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十月
そこはそれとない都会の出来事 その6
修学旅行一日目。その最後を、俺はゆったりと湯船に浸かりながら過ごしていた。
「疲れた。やけに疲れた……」
ホテルの最上階にある露天風呂に入りながら、俺は淵の石に背を預ける。それなりに都会だというのに、やけに星が綺麗に見えた。
もちろん他の男子生徒もいる。太刀根と猫汰は少し遅れて、今は洗い場で身体を洗っているようだ。
「で。なんでメイドさんがいるんすか」
そう言って俺は、露天風呂には少し不釣り合いな中庭に目をやった。
俺の腰くらいまである草木の中に、長い裾の服装にお胸がふっくらとしたメイドが隠れている。しかし微妙に頭が出ていて隠れきれていない。
なんでバレないの。
「背中を洗ってみたが、不要と言われ経過観察中」
「相変わらず何言ってるのかわかんねぇ。つか隠れてるつもりなら受け答えすんな」
最初は庇ったほうがいいかとも思ったが、この調子ならそれも必要ないだろう。正直、見られて恥ずかしくないわけではないが、湯はにごり湯だし、中まで見えないようになっている。
「それでメイドさん、名前は?」
「イドと申します」
「わかりやすっ」
最初の子がメイ、この子がイド、ならあと一人はドメとかその辺りか? なんとも捻りのない名前である。
「まーもる! 待たせたな!」
「おい太刀、攻。走ると――」
「おわっ」
先に洗い終わったらしい太刀根が急ぎ足でやってきた。しかし太刀根は足を滑らせ、あろうことかそのまま俺にダイブしてきやがったのだ。
「ちょ、太刀根!?」
「あわわわ、ま、護!?」
咄嗟のことで反応出来ず、俺に跨る形で太刀根が上に乗ることに。至近距離で太刀根と見つめ合い、その熱っぽい目が俺を真正面から捉えた。
「ま、護……」
「どけ」
「ごめん、庇ってくれたんだな」
「そんなんじゃねぇ、どけ」
これが可愛い女子ならそのまま、なんて展開もあるのかもしれんが、間違ってはいけない。相手は太刀根だ。俺の人生に関わってくる。
しかし、一向にどこうとしない太刀根に痺れを切らした俺は、太刀根の肩を掴んで引き離そうとする。しかし太刀根は「あっ」と眉をひそめて、
「あ、当たってるぞ、護」
「当たってねぇ。掴んでんだ。現実を見ろ」
「そんなに激しく揺らすなって……」
「引き剥がそうとしてんだよ、わかれよ」
と肩を掴んで剥がそうとする俺と、これまた必死に、俺にしがみつこうとする太刀根。湯がバシャバシャと揺れ、これではまるでエロゲ展開ではないか。
「あぁもうっ、猫汰、あぁ違う巧巳! ちょっと巧巳、来てくれ!」
声の限り叫ぶも、いつもは恐いくらいすぐ来るはずの猫汰が一向に来る気配がない。
「巧巳? 巧巳ー!?」
そんな俺が可笑しかったのか、太刀根が「へへっ」と唇を舌で軽く舐めた。
「巧巳さ。昔から風呂は苦手だったんだ。ほら、あそこ」
「え……? た、巧巳ー!」
太刀根に言われて洗い場に目をやれば、そこには伸びて床に倒れた猫汰が。他の男子に担がれて風呂場をあとにしている。
「あああああ! 嘘だろ!? 巧巳、巧巳!」
「護、これで何も心配しなくていいぞ……?」
「うるせぇええ!」
俺はそう叫んで、それから息を深く吸い込んだ。不思議がる太刀根を他所に、そのまま俺は湯の中に潜る。支えを失った太刀根もまた湯の中に倒れたようだが、そんなの気にする余裕なんてどこにもない。
「イドちゃん! 大事なご主人なら、ちゃんと躾とけ!」
風呂から慌てて上がり、草木に向かって指を差す。微かに揺れた草木を確認して、俺は逃げるようにして脱衣所まで駆け込んだ。
「疲れた。やけに疲れた……」
ホテルの最上階にある露天風呂に入りながら、俺は淵の石に背を預ける。それなりに都会だというのに、やけに星が綺麗に見えた。
もちろん他の男子生徒もいる。太刀根と猫汰は少し遅れて、今は洗い場で身体を洗っているようだ。
「で。なんでメイドさんがいるんすか」
そう言って俺は、露天風呂には少し不釣り合いな中庭に目をやった。
俺の腰くらいまである草木の中に、長い裾の服装にお胸がふっくらとしたメイドが隠れている。しかし微妙に頭が出ていて隠れきれていない。
なんでバレないの。
「背中を洗ってみたが、不要と言われ経過観察中」
「相変わらず何言ってるのかわかんねぇ。つか隠れてるつもりなら受け答えすんな」
最初は庇ったほうがいいかとも思ったが、この調子ならそれも必要ないだろう。正直、見られて恥ずかしくないわけではないが、湯はにごり湯だし、中まで見えないようになっている。
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「おわっ」
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「ちょ、太刀根!?」
「あわわわ、ま、護!?」
咄嗟のことで反応出来ず、俺に跨る形で太刀根が上に乗ることに。至近距離で太刀根と見つめ合い、その熱っぽい目が俺を真正面から捉えた。
「ま、護……」
「どけ」
「ごめん、庇ってくれたんだな」
「そんなんじゃねぇ、どけ」
これが可愛い女子ならそのまま、なんて展開もあるのかもしれんが、間違ってはいけない。相手は太刀根だ。俺の人生に関わってくる。
しかし、一向にどこうとしない太刀根に痺れを切らした俺は、太刀根の肩を掴んで引き離そうとする。しかし太刀根は「あっ」と眉をひそめて、
「あ、当たってるぞ、護」
「当たってねぇ。掴んでんだ。現実を見ろ」
「そんなに激しく揺らすなって……」
「引き剥がそうとしてんだよ、わかれよ」
と肩を掴んで剥がそうとする俺と、これまた必死に、俺にしがみつこうとする太刀根。湯がバシャバシャと揺れ、これではまるでエロゲ展開ではないか。
「あぁもうっ、猫汰、あぁ違う巧巳! ちょっと巧巳、来てくれ!」
声の限り叫ぶも、いつもは恐いくらいすぐ来るはずの猫汰が一向に来る気配がない。
「巧巳? 巧巳ー!?」
そんな俺が可笑しかったのか、太刀根が「へへっ」と唇を舌で軽く舐めた。
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「え……? た、巧巳ー!」
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「あああああ! 嘘だろ!? 巧巳、巧巳!」
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