【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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十二月

七匹のオオカミと一人の人間、そして牡蠣? その6

 なんだ? なんで太刀根は焦げてるんだ?
 俺は一体何をしたんだ?

「よしよしマモル、上出来だ。すごいぞ!」

 牡蠣が嬉しそうに飛び跳ねる。そんな牡蠣を上から押さえつけ、俺は「おい」と声を絞り出した。思った以上に低い声が出る。

「今のはなんだ? 俺は人をやっちまったのか?」
「なんだ、やっぱりアイツのこと大事なんじゃないかぁ。マモルったら素直じゃないんだから!」

 素直とか大事とかそんなんじゃない。ただ単純に、ゲームだとしても、人を消すのは気が進まないだけだ。
 特に太刀根は根っからの悪人ではないし。
 そんな俺の気を知ってか知らずか、牡蠣は「ツンデレ? ツンデレ?」と押さえつけた手の下から、からかい続けてきた。

「違う。目覚めが悪いのが嫌なだけだ」
「なーんだ、そういうことかぁ。つまんないなー。大丈夫、生きてるだろ?」

 確かに全身焦げてるし、布は塵となって消えたが、生きてはいる。死ぬ様子もなさそうだ。

「な? 大丈夫だろ?」
「そう、だけどさ……」

 ケラケラ笑う牡蠣から手を離す。
 これで二十五%? 威力が低かったから太刀根が生きているのか、それとも太刀根だから耐えられたのか。どっちなのかはわからんが、とりあえずわかったことがある。
 俺の被るこれは、ただの段ボールではないということだ。
 派手に太刀根を焦がしたはずだが、予想以上に周囲には騒がれず、むしろ落ち着いた様子で来た鏡華ちゃんが、

「今年の第一号は太刀根か。ったく、あんま俺様を働かせるな」

と至極面倒くさそうに、近くにいた使用人たちに太刀根を運ばせていた。

「あの言いようだとこれが普通なのか? 俺がおかしいのか?」

 取り残された俺は、考えても仕方ないと料理を待つことにする。他のテーブルをちらりと見れば、高級ホテルやレストランでしか見ないような(実際に見たことはないけど)、映えに特化させたような料理が並んでいる。
 俺にもああいうのが来るのかな。もうちっと量あるほうが正直嬉しいんだけど。
 そわそわしながら待つこと五分ほどか。

「御竿護!」

 俺をフルネームで呼ぶ奴なんて一人しか思い浮かばず、あえて返事をせずにスマフォに視線を落とした。お、明日から毎日十連ガチャ無料じゃん。

「ちょっと! ねぇってば!」
「……あ、ガチャ外れた」
「そんなものより、ボクを見てってば!」

 見るわきゃない。面倒臭さ、いやウザさで言えば一位独走中の奴と、なぜこのんで言葉を交わさなければならないのか。

「もう!」

 我慢の限界だったのか、ついにダン! とテーブルを叩いてきた。飾られていた花が揺れ、花びらがひと片落ちる。これで散るなんて可哀相だなと花を不憫に感じていると、続いて俺の目の前に乱暴に皿が置かれた。
 綺麗に盛られていたはずの料理が、その反動で崩れていく。俺はわざと聞こえるように舌打ちすると、皿を置いた張本人を見上げた。

「おい……って、センパイ、なんでバニーなんすか」

 そう。文句のひとつでも言ってやろうと見上げた先に、うさ耳バニーのセンパイが立っていたのだ。
 白い肌に網タイツ、すらりとハイヒールまで履きこなしている。スタイルがいいのは流石主要キャラと言うべきか。

「なんでって。赤点取ったからに決まってるでしょ?」
「いや、一緒に補習受けましたよね?」
「赤点っていうのは取ることも出来るんだけど。知らないの?」

 そうかもしれないが。意図して取ることは可能ではあるが。

「それに……。赤点取ったらキミにご奉仕、出来るでしょ?」

 “ご奉仕”の部分が多少聞き取りづらかったが、こいつは確かにそう言った。
 そして迂闊だった。こいつならやりかねん。俺はすぐに「ロックオン」と口にしたが、緑の円が赤くなることはなかった。

「おい牡蠣、赤くならねぇぞ」

 俺は運ばれてきた料理(崩れている)をもしゃもしゃと食べる牡蠣をじろりと睨みつけた。だけど牡蠣は「んぁ?」と口(貝?)の周りにソースをつけながら、

「そりゃあれよ、相手にしてないだけだ」

と笑って、また料理を食べ始めた。その言い方は、これから何が起こるのか楽しみで仕方ないと言わんばかりである。

「いや、相手にしろよ!」

 牡蠣を掴んで揺すってみたが、料理を食べる手 (ないけど) を止める様子は感じられない。

「ねぇ、御竿護。いつまでそんな牡蠣を相手にするつもり? あ、飲み物いるでしょ? 入れてあげるから、感謝しなよね」
「いらん。欲しかったら自分で入れる」
「入れてあげるって言ってるんだってば!」

 いらん、入れる、いらん、入れると押し問答をしていると、テーブルに置いてあった水差しがぐらりと揺れた。

「あ」

 それはバシャンと派手な音を立てて倒れ、瞬く間にテーブルが水浸しになっていく。その水がポタポタと垂れ、俺のズボンに染みを作っていく。

「センパイ、タオル」
「必要ないでしょ」
「は? だからタオ、ル……」

 センパイを見て、俺は固まった。
 下唇をぺろりと舐め、口元を手で隠す仕草をしたセンパイ。俺の今までの経験(ゲーム知識)上、この先のイベントは大方想像出来る。

「ほら、早く脱ぎなよ。このボクが、キミを綺麗にしてあげるから」

 これがBLゲームじゃなかったら。
 俺はこのイベントを、それはそれは喜んで受け入れただろうに。
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