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十一月
球技大会は保健室で! その7
球技大会って、なんだったんだろうな。そんな感想を持たずにはいられない一日だ。いやまだ終わってないんだけど。
自分のクラスに戻ると言う下獄と別れ、俺は自分のクラスらしき集団へと近づいていく。
「あ、護!」
クラスの男子から胴上げをされていた太刀根が、目ざとくも俺に気づき嬉しそうな声を上げた。猫汰は参加せず、それを遠目に見ているだけだ。むしろ早く教室に戻りたそうに、腕組みをして、足をタンタンタンタンと鳴らしている。
「よ、よぉ……」
俺はぎこちなく笑う。
一応言っておくと、俺の姿はまだ女子のまんまだ。下獄本人はわかるとしても、なんでお前までわかんだよ(鏡華ちゃんは別だ)。
案の定、胴上げをしていた男子共が一斉にこちらを振り返る。支える手を無くした太刀根が「あふんっ」と情けない声を出しながら落ちた。
「護? 護って御竿か? 保健室に行ってたんだよな?」
名前も知らんモブ男たちが俺を取り囲んできた。つか、モブの顔に“A”とか“B”とかしか書かれていない。目も鼻も口もない、アルファベットしかない。なのになんで話せてんの?
え、てか怖っ。のっぺらぼうより怖っ。
「み、皆には迷惑かけて悪かったよ……。その、もう大丈夫だからさ」
なるべくいつも通り話してみるが、心なしか声がうわずった気がした。
「御竿ってあの?」
「やべ、好み……」
「%$#@&℃№§」
モブたちが口々に言いまくる。最早三人目からは上手く聞き取れなかった。
てか好みって何!?
「お、お前らいい加減に……」
しろと言いかけ、肩をモブに掴まれる。本能的に恐怖を感じたのは、今の俺が女子だからか。それとも俺自身の、男生命の危機が迫ったからか。
どっちにしろ、クラスの男子の目がヤバい。女子どもは「きゃー!」と目に手を当てているようで、指の隙間からばっちりこちらを見ている。
「は、離れ……」
ダンッ。ひときわ大きな音がしてそちらを見れば、イライラマックスバリューの猫汰が、体育館の床を足で破壊したところだった。フシューと煙を上げる床に、俺だけでなく、取り囲んでいたモブたちも顔を青くした。
「君たち。いい加減、御竿くんから離れなよ」
「でも、御竿がこんなに可愛いんだぜ? 少しくらい」
「少しくらい?」
どうやら地雷をまっすぐに踏み抜いたらしい。猫汰のこめかみに青筋が浮きだった。
「なんだい、その試食コーナーにあるひと欠片のウインナーみたいな扱いは。そもそも、御竿くんを試食コーナーに並んでいるようなハムやヨーグルトと一緒にしないでほしい。僕は彼が試食コーナーに並ぶよりも前に、いや店売りされる前から定期購入をしているようなものなんだ。それを今さら、まるでメジャーデビューしたら飛びついてきたような、流行りなら誰にでも飛びつくような君たちと一緒にしないでくれ。僕はインディーズ、いや路上の時から彼と歩んできたも同然なんだよ」
オタクが早口で捲し立てる勢いのまま言い切り、猫汰は最後に「わかったら離れるんだ」と、手指の関節をポキポキと鳴らした。
「は、はは。嫌だなぁ、猫汰。そんなつもりないって。御竿もごめんな!」
慌てて離れていったモブたちは、改めて太刀根をまた胴上げしだした。まぁ、賑やかなのはいいこと、か?
俺は肩をがっくりと落とし、それから猫汰に向き直ると、
「サンキュ、巧巳」
と口の端を持ち上げて笑ってみせた。猫汰は「構わないよ」と同じように笑うと、
「君の上辺しか見ないような奴らに、君を触れさせたくないからね」
「そ、そう……」
と曖昧に返して太刀根に視線をやる。楽しそうなクラスメイトたち。
「優勝、したんだな。やったな」
「してないよ。三位だね」
「なんで胴上げしてんだよ」
まじでよくわからん球技大会だったわ。
自分のクラスに戻ると言う下獄と別れ、俺は自分のクラスらしき集団へと近づいていく。
「あ、護!」
クラスの男子から胴上げをされていた太刀根が、目ざとくも俺に気づき嬉しそうな声を上げた。猫汰は参加せず、それを遠目に見ているだけだ。むしろ早く教室に戻りたそうに、腕組みをして、足をタンタンタンタンと鳴らしている。
「よ、よぉ……」
俺はぎこちなく笑う。
一応言っておくと、俺の姿はまだ女子のまんまだ。下獄本人はわかるとしても、なんでお前までわかんだよ(鏡華ちゃんは別だ)。
案の定、胴上げをしていた男子共が一斉にこちらを振り返る。支える手を無くした太刀根が「あふんっ」と情けない声を出しながら落ちた。
「護? 護って御竿か? 保健室に行ってたんだよな?」
名前も知らんモブ男たちが俺を取り囲んできた。つか、モブの顔に“A”とか“B”とかしか書かれていない。目も鼻も口もない、アルファベットしかない。なのになんで話せてんの?
え、てか怖っ。のっぺらぼうより怖っ。
「み、皆には迷惑かけて悪かったよ……。その、もう大丈夫だからさ」
なるべくいつも通り話してみるが、心なしか声がうわずった気がした。
「御竿ってあの?」
「やべ、好み……」
「%$#@&℃№§」
モブたちが口々に言いまくる。最早三人目からは上手く聞き取れなかった。
てか好みって何!?
「お、お前らいい加減に……」
しろと言いかけ、肩をモブに掴まれる。本能的に恐怖を感じたのは、今の俺が女子だからか。それとも俺自身の、男生命の危機が迫ったからか。
どっちにしろ、クラスの男子の目がヤバい。女子どもは「きゃー!」と目に手を当てているようで、指の隙間からばっちりこちらを見ている。
「は、離れ……」
ダンッ。ひときわ大きな音がしてそちらを見れば、イライラマックスバリューの猫汰が、体育館の床を足で破壊したところだった。フシューと煙を上げる床に、俺だけでなく、取り囲んでいたモブたちも顔を青くした。
「君たち。いい加減、御竿くんから離れなよ」
「でも、御竿がこんなに可愛いんだぜ? 少しくらい」
「少しくらい?」
どうやら地雷をまっすぐに踏み抜いたらしい。猫汰のこめかみに青筋が浮きだった。
「なんだい、その試食コーナーにあるひと欠片のウインナーみたいな扱いは。そもそも、御竿くんを試食コーナーに並んでいるようなハムやヨーグルトと一緒にしないでほしい。僕は彼が試食コーナーに並ぶよりも前に、いや店売りされる前から定期購入をしているようなものなんだ。それを今さら、まるでメジャーデビューしたら飛びついてきたような、流行りなら誰にでも飛びつくような君たちと一緒にしないでくれ。僕はインディーズ、いや路上の時から彼と歩んできたも同然なんだよ」
オタクが早口で捲し立てる勢いのまま言い切り、猫汰は最後に「わかったら離れるんだ」と、手指の関節をポキポキと鳴らした。
「は、はは。嫌だなぁ、猫汰。そんなつもりないって。御竿もごめんな!」
慌てて離れていったモブたちは、改めて太刀根をまた胴上げしだした。まぁ、賑やかなのはいいこと、か?
俺は肩をがっくりと落とし、それから猫汰に向き直ると、
「サンキュ、巧巳」
と口の端を持ち上げて笑ってみせた。猫汰は「構わないよ」と同じように笑うと、
「君の上辺しか見ないような奴らに、君を触れさせたくないからね」
「そ、そう……」
と曖昧に返して太刀根に視線をやる。楽しそうなクラスメイトたち。
「優勝、したんだな。やったな」
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「なんで胴上げしてんだよ」
まじでよくわからん球技大会だったわ。
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