100 / 122
十月
そこはそれとない都会の出来事 その7
しおりを挟む
「あ! おはようございます、御竿さん!」
朝。集合場所になっているロビーへ着くと、やけに上機嫌な観手が甲高い声で俺を呼んできた。流石にホテルの部屋までは別だったものの、このテンションを見るに、昨日何があったのかを把握してそうな雰囲気である。
「あれれ? やけにお疲れのようですが、ゆっくり休めなかったんですか? あ、もしかして……」
「残念だが、お前が想像するような事態にはなっていないからな」
「まぁ、知ってますけどね~。太刀根さんももうちょっとだったのに。本当に惜しいです~」
「知ってるならわざわざ聞くな、確認するな」
そう言ってから、俺はポケットからスマフォを取り出した。時間までまだある。部屋に残してきた(放置したともいう)二人を待つ間、暇潰しでもしているか。
昨日の騒動で、猫汰は俺より先にベッドに丸くなり、太刀根に関しては、なぜか気絶した状態でイドちゃんによって運ばれてきた。
「にしても、太刀根っていいとこのお坊っちゃんだったんだな」
いつも遊ぶアプリを開き、本日のログインボーナスを受け取る。これだけでも受け取っておかねば。
「最初にお渡しした資料に書いてあったはずなんですけど。ま、いいです。あ、ほら御竿さん、ちょうどいいところに」
「ん?」
観手が俺の肩を掴みガクガクと揺すってきた。軽く舌打ちをしてやったというのに、構わず揺すり続ける観手に根負けし、示したほうを見れば。
「テレビ?」
ホテルのロビーによくあるデカいテレビ。ニュースのお天気お姉さんが「ではCMの後で」と爽やかに笑って手を振っているところだ。
「お姉さんがどうした」
「CM見てください。説明するより断然早いかと」
「はぁ……」
面倒くさいと思いつつ、やることも特にないのでそのままテレビを見続ける。朝のテレビにありがちな、水道やら家やらのCMの後、どっかの会社のCMが流れ出した。
『確かな技術、築き上げてきた伝統。それを完成させるのは、貴方です』
職人らしきおっさんが、タオルを巻いて何かを作っている。その後に、受付らしきお姉さんがにっこりと微笑んだ。
『ロウソクからハイヒールまで。貴方を見守る、太刀根グループです』
「……で?」
「はい?」
再びニュースが流れ出したタイミングで、俺は観手に視線を移した。首からギギギと変な効果音が出た気がした。
「何を作ってるんだ、太刀根んとこは」
「今言ってたじゃないですか~。ロウソクからハイヒールまで、つまるところなんでもですよ~」
「ほう、なんでも、ね……」
朝に流していいCMだったのか。いやいや、俺が変なことを考えているだけだ。そんなものを扱う会社が、こんな堂々と宣伝するわけないだろう。
俺は話題を変えようと、スマフォを仕舞って辺りを見回した。他の生徒もだいぶ集まってきたが、二人はまだ来ない。また喧嘩でもしてるのか?
「今日はどこ行くんだっけ」
「忘れちゃったんですか? 今日はあそこです、“蒼葉城址”」
「あぁ、そう……」
山の上にある観光地を思い浮かべる。正直何かあるようなとこではないが、なかなか行く場所でもなし。それなりに楽しみ、かもしれない。
そうして待っていると、牧地に首根っこを掴まれた太刀根と猫汰がやって来た。やはり起きて早々問題を起こしていたらしく、牧地からは「御竿ちゃんにも責任があるから♪」と口調とは似つかない表情で念を押された。
朝。集合場所になっているロビーへ着くと、やけに上機嫌な観手が甲高い声で俺を呼んできた。流石にホテルの部屋までは別だったものの、このテンションを見るに、昨日何があったのかを把握してそうな雰囲気である。
「あれれ? やけにお疲れのようですが、ゆっくり休めなかったんですか? あ、もしかして……」
「残念だが、お前が想像するような事態にはなっていないからな」
「まぁ、知ってますけどね~。太刀根さんももうちょっとだったのに。本当に惜しいです~」
「知ってるならわざわざ聞くな、確認するな」
そう言ってから、俺はポケットからスマフォを取り出した。時間までまだある。部屋に残してきた(放置したともいう)二人を待つ間、暇潰しでもしているか。
昨日の騒動で、猫汰は俺より先にベッドに丸くなり、太刀根に関しては、なぜか気絶した状態でイドちゃんによって運ばれてきた。
「にしても、太刀根っていいとこのお坊っちゃんだったんだな」
いつも遊ぶアプリを開き、本日のログインボーナスを受け取る。これだけでも受け取っておかねば。
「最初にお渡しした資料に書いてあったはずなんですけど。ま、いいです。あ、ほら御竿さん、ちょうどいいところに」
「ん?」
観手が俺の肩を掴みガクガクと揺すってきた。軽く舌打ちをしてやったというのに、構わず揺すり続ける観手に根負けし、示したほうを見れば。
「テレビ?」
ホテルのロビーによくあるデカいテレビ。ニュースのお天気お姉さんが「ではCMの後で」と爽やかに笑って手を振っているところだ。
「お姉さんがどうした」
「CM見てください。説明するより断然早いかと」
「はぁ……」
面倒くさいと思いつつ、やることも特にないのでそのままテレビを見続ける。朝のテレビにありがちな、水道やら家やらのCMの後、どっかの会社のCMが流れ出した。
『確かな技術、築き上げてきた伝統。それを完成させるのは、貴方です』
職人らしきおっさんが、タオルを巻いて何かを作っている。その後に、受付らしきお姉さんがにっこりと微笑んだ。
『ロウソクからハイヒールまで。貴方を見守る、太刀根グループです』
「……で?」
「はい?」
再びニュースが流れ出したタイミングで、俺は観手に視線を移した。首からギギギと変な効果音が出た気がした。
「何を作ってるんだ、太刀根んとこは」
「今言ってたじゃないですか~。ロウソクからハイヒールまで、つまるところなんでもですよ~」
「ほう、なんでも、ね……」
朝に流していいCMだったのか。いやいや、俺が変なことを考えているだけだ。そんなものを扱う会社が、こんな堂々と宣伝するわけないだろう。
俺は話題を変えようと、スマフォを仕舞って辺りを見回した。他の生徒もだいぶ集まってきたが、二人はまだ来ない。また喧嘩でもしてるのか?
「今日はどこ行くんだっけ」
「忘れちゃったんですか? 今日はあそこです、“蒼葉城址”」
「あぁ、そう……」
山の上にある観光地を思い浮かべる。正直何かあるようなとこではないが、なかなか行く場所でもなし。それなりに楽しみ、かもしれない。
そうして待っていると、牧地に首根っこを掴まれた太刀根と猫汰がやって来た。やはり起きて早々問題を起こしていたらしく、牧地からは「御竿ちゃんにも責任があるから♪」と口調とは似つかない表情で念を押された。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
60
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる