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一月
俺は邪魔をされずにデートをしたい その3
鏡華ちゃんからもらったタコを、境内の隅にある屋根付きスペースで食べてから、次はお守りでも買うかと観手と向かう。太刀根と猫汰は勝手についてきてるだけだ、断じて誘ったわけではない。
「わ~、この商売繁盛可愛いですね。これにしようかな」
「見た目じゃなく効力で選べよ」
「だってずっとつけてるんですよ? 可愛いほうがいいじゃないですか~」
そう言って、観手は巫女さん(たぶんアルバイト)にクマモチーフのお守りを渡した。クマの背中に“商売繁盛”と書かれてあり、とりつけやすいように長い紐が頭についている。
可愛さで選ぶとか基準が全くわからんが、俺は俺で違うものを選ぶ。厄除け、学業成就、交通安全……、ここはやっぱり厄除けかと手を伸ばしたところで。
「護、これにしようぜ!」
「これ? ……安産祈願じゃねぇか!」
太刀根が意気揚々と指差したのは、可愛らしいピンク色の小袋に“安産祈願”と書かれたお守りだ。
「え、何? あぁ、わかった。太刀根、お前、メイドさんに悪さしたんだな。駄目だろ。でも責任持つのはいいことだと思う、頑張れよ」
口を挟む余地など与えず、俺は構うことなく厄除けを手に取った。それを近く巫女さんに「お願いします」と差し出した。巫女さんが「五〇〇円お納めください」と笑う。
「何言ってんだよ。俺と護に決まってるだろ? 大丈夫。俺が支えるからさ」
「俺の穴からは便しか出る予定はありません。はい、五〇〇円」
巫女さんがお守りを小袋に入れ、お金を渡してそれを受け取る。太刀根は一人妄想中なのか「俺がついてるから」とか「楽しみだなぁ」とかふざけたことを言いながら、安産祈願を買ったようだった。
少し離れたところでは、猫汰も何か買ったようで、巫女さんに代金を渡しているところだった。猫汰のわりに静かなのが気になり「猫汰」と平静を装いながら近づいていく。
「何買ったんだ?」
「大したものじゃないよ。それより御竿くん、唾液を少しくれないかな? 髪の毛と爪はもうあるから」
「待て。何をするつもりだ。一体何を買ったんだ」
嫌な予感しかしない。
俺はいけないと思いつつ、半ば無理やりに猫汰から袋を奪い取り、その中身を確認する。
中に入っていたのは赤色の四角いお守りだ。縛る部分に小さなハートの小物がついていて、それだけでそれがなんのお守りか察しがついた。
「これ、恋愛成就か?」
「一般的にはそう言われているね」
「“一般的”ってどゆこと」
なんだろう、これを猫汰に返しちゃいけない気がする。猫汰が「もういいかな」と返してほしそうにするのを「あ、や、まだ」と躊躇っていると、
「あれ? 護先輩?」
と社務所から声が聞こえてきた。
「下獄?」
巫女さんたちの中に、ひときわ目立つピンク髪が見え、俺も反射で名前を呼んだ。すると下獄は嬉しそうに「やっぱり先輩だったんですね!」と嬉しそうにこちらへやって来た。
着ている袴の色は何も言うまい。今は男女で色を分けるなんてしないし。
「初詣で護先輩と会えるなんてウチ嬉しいです! あれ、そのお守り……」
そう下獄が見ているのは、俺の手にある猫汰の恋愛成就のお守りだ。
「先輩、もしかして、ウチのために……? そんなことしなくてもいいのに」
「違う違う。これ猫汰が買ったやつ」
「猫汰先輩が?」
下獄は猫汰を見て「あぁ」と何か納得したような声を上げて、それから意地の悪い笑みを浮かべた。猫汰が悔しげに小さく舌打ちもした。
「それ、すごい効果なんですよ。確か意中の人の髪の毛、爪、それから体液を、自分のものと混ぜ合わせて袋の中に入れるんです。そしたらそれを七日間、蝋を垂らしてがっちり固めた後、垂らすのに使用した蝋燭で燃やすんです。そうすればその人の心は永遠に自分のモノに……。ですよね、猫汰先輩?」
「チッ。余計なことを」
余計でもなんでもねぇよ。なんつう怖いもん売ってんだ、この神社は。俺は新品未開封のお守りを下獄に突っ返しながら、
「返金対応出来る?」
「あ、はい、大丈夫ですよ。ではこちら、五万円お返ししますね」
「ごっ……!?」
と受け取ったお札を、渋い表情の猫汰に無理やり握らせた。
「わ~、この商売繁盛可愛いですね。これにしようかな」
「見た目じゃなく効力で選べよ」
「だってずっとつけてるんですよ? 可愛いほうがいいじゃないですか~」
そう言って、観手は巫女さん(たぶんアルバイト)にクマモチーフのお守りを渡した。クマの背中に“商売繁盛”と書かれてあり、とりつけやすいように長い紐が頭についている。
可愛さで選ぶとか基準が全くわからんが、俺は俺で違うものを選ぶ。厄除け、学業成就、交通安全……、ここはやっぱり厄除けかと手を伸ばしたところで。
「護、これにしようぜ!」
「これ? ……安産祈願じゃねぇか!」
太刀根が意気揚々と指差したのは、可愛らしいピンク色の小袋に“安産祈願”と書かれたお守りだ。
「え、何? あぁ、わかった。太刀根、お前、メイドさんに悪さしたんだな。駄目だろ。でも責任持つのはいいことだと思う、頑張れよ」
口を挟む余地など与えず、俺は構うことなく厄除けを手に取った。それを近く巫女さんに「お願いします」と差し出した。巫女さんが「五〇〇円お納めください」と笑う。
「何言ってんだよ。俺と護に決まってるだろ? 大丈夫。俺が支えるからさ」
「俺の穴からは便しか出る予定はありません。はい、五〇〇円」
巫女さんがお守りを小袋に入れ、お金を渡してそれを受け取る。太刀根は一人妄想中なのか「俺がついてるから」とか「楽しみだなぁ」とかふざけたことを言いながら、安産祈願を買ったようだった。
少し離れたところでは、猫汰も何か買ったようで、巫女さんに代金を渡しているところだった。猫汰のわりに静かなのが気になり「猫汰」と平静を装いながら近づいていく。
「何買ったんだ?」
「大したものじゃないよ。それより御竿くん、唾液を少しくれないかな? 髪の毛と爪はもうあるから」
「待て。何をするつもりだ。一体何を買ったんだ」
嫌な予感しかしない。
俺はいけないと思いつつ、半ば無理やりに猫汰から袋を奪い取り、その中身を確認する。
中に入っていたのは赤色の四角いお守りだ。縛る部分に小さなハートの小物がついていて、それだけでそれがなんのお守りか察しがついた。
「これ、恋愛成就か?」
「一般的にはそう言われているね」
「“一般的”ってどゆこと」
なんだろう、これを猫汰に返しちゃいけない気がする。猫汰が「もういいかな」と返してほしそうにするのを「あ、や、まだ」と躊躇っていると、
「あれ? 護先輩?」
と社務所から声が聞こえてきた。
「下獄?」
巫女さんたちの中に、ひときわ目立つピンク髪が見え、俺も反射で名前を呼んだ。すると下獄は嬉しそうに「やっぱり先輩だったんですね!」と嬉しそうにこちらへやって来た。
着ている袴の色は何も言うまい。今は男女で色を分けるなんてしないし。
「初詣で護先輩と会えるなんてウチ嬉しいです! あれ、そのお守り……」
そう下獄が見ているのは、俺の手にある猫汰の恋愛成就のお守りだ。
「先輩、もしかして、ウチのために……? そんなことしなくてもいいのに」
「違う違う。これ猫汰が買ったやつ」
「猫汰先輩が?」
下獄は猫汰を見て「あぁ」と何か納得したような声を上げて、それから意地の悪い笑みを浮かべた。猫汰が悔しげに小さく舌打ちもした。
「それ、すごい効果なんですよ。確か意中の人の髪の毛、爪、それから体液を、自分のものと混ぜ合わせて袋の中に入れるんです。そしたらそれを七日間、蝋を垂らしてがっちり固めた後、垂らすのに使用した蝋燭で燃やすんです。そうすればその人の心は永遠に自分のモノに……。ですよね、猫汰先輩?」
「チッ。余計なことを」
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「ごっ……!?」
と受け取ったお札を、渋い表情の猫汰に無理やり握らせた。
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