【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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九月

大改造! 屹立パワーで大☆学祭! その8

 生徒会室は四階だ。三階と四階を繋ぐ踊り場まで登りきり、もうすぐだと安心しきった時。階段の吹き抜けを垂直に何かが上がってきた。

「センパイ!?」

 待て待て待て。背中に羽でも生えてんの? どうやったら下の踊り場からここに来れるんだよ!

「グル、ルルル」
「あと少しなのに……」

 センパイは手にした太刀根のズボンをぽいと捨てると、その血走った目を俺へと向けてきた。ギラリと光る目を見て、背筋を冷たい汗が流れる。
 だが流石は主人公。窮地に陥った際の幸運はピカイチらしい。

「あ、護先輩!」

 四階から下りてきた下獄が、人懐っこそうな笑みを向けてきた。よりにもよって小のほうかよ! せめて大のほうがよかったんだが!

「下獄! 駄目だ、来るな!」
「あれ? そこにいるのは……、屹立先輩、ですか?」

 俺の言葉に下獄は首を傾げながら更に近づいてくる。下獄からはセンパイの背中しか見えておらず、この大変な状況などこれっぽっちも気づいていないようだ。

「下獄!」
「グルルル」
「ぇ……、屹立先輩? え?」

 センパイが振り返る。血走った目と滴る涎を見て、下獄の顔から表情が消えた。

「グルルルル!」
「いやぁ!」

 いきなり飛びかかってきたセンパイを振り払えず、下獄はそのまま倒れ込んだ。流石に後輩くらいは助けようと、

「下獄!」

と近寄ろうとするが、

「来ちゃ駄目です!」
「!?」

 下獄にしては珍しい大声に、俺は動きが止まってしまう。

「来ちゃ駄目、です」
「なら会長を呼びに……!」
「尚更駄目です! 会長は今、生徒会室に、いま、せんっ。ウチが抑えている間に、会長を……あぁっ」

 センパイが下獄のブレザーを容赦なく引き千切った。足元に飛んできたボタンが、靴に当たってどこかに転がっていく。

「下獄……」
「大丈夫、です、護先輩! ウチ、こういう時のために、持ってるものが、ありますから……!」

 そう言うと下獄は、片手でセンパイの顔を掴んで押さえつけながら、ズボンのポケットからチューブの容器を取り出した。あれって……。

「ボンド?」

 馴染みの黄色い容器。間違いない、アレは木工用ボンドだ。
 下獄はそれを躊躇いもせず自分の手のひらにつけると、センパイのズボンをがっしりと掴む。ベルトと手が上手いことくっついたのか、センパイは下獄を振り解こうとも思うように出来ないでいる。

「さぁ、行ってください!」
「……」
「さぁ! そして会長を見つけてください!」
「お、おう」

 言いたいことは色々ある。ある、が、下獄が必死に足止めをしてくれているのだ。なら野暮なことを言うのはやめよう。
 俺は「頼んだ!」と下獄に叫ぶようにして言うと、来た道を戻るために階段を降りだした。背後で「護先輩、信じてます……」というどっかのRPGめいた台詞が聞こえた気がした。
 が。

「だからなんで足止めにもなってないんだっつの!」

 あろうことか、センパイは下獄の手から離れないズボンを諦めたのか、力ずくで脱ぎ捨てて俺を追いかけてきたのだ。大事な部分にはひょっとこのお面がついている。これが比喩なのかどうかは、俺の口からは言いたくない。

「ガルルガルガー!」
「くっそ……っと、うわ!」

 足を滑らせ階段から落ち――

「あらん? 御竿ちゃんじゃない」
「牧地!? 先生」

 俺をがっしりと抱きかかえてくれたのは、意外にもガチムチ体型の牧地だった。いや、オネエキャラなのだし、意外、ではないのかもしれない。

「上から降ってくるなんて、天使かと思っちゃったわ♪ このままお持ち帰りかしら?」
「いやいやいや。いやでも、それならちょうどよかった! お持ち帰りしてほしい奴がいるんすよ!」

 身じろぎして離すよう促してから、俺は階段の上を示す。見れば、センパイが歯の隙間から「シュー、シュー」と息を漏らしながらゆっくり降りてくるところだった。

「あぁ、終ちゃんはね、お持ち帰り出来ないのよぉ♪」
「なんで」
「だって先生と生徒ですもの♪」
「俺は!? 俺はいいのかよ!?」

 牧地の言うことは至極まともだ。教育委員会も納得の理由だ、保護者も安心感パないだろう。いやでも俺はどうなのよ?

「だって、ねぇ? 御竿ちゃんは、特別授業があるから……」
「したくないわ! 成績だってまずまずだろうが!」
「あら、残念。なら助けてあげない♪」
「は!?」

 言うやいなや、牧地は俺をセンパイに差し出すように背中をドンと押しやがった。足がもつれ、よろよろと四つん這いの格好になってしまう。

「グルル」
「は?」

 頭に冷たいものを感じ顔を上げれば。
 そこには、獲物を前に嬉しそうに笑うセンパイの姿があった。
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