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十二月
七匹のオオカミと一人の人間、そして牡蠣? その15
気怠そうにやって来た鏡華ちゃんに下獄を任せて、俺は廊下をまた歩き出した。鏡華ちゃんは「これで五人目か……」とボヤいてたけど、別に俺が悪いわけではない。
……悪くない、よな。
「なぁ、やっぱ着かなくね?」
そうなのだ。
これで障害がなくなったわけでもなく、相変わらず窓は動いているし、歩けども歩けども着く気配はどこにもない。むしろ遠ざかっている気すら感じる。
「これ廊下が動いてるか伸びてるだろ。無限回廊に近い何かを感じるわ」
よくゲームや漫画で見るようなあれを思い出し、それならば何か仕掛けがあるんじゃ、と窓から外やら教室やらを覗き込んでみる。特に怪しい場所はないようで、俺は失望と共に肩を落とした。
すると、肩に乗っていた牡蠣が「マモル、マモル」と頭に移動しながら、
「ならその“無限”に追いつけばいいだろ?」
とさも当たり前のように跳ねてきた。
「はぁ? いやお前何言ってんだよ」
先が見えないから“無限”なのであって、追いつけたらそれはもう無限ではなくなってしまうじゃないか。と、そこまで考えて、こいつが言わんとしてることがなんとなく理解出来た。
「いや、いやいや。例えな、例えそれが出来るとして、どうやって追いつくんだよ。どんだけ走っても無理だったじゃねぇか」
それこそ息が切れるまで走っても、こうして立ち止まった今でさえ、この廊下は先を伸ばし続けているのだ。だけども牡蠣は「くくっ」と悪戯を思いついた子供みたいに笑い、
「簡単だって。それ以上の速さで追いついて、追い抜けばいい。難しいことはこれっぽっちもねぇさ」
「だからさ……」
「てことでマモル、“ブースト”だ」
と頭の上で二、三回跳ねた。ペタペタと生身の牡蠣の音がして、跳ねるたびに海の臭いが鼻をついた。
「わかった、わかったから。塩水飛び散るからやめろって。んで、なんだって? ブースト?」
ウィィイイイン――
機械音が鳴り、被り物の左右が開いていく。そこから翼みたいな何かが出てくると、それは後ろに向かって炎を噴射しだしたのだ。
「ちょ、ま、あっつ!」
なんか焦げてる臭いするって!
「おわ、わわわわ……!」
ふわりと足が床から浮き、それに慌てている俺の画面に、でっかく“10”と表示された。
「へ、な、何この数字」
「マモル」
「なんだよ!?」
“9”になった。なんかのカウントダウンか? 噴射される炎が強さを増していく。
「言い忘れてたんだけどさ」
「何!? 早く言えって!」
“8”。
「ワイっちはひっついてるし、慣れてるからいいんだけどさ」
“7”。
「頭と胴体が離れてかないように、しっかり被り物押さえとけよ」
“6”。
「離れるってどういうこと!?」
「そりゃああれよ。すげぇスピードで向かうわけだから」
“5”。
「身体が追いついてこないかもだろ?」
“4”。
「だから首から下が離れないように、ちゃんと押さえてなってこと」
“3”。
何? 何々!? 俺は今から何をされるの!?
「な、なぁ、今からやっぱりキャンセ」
「ほれ。早く用意しなって」
“2”。
ピーッピーッと音が鳴り『限界突破』と機械音声が告げてきた。
「あぁ!? やるよ! やってやんよぉぉおおお!」
“1”。俺は言われた通り、顔の前に腕を回すようにして頭を抱え込んだ。そりゃあもう、必死に。
“0”。
シュンッ――
「あああああ!!!?」
そのものすごい速さに、全身が風に乗って華麗に揺られる。いや、これは春一番が吹く中外に干される洗濯物みたいにはためいてる気がする。
俺は洗濯物の気持ちなんて知りたくなかったと涙ぐみながら、その風に負けないようにと、ただただ頭を抱えているしか出来なかった。
……悪くない、よな。
「なぁ、やっぱ着かなくね?」
そうなのだ。
これで障害がなくなったわけでもなく、相変わらず窓は動いているし、歩けども歩けども着く気配はどこにもない。むしろ遠ざかっている気すら感じる。
「これ廊下が動いてるか伸びてるだろ。無限回廊に近い何かを感じるわ」
よくゲームや漫画で見るようなあれを思い出し、それならば何か仕掛けがあるんじゃ、と窓から外やら教室やらを覗き込んでみる。特に怪しい場所はないようで、俺は失望と共に肩を落とした。
すると、肩に乗っていた牡蠣が「マモル、マモル」と頭に移動しながら、
「ならその“無限”に追いつけばいいだろ?」
とさも当たり前のように跳ねてきた。
「はぁ? いやお前何言ってんだよ」
先が見えないから“無限”なのであって、追いつけたらそれはもう無限ではなくなってしまうじゃないか。と、そこまで考えて、こいつが言わんとしてることがなんとなく理解出来た。
「いや、いやいや。例えな、例えそれが出来るとして、どうやって追いつくんだよ。どんだけ走っても無理だったじゃねぇか」
それこそ息が切れるまで走っても、こうして立ち止まった今でさえ、この廊下は先を伸ばし続けているのだ。だけども牡蠣は「くくっ」と悪戯を思いついた子供みたいに笑い、
「簡単だって。それ以上の速さで追いついて、追い抜けばいい。難しいことはこれっぽっちもねぇさ」
「だからさ……」
「てことでマモル、“ブースト”だ」
と頭の上で二、三回跳ねた。ペタペタと生身の牡蠣の音がして、跳ねるたびに海の臭いが鼻をついた。
「わかった、わかったから。塩水飛び散るからやめろって。んで、なんだって? ブースト?」
ウィィイイイン――
機械音が鳴り、被り物の左右が開いていく。そこから翼みたいな何かが出てくると、それは後ろに向かって炎を噴射しだしたのだ。
「ちょ、ま、あっつ!」
なんか焦げてる臭いするって!
「おわ、わわわわ……!」
ふわりと足が床から浮き、それに慌てている俺の画面に、でっかく“10”と表示された。
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「なんだよ!?」
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「何!? 早く言えって!」
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「離れるってどういうこと!?」
「そりゃああれよ。すげぇスピードで向かうわけだから」
“5”。
「身体が追いついてこないかもだろ?」
“4”。
「だから首から下が離れないように、ちゃんと押さえてなってこと」
“3”。
何? 何々!? 俺は今から何をされるの!?
「な、なぁ、今からやっぱりキャンセ」
「ほれ。早く用意しなって」
“2”。
ピーッピーッと音が鳴り『限界突破』と機械音声が告げてきた。
「あぁ!? やるよ! やってやんよぉぉおおお!」
“1”。俺は言われた通り、顔の前に腕を回すようにして頭を抱え込んだ。そりゃあもう、必死に。
“0”。
シュンッ――
「あああああ!!!?」
そのものすごい速さに、全身が風に乗って華麗に揺られる。いや、これは春一番が吹く中外に干される洗濯物みたいにはためいてる気がする。
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