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十月
そこはそれとない都会の出来事 その8
青葉、いや“蒼葉城址”に着いた俺たちは、早速名物の武将隊に囲まれていた。武将隊というのは、簡単に言えば案内役というか説明役の人たちだ。皆甲冑を着込んでいる。本物かどうかはわからん。
「お主らはどこから参ったでござるか?」
背に“飛車”と書いた陣羽織を着た武将が、腕組みをし豪快に笑いながら聞いてきた。兜にはケムシを模した飾りがついている。忠実に再現していないようで再現しているのが鼻につく。
「俺らはBL学園からだぜ」
「いや都市名言おうや」
ドヤ顔で言い切った太刀根。それに小声でツッコむも、太刀根は鼻を自慢気に鳴らしただけだ。
「ほう、それはそれは。遠くから御足労頂き誠に感謝致すでござるよ」
「お前もそれで通じるんかい」
エセ侍弁、とでもいうのか。いや実際、侍や武将がどんな風に話していたのかは知らんが、この武将は「感謝、感謝でござるよ」と最初と変わらず豪快に笑った。
「それはそれとしてでござるな。そちらの水色髪の童よ、黒脛巾組という名に覚えはないか?」
水色の童は、今いる中では猫汰しかいない。つか、猫汰以外に水色髪を見たことがない。
猫汰は心底面倒くさそうに、下から武将を睨みつけるように見上げると、
「関係ないよ」
とだけ言って、これ以上は話したくないのか、そっぽを向いてしまった。俺はといえば、聞いたことのない単語に頭を捻り、不本意ではあるが隣の太刀根に耳打ちをする。
「なぁ、くろはば……って何」
「黒脛巾組だな。昔、東北にいたって噂の忍者集団だ」
「へぇ」
忍者といえば、有名なのは伊賀と甲賀だが、そんな忍者もいたのか。一応、ここ出身のつもりではあったが、まだまだ知らないことは多そうだ。
「で、なんでその忍者が猫、巧巳と関係あるんだ?」
「そりゃあ、巧巳のご先祖様がその忍者だからだろ」
「あぁ、だからか。……へぇ、あぁそう」
一瞬納得しかけた。だけど俺も慣れたもので、オーバーリアクションすることなく、至って冷静に相槌を打てた。ナイスだ、俺。
しかしまぁ、確かに納得する場面が多々あったのも事実だ。身体能力はやけに高いし、表情をあまり表に出さないし、忠誠心高そうだし。
「つっても、商人とか農家が多かったみたいだぜ。あんま戦うような忍者じゃなかったらしい」
「俺の納得を返せ」
ならあの身体能力は猫汰個人が身につけたのか? 恐るべし猫汰巧巳。
と、いい加減居づらくなったのか、猫汰が「ねぇ」と相変わらずのテンションの低さで声をかけてきた。自分のことを話されていたというのに、顔色ひとつ変わっていない。
「回るなら早く回ろう。時間は限られてるしね」
「そ、そうだな。じゃ、武将のおっさん、俺ら自分たちで適当に回るからさ。他の奴、案内してあげてよ」
早くと急かされるままに足を動かす。微かに振り返って武将のおっさんを見れば、おっさんは「あい、仕った」と相も変わらず笑っていた――
※※※
「シゲ、休憩。代わる」
シゲと呼ばれたのは、先程、修学旅行中の高校生の相手をしていた武将だ。
「おお、もうそんな時間であるか。今日の弁当は何でござるかな」
シゲに休憩を促しに来た武将は、三日月を模した兜をかぶり、片目を眼帯で隠している。シゲより立派な鎧は、明らかに彼よりも位が高いことを示している。
にも関わらず、二人が纏う空気が柔らかいのは、この二人が同時期に“ここ”に飛ばされてきたからだろうか。
「今日は牛タン弁当。館長さんが、奮発してくれた」
「はは。本当、館長殿には頭が上がらんでござるな」
参った参ったと頭を掻き、二人の武将はここに来た頃を思い出す。戦ばかりで、右も左も血生臭かったあの時代。“兄”を謀殺しようとしたが阻止され、今まさに処刑されるという寸前で“神”が現れたのだ。
右も左もわからぬとこを“館長さん”に拾われ、ここの観光案内という名目で、他の武将たちと共に雇われた。まさか自分が“兄”に扮するとは思っていなかったが。
「さぁて。今日もこの地を張り切って案内するでござるよー!」
「うん。兄上が愛したこの城下を、今度はきちんと守っていきたい」
「“真実の心”を以て民をもてなす、でござるな」
返事の代わりに薄く笑ってやる。
「しかし許せないこともある」
「何でござる?」
「なぜ兄上が“にぎり飯”? 納得いかない」
「“政宗”公。何度も申すでござるが、あれは“むすび○”でござるよ」
この街は、今日も平和なようだ。
「お主らはどこから参ったでござるか?」
背に“飛車”と書いた陣羽織を着た武将が、腕組みをし豪快に笑いながら聞いてきた。兜にはケムシを模した飾りがついている。忠実に再現していないようで再現しているのが鼻につく。
「俺らはBL学園からだぜ」
「いや都市名言おうや」
ドヤ顔で言い切った太刀根。それに小声でツッコむも、太刀根は鼻を自慢気に鳴らしただけだ。
「ほう、それはそれは。遠くから御足労頂き誠に感謝致すでござるよ」
「お前もそれで通じるんかい」
エセ侍弁、とでもいうのか。いや実際、侍や武将がどんな風に話していたのかは知らんが、この武将は「感謝、感謝でござるよ」と最初と変わらず豪快に笑った。
「それはそれとしてでござるな。そちらの水色髪の童よ、黒脛巾組という名に覚えはないか?」
水色の童は、今いる中では猫汰しかいない。つか、猫汰以外に水色髪を見たことがない。
猫汰は心底面倒くさそうに、下から武将を睨みつけるように見上げると、
「関係ないよ」
とだけ言って、これ以上は話したくないのか、そっぽを向いてしまった。俺はといえば、聞いたことのない単語に頭を捻り、不本意ではあるが隣の太刀根に耳打ちをする。
「なぁ、くろはば……って何」
「黒脛巾組だな。昔、東北にいたって噂の忍者集団だ」
「へぇ」
忍者といえば、有名なのは伊賀と甲賀だが、そんな忍者もいたのか。一応、ここ出身のつもりではあったが、まだまだ知らないことは多そうだ。
「で、なんでその忍者が猫、巧巳と関係あるんだ?」
「そりゃあ、巧巳のご先祖様がその忍者だからだろ」
「あぁ、だからか。……へぇ、あぁそう」
一瞬納得しかけた。だけど俺も慣れたもので、オーバーリアクションすることなく、至って冷静に相槌を打てた。ナイスだ、俺。
しかしまぁ、確かに納得する場面が多々あったのも事実だ。身体能力はやけに高いし、表情をあまり表に出さないし、忠誠心高そうだし。
「つっても、商人とか農家が多かったみたいだぜ。あんま戦うような忍者じゃなかったらしい」
「俺の納得を返せ」
ならあの身体能力は猫汰個人が身につけたのか? 恐るべし猫汰巧巳。
と、いい加減居づらくなったのか、猫汰が「ねぇ」と相変わらずのテンションの低さで声をかけてきた。自分のことを話されていたというのに、顔色ひとつ変わっていない。
「回るなら早く回ろう。時間は限られてるしね」
「そ、そうだな。じゃ、武将のおっさん、俺ら自分たちで適当に回るからさ。他の奴、案内してあげてよ」
早くと急かされるままに足を動かす。微かに振り返って武将のおっさんを見れば、おっさんは「あい、仕った」と相も変わらず笑っていた――
※※※
「シゲ、休憩。代わる」
シゲと呼ばれたのは、先程、修学旅行中の高校生の相手をしていた武将だ。
「おお、もうそんな時間であるか。今日の弁当は何でござるかな」
シゲに休憩を促しに来た武将は、三日月を模した兜をかぶり、片目を眼帯で隠している。シゲより立派な鎧は、明らかに彼よりも位が高いことを示している。
にも関わらず、二人が纏う空気が柔らかいのは、この二人が同時期に“ここ”に飛ばされてきたからだろうか。
「今日は牛タン弁当。館長さんが、奮発してくれた」
「はは。本当、館長殿には頭が上がらんでござるな」
参った参ったと頭を掻き、二人の武将はここに来た頃を思い出す。戦ばかりで、右も左も血生臭かったあの時代。“兄”を謀殺しようとしたが阻止され、今まさに処刑されるという寸前で“神”が現れたのだ。
右も左もわからぬとこを“館長さん”に拾われ、ここの観光案内という名目で、他の武将たちと共に雇われた。まさか自分が“兄”に扮するとは思っていなかったが。
「さぁて。今日もこの地を張り切って案内するでござるよー!」
「うん。兄上が愛したこの城下を、今度はきちんと守っていきたい」
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「しかし許せないこともある」
「何でござる?」
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この街は、今日も平和なようだ。
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