
何かわけがあるらしい。濁す鏡華ちゃんを訝しむように見れば、鏡華ちゃんは片手で保健室の扉を開かないように押さえているようだった。
どうしたのかと聞こうとし、ガタン! と激しく扉を叩く音が聞こえて、俺は反射で扉に目をやる。
「グルルル……」
「……鏡華ちゃん、校内は動物禁止だよな」
もちろん、今しがた聞こえた唸り声がただの動物のものとは思ってない。その証拠に、保健室の扉をガンガンと容赦なく叩く音が聞こえるし、鏡華ちゃんはそれに負けまいと必死で扉を押さえたままだ。
「あ、あー、そうだったなー。で、だ、御竿。壱を呼んできてくれねぇか?」
「おっけー……」
後ずさりするようにゆっくり距離を取っていた、のが間違いだった。
ガコン!
「っと!」
「きょ、鏡華ちゃん!?」
扉が倒れ、鏡華ちゃんが下敷きになる。壊された扉から出てきたのは、血走った目で涎を垂らすセンパイだった。
「グル、グルルル」
その血走った目に俺が写った。
「へ?」
センパイの喉がごくりと鳴る。
「み、御竿! すまねぇ、そのまま生徒会室まで逃げ切ってくれ! 絶対捕まるなよ!」
「に、逃げるって……」
鏡華ちゃんが下敷きになっているにも関わらず、センパイは壊れた扉ごと鏡華ちゃんを踏みつけ、にやりと笑った。
やばい。やばいやばいやばいやばいやばい!
「くっそ……!」
固まった足をなんとか叱咤して保健室に背を向ける。
「御竿、なんとか、なんとか逃げ切ってくれよ……! っあ、あああああ!」
走り出した俺の背後から、鏡華ちゃんの悲鳴が聞こえた。ごめん、鏡華ちゃん。俺、自分の身が一番大事なんだわ。
「グルルルル!」
「って、ちょっと来るの早すぎ! 鏡華ちゃん時間稼ぎ足りてないよ!?」
鏡華ちゃんがどうなったのかは知らんが、つか振り向く暇すらないが、とりあえず背後からアレが迫ってきていることはわかった。ただただ恐怖である。
「はあっ、はっ。俺、ゲームですらホラーは苦手なんだが!? せめて武器くれよ、武器!」
もちろんこれはBLゲー。某ゾンビゲーで出てくるマグナムや、FPSで使うなんとか47やMなんちゃらとかいう銃があるはずない。
「なんでっ、よりによって、四階なんだっつの!」
階段を駆け上がり、二階と三階の踊り場まで来たところで、降りてきた太刀根とばったり会う。
「あ、護」
「た、太刀根、じゃない、攻。時間稼ぎを頼む!」
「へ? 時間稼ぎって、なんの?」
「いいから頼んだ!」
いまいち事情が飲み込めず、太刀根は首を傾げたままだ。そんな太刀根を俺は容赦なく階下へ突き飛ばす。普通ならやっちゃいけないが、太刀根だし、下からセンパイも来てたし、仕方がない。
「うわあああ!」
「グル、グルルル!」
「うわ、あっ、んあっ、どこ舐めてっ、ああぁっ」
尊い犠牲を払ったが、仕方がない。俺は息を切らしながら、階段を二段飛ばしで四階まで駆け上がった。
「お、御竿」
「鏡華ちゃん」
先生たちから資料を受け取り、報告書を届けるために生徒会室へ向かおうとしていたところを、保健室から出てきた鏡華ちゃんに呼び止められた。
「今から生徒会室に行くんだよな?」
「まぁ……。行きたくないんすけど」
スンとした顔と低めのトーンで言えば、鏡華ちゃんは「そーかそーか」と鼻を鳴らして笑った。
「なら壱を呼んできてくれねぇか? 俺様が呼んでるって言えば伝わるはずだ」
「校内放送使えばいいじゃないすか」
「あー、今ちっとばかし手が離せなくてな……」
何かわけがあるらしい。濁す鏡華ちゃんを訝しむように見れば、鏡華ちゃんは片手で保健室の扉を開かないように押さえているようだった。
どうしたのかと聞こうとし、ガタン! と激しく扉を叩く音が聞こえて、俺は反射で扉に目をやる。
「グルルル……」
「……鏡華ちゃん、校内は動物禁止だよな」
もちろん、今しがた聞こえた唸り声がただの動物のものとは思ってない。その証拠に、保健室の扉をガンガンと容赦なく叩く音が聞こえるし、鏡華ちゃんはそれに負けまいと必死で扉を押さえたままだ。
「あ、あー、そうだったなー。で、だ、御竿。壱を呼んできてくれねぇか?」
「おっけー……」
後ずさりするようにゆっくり距離を取っていた、のが間違いだった。
ガコン!
「っと!」
「きょ、鏡華ちゃん!?」
扉が倒れ、鏡華ちゃんが下敷きになる。壊された扉から出てきたのは、血走った目で涎を垂らすセンパイだった。
「グル、グルルル」
その血走った目に俺が写った。
「へ?」
センパイの喉がごくりと鳴る。
「み、御竿! すまねぇ、そのまま生徒会室まで逃げ切ってくれ! 絶対捕まるなよ!」
「に、逃げるって……」
鏡華ちゃんが下敷きになっているにも関わらず、センパイは壊れた扉ごと鏡華ちゃんを踏みつけ、にやりと笑った。
やばい。やばいやばいやばいやばいやばい!
「くっそ……!」
固まった足をなんとか叱咤して保健室に背を向ける。
「御竿、なんとか、なんとか逃げ切ってくれよ……! っあ、あああああ!」
走り出した俺の背後から、鏡華ちゃんの悲鳴が聞こえた。ごめん、鏡華ちゃん。俺、自分の身が一番大事なんだわ。
「グルルルル!」
「って、ちょっと来るの早すぎ! 鏡華ちゃん時間稼ぎ足りてないよ!?」
鏡華ちゃんがどうなったのかは知らんが、つか振り向く暇すらないが、とりあえず背後からアレが迫ってきていることはわかった。ただただ恐怖である。
「はあっ、はっ。俺、ゲームですらホラーは苦手なんだが!? せめて武器くれよ、武器!」
もちろんこれはBLゲー。某ゾンビゲーで出てくるマグナムや、FPSで使うなんとか47やMなんちゃらとかいう銃があるはずない。
「なんでっ、よりによって、四階なんだっつの!」
階段を駆け上がり、二階と三階の踊り場まで来たところで、降りてきた太刀根とばったり会う。
「あ、護」
「た、太刀根、じゃない、攻。時間稼ぎを頼む!」
「へ? 時間稼ぎって、なんの?」
「いいから頼んだ!」
いまいち事情が飲み込めず、太刀根は首を傾げたままだ。そんな太刀根を俺は容赦なく階下へ突き飛ばす。普通ならやっちゃいけないが、太刀根だし、下からセンパイも来てたし、仕方がない。
「うわあああ!」
「グル、グルルル!」
「うわ、あっ、んあっ、どこ舐めてっ、ああぁっ」
尊い犠牲を払ったが、仕方がない。俺は息を切らしながら、階段を二段飛ばしで四階まで駆け上がった。
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