【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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一月

俺は邪魔をされずにデートをしたい その7

 よくもまぁ、俺を抱えた(抱きしめたとは言いたくない)ままで動けるものだ。正直早すぎて景色なんぞ見えちゃいないが、たまに耳の横を掠める音が、これはリアルなのだと突きつけてくる。

「会長、まだなんすか!」

 いいかげん腰を触られてるのも嫌になってきた。たまに動く指先が、俺の反応を楽しむような手つきになっているが、お生憎様、それで「あっ」とか言うような安い男ではない。
 言いたくもないが。

「いや、もういいんだが」
「だが?」
「護くんを手放したくなくてな」
「離せ変態。セクハラで訴えんぞ」
「本当に面白いな、キミは。では、お望み通り終わらせるとしようか」

 華麗に雪の上に着地した会長が、俺を守るように自身の後ろへと降ろしてくれた。だけどそれを狙っていたのか、豪速球雪玉ストレートが一斉に襲いかかってきた!

「会長!」
「安心したまえ、護くん。これくらいどうとでもなる。ふんっ」

 会長はこれすらも想定内なのか、手にした扇を地面の雪に向かって振り下ろした。巻き起こる風で雪が舞い、それはあっという間に高い雪の壁を作り出す。
 向かってきた雪玉たちはその壁に当たると、粉々になって砕け散っていった。役目を終えた壁もパラパラと崩れていく。

「……魔法か何かっすか」

 そもそもここは二次元だし、なんなら会長のやることだし、そういった不思議な力を使ったとしても不思議ではない。

「いや? 物理だ」
「物理で超常現象をなんとかしようとすんなよ」

 自信溢れる会長にジト目を送り、それからあの子供はどうなったのかとそっちを見る。
 会長の言う通り、力を全部使い切ったようで、疲弊しているのか四つん這いになっている。肩で息するのを見て、こういう不思議な存在でも疲れるんだなと場違いなことを思った。

「それで、この子供……は、どうするんすか」
「鎮める方法はいくつかあるが、そうだな。一番手っ取り早く、かつお互いに気持ちの良い方法を取ろうと考えている。どうだ? 護くんも混ざるか?」
「詳しく聞きたくないし、なんか嫌な予感しかしないからいいっす」
「そうか。それは残念だ」

 心からそう思っているように顔をしかめ、それから会長は足早に子供に近づいていく。
 四つん這いで息を切らす子供の腕を取って、半ば無理やり立ち上がらせると、空いたほうの手で顎を掴んで視線を合わせた。
 絵面的になんとも言えないヤバさが漂ってんなぁと眺めていると、その子供が助けを求めるようにちらりと俺を見てきやがった。いや、見るなよ。

「うー、うー」
「……」
「うー!」
「……あーもう、罪悪感に押し潰されるからやめろよ!」

 俺は知らないうちに二人に近づくと、腕を掴んだままの会長の手を掴んだ。

「ほう。やはり護くん、仲間に入りたいんだな」
「いや違うけど。ただちょっと、見てられなかっただけっす。あー、それにほら」

 怯えた眼差しを向ける子供は、最初とはうって変わってすごく大人しい。

「まだ理由聞いてないなって思って。俺をこの場所に呼んだ理由」

 大した理由ではないのかもしれない。
 でも力が溢れ出したのは俺の責任っぽいし、もしそれが大元の理由なら、ちゃんと謝りたいと思ったのだ。
 会長は反対するかと思ったけど「いいだろう」と鼻で笑いながら、子供から手を離した。それに合わせて俺も会長から手を離し、子供に視線を合わせるように屈んだ。

「で? なんで俺をここに呼んだの。つか、話せる? 日本語わかる?」
「あ、ぁ……」
「やっぱ無理かぁ」

 声は出せるようだが、言葉を伝えることは難しそうだ。肩を落として「ごめんな」と子供の頭を撫でてやった時、

「“お兄ちゃん、助けてくれてありがとう”と言っている」

と会長の声が聞こえてきた。

「え、わかるんすか」
「当たり前だ。各国言語、古代語、犬語やネコ語もいけるぞ」
「うわぁ……」

 ちょっと引いたものの、ここは会長に頼むしかない。

「じゃ会長、通訳お願いします」
「うむ」

 腕組みをして頷いた会長を確認してから、俺は再度「で、なんでだ?」と子供と向き直った。

「あー」
「“妾の名前は有喜ありき多莉たり。遡ること今から約五〇〇年前のことだ”」
「ちょっと待って、今の短文のどこにそんな長い台詞が?」

 この人に通訳を頼んだのは間違いだったかもしれない。痛い頭を抱えて、俺は心の中でため息をついた。
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