【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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十一月

球技大会は保健室で! その4

 ――身体が重い。インフルエンザで高熱にうなされた時のような、あれに近い気怠さだ。それでもなんとか目を開ける。微かに動く首と、ゆっくりと捉えた視界の端で、鼻歌を歌っている下獄の背中が見えた。

「げ、こく……」

 下獄の名を呼ぶ声も掠れている。心なしか高い気もするし。

「あ、護先輩! 気がつきましたか?」

 振り返った下獄は至極嬉しそうに、その整った可愛らしい顔を綻ばせた。

「俺に、何を、した……?」
「まだ動いちゃ駄目です。身体が馴染んでないと思いますから」

 俺の質問には答えず、下獄は一旦カーテンの外へ出ていくと、背丈ほどある何かを持って戻ってきた。キャスターがついているその何かを俺の顔の横まで引いてくると、下獄は「どうですか?」と期待のこもった目を俺へと向けた。

「……え」

 何か、は姿見鏡だった。そしてそこに映るのは、いつか見たことのある女子だったのだ。

「待て。は? いや待て」

 さっきよりスムーズに出た声に、やはりというべきか違和感を感じ、俺はそっと上半身を起こした。鏡の中の女子も俺が動くのに合わせて起き上がる。

「下獄……。お前、一体何をしたんだ……?」

 あぁ、声が高い。おそるおそる喉に触れるも、出ているはずの場所には何もなかった。

「護先輩をもっともっと可愛くしてみました! ウチ、前から思ってたんです。護先輩ならもっと可愛くなれるのにって」
「可愛く……、あぁそう……」

 なぜ俺なのだ。可愛くするなら女子でよかったじゃないか。男を可愛くするのになんの意味が……って、あれ?

「なんだ、なんか変だな……」

 肩が痛い。いや重い? 俺はもう一度姿見鏡を見る。

「む、む、む、胸がある!?」

 しかもなんかデカい。奇乳や巨乳とまではいかないが、でもぺったんこでもないぞこれ!

「はい。今回、護先輩に飲んでもらった薬はですね」
「飲んだんじゃねぇ、飲ませられたんだ」
「立派さに合わせて胸の大きさが変わるんです!」
「嬉しくない、いや、嬉しい? え、ちょっと待って。もしかして」

 俺は慌てて股間に触れる。

「ある!? いやそこはなくせよ!」

 なんだこの身体は。まじ誰得TS? いやついたまんまだしTSしてないわ!
 テンパる俺を横目に、下獄が椅子を引いて座りながら、

「やっぱり凄いです、護先輩!」

と両手を祈るように組みながら目を輝かせてきた。

「俺は悲しいです、下獄クン」
「こんなに形も大きさもいいなんて。天はイチモツだけでなく、ニモツもサンモツも与えたんですね!」
「使い方違うどころか色々やべぇよ。ぶっ込んでくんな」

 興奮している下獄は、人の話を全く聞こうとしない。それどころか「それじゃ行きましょう」と立ち上がって俺の布団を剥ぎやがった。

「ぎゃ! 何すんだ!?」

 体操服のままだし、別に出して困るものなどないのだが。それでも俺は慣れない、というか自分じゃない身体に戸惑いを隠せず、返せというように布団に手を伸ばした。

「だって護先輩言ったじゃないですか。球技大会戻るんだって」
「このままで戻れるかド阿呆!」

 つい声が大きくなってしまった。それのせいか、いつの間にやら保健室に戻ってきた鏡華ちゃんが「うるせぇ!」とカーテンを思いきり開けて入ってきた。

「きょ、鏡華ちゃん……」

 見知らぬ生徒がいることを驚くに違いない。俺は何かしら言わなきゃと思い口を開きかけ、

「チッ。御竿、下獄、調子がいいなら早く戻りやがれ。ここは昼寝するところじゃねぇぞ」

と言われたことに、口をあんぐりとするしかなかった。
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