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十二月
七匹のオオカミと一人の人間、そして牡蠣? その11
「それでマモル、行くアテはあるのか?」
「あるわけないだろ」
そう。
勢いよく飛び出したはいいものの、俺はあいつの顔すらもよく思い出せないのだ。一体どこをどう探せばいいってんだ……。
早速途方に暮れ始めた俺に、頭の上から牡蠣の激励が飛んでくる。
「ならさ、思い出の場所でも巡ったらどうだ?」
「思い出? だからそれを思い出せたら苦労してねぇんだって」
「クラスメイトだったんだろ? なら自分のクラスには絶対にいたはずだ。あとは学校行事で、ほら、なんかなかったのか?」
「学校行事……」
ぽつりぽつりと呟きながら、なんとかあいつの姿を思い浮かべながら、とりあえず俺は講堂を出ようと扉へ向かう。何人かのモブから声をかけられたが、そのどれも、俺の耳にはまともに入ってはこなかった。
講堂を出る際、受付のお姉さんに「お帰りですか?」とやんわり止められた。適当に校内をぶらつくと答えると「なら構いませんよ」と通してもらえたが、荷物は返してもらえなかった。
「あれさ、帰るって言ったらどうするつもりだったんだろ……」
講堂を離れ、校内に入ってから牡蠣に聞いてみる。牡蠣は喉を鳴らし笑うと「知りたきゃ捕まってみな?」と俺が嫌がるのをわかって答える。
「それなら別にいい」
「そう、それでいい。他のことは気にすんな」
こうして話していると、少しは気が紛れてくる。今まさに大変な中に、その中心にいるというのに、心が軽くなってくる。
牡蠣がいてよかった。絶対口にはしないけど。
「最初に教室に行こうと思う」
「おう」
階段を上がっていく。一階から二階へ、そして教室への長い廊下へ出た時。
俺の行く先に銀髪のラスボスが立っているのが見え、まさかのここで登場かと少し絶望する。その格好はマントをはためかせ、頭からは角を生やしており、まさに魔王の風格といったところか。
「やぁ、護くん。パーティはまだ始まったばかりだ。戻りたまえ」
ラスボスの、眼鏡の奥に隠れた翠眼が細められ、俺を真っ正面から見据える。それに多少気圧されながらも、俺はぐっと堪え、足を再び動かし始めた。
「聞こえなかったのか? オレは戻りたまえと言ったんだが」
「……会長、どいてください」
会長の目がさらに鋭くなる。
「俺、この先に行かなきゃいけないんです。邪魔するなら、どいてくれないなら、会長相手だろうと、ラスボスだろうと、倒しますよ」
ピピピと緑の円が赤くなる。さっきから『危険、危険』と被り物が言っている。そんなことぐらいわかってる。この人外は、猫汰みたいに簡単にいかないことぐらい。
「ふむ。護くん、この先はただの教室だ。行く必要性はないと思うが?」
「会長、おかしなことを言いますね」
「おかしなこと、だと?」
俺は「そうですよ」と言い、牡蠣を頭から降ろして脇に抱え込んだ。
「いつもの会長なら、必要性とか効率的とか、そんなものより、人の気持ちを優先してたはず。この先に何もないのがわかってても、会長なら“何もないのに行くとは。面白い”とかなんとか言って、俺を止めはしないはずだ!」
そうなのだ。この屹立壱という奴は、人外だしラスボスだし無茶苦茶だし、一見すれば人のことなど何も考えていないように思えるが、本当は違う。
「あんたは、自分の敗北よりチームの勝利を考えたり、皆を楽しませようと一人で家建てたり、シルバーの人に優しかったり。もっと、もっとたぶん、色々あるんだ。俺の知らないだけで。そんなあんたが、必要性だけで、俺を通さないわけがない」
会長の目が意外だと言わんばかりに開かれた。
「だから会長。あんたも因果律のせいでそうなってんなら、俺が全部ぶっ飛ばしてやるよ! ロックオン!」
照準が合う。出力メーターが上がっていく。
「フルファイヤー!」
『了解、出力、一〇〇%固定。放射』
ピピピ――
シュンッ。
これで会長がやられるなんて思っちゃいない。それでも俺は、自分の思いをその光に込めて撃ち込んだ。
「あるわけないだろ」
そう。
勢いよく飛び出したはいいものの、俺はあいつの顔すらもよく思い出せないのだ。一体どこをどう探せばいいってんだ……。
早速途方に暮れ始めた俺に、頭の上から牡蠣の激励が飛んでくる。
「ならさ、思い出の場所でも巡ったらどうだ?」
「思い出? だからそれを思い出せたら苦労してねぇんだって」
「クラスメイトだったんだろ? なら自分のクラスには絶対にいたはずだ。あとは学校行事で、ほら、なんかなかったのか?」
「学校行事……」
ぽつりぽつりと呟きながら、なんとかあいつの姿を思い浮かべながら、とりあえず俺は講堂を出ようと扉へ向かう。何人かのモブから声をかけられたが、そのどれも、俺の耳にはまともに入ってはこなかった。
講堂を出る際、受付のお姉さんに「お帰りですか?」とやんわり止められた。適当に校内をぶらつくと答えると「なら構いませんよ」と通してもらえたが、荷物は返してもらえなかった。
「あれさ、帰るって言ったらどうするつもりだったんだろ……」
講堂を離れ、校内に入ってから牡蠣に聞いてみる。牡蠣は喉を鳴らし笑うと「知りたきゃ捕まってみな?」と俺が嫌がるのをわかって答える。
「それなら別にいい」
「そう、それでいい。他のことは気にすんな」
こうして話していると、少しは気が紛れてくる。今まさに大変な中に、その中心にいるというのに、心が軽くなってくる。
牡蠣がいてよかった。絶対口にはしないけど。
「最初に教室に行こうと思う」
「おう」
階段を上がっていく。一階から二階へ、そして教室への長い廊下へ出た時。
俺の行く先に銀髪のラスボスが立っているのが見え、まさかのここで登場かと少し絶望する。その格好はマントをはためかせ、頭からは角を生やしており、まさに魔王の風格といったところか。
「やぁ、護くん。パーティはまだ始まったばかりだ。戻りたまえ」
ラスボスの、眼鏡の奥に隠れた翠眼が細められ、俺を真っ正面から見据える。それに多少気圧されながらも、俺はぐっと堪え、足を再び動かし始めた。
「聞こえなかったのか? オレは戻りたまえと言ったんだが」
「……会長、どいてください」
会長の目がさらに鋭くなる。
「俺、この先に行かなきゃいけないんです。邪魔するなら、どいてくれないなら、会長相手だろうと、ラスボスだろうと、倒しますよ」
ピピピと緑の円が赤くなる。さっきから『危険、危険』と被り物が言っている。そんなことぐらいわかってる。この人外は、猫汰みたいに簡単にいかないことぐらい。
「ふむ。護くん、この先はただの教室だ。行く必要性はないと思うが?」
「会長、おかしなことを言いますね」
「おかしなこと、だと?」
俺は「そうですよ」と言い、牡蠣を頭から降ろして脇に抱え込んだ。
「いつもの会長なら、必要性とか効率的とか、そんなものより、人の気持ちを優先してたはず。この先に何もないのがわかってても、会長なら“何もないのに行くとは。面白い”とかなんとか言って、俺を止めはしないはずだ!」
そうなのだ。この屹立壱という奴は、人外だしラスボスだし無茶苦茶だし、一見すれば人のことなど何も考えていないように思えるが、本当は違う。
「あんたは、自分の敗北よりチームの勝利を考えたり、皆を楽しませようと一人で家建てたり、シルバーの人に優しかったり。もっと、もっとたぶん、色々あるんだ。俺の知らないだけで。そんなあんたが、必要性だけで、俺を通さないわけがない」
会長の目が意外だと言わんばかりに開かれた。
「だから会長。あんたも因果律のせいでそうなってんなら、俺が全部ぶっ飛ばしてやるよ! ロックオン!」
照準が合う。出力メーターが上がっていく。
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