【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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二月

食べられたら即終了。恐怖のチョコレート その7

 調理室を出てた俺は、とにかく助けを呼ばないとと考えていた。

「でも助けって……」

 ぶつぶつ呟きながら歩けば、いつの間にやら四階へ続く階段まで来ていたようだった。そうだ、この上は生徒会室がある。会長なら……!

「いや、今は授業中だよな。流石の会長もいるわけないか」
「呼んだか?」
「うわ!? 会長!?」

 背後から声をかけられ振り向けば、なんら姿の変わっていない会長が、片手に教科書を持って立っていた。そんな会長にツッコむヒマもなく、俺は会長の腕をがっしりと掴み、

「よかった会長! 大変なことになっていて……」

と強く揺さぶった。反動で教科書が落ち、俺は慌てて「すんません」と手を離した。会長は「構わん」と薄く笑い、教科書を拾い上げてから、

「それで護くん、大変なことというのは、もしや床を這うチョコレートのことだろうか」
「そ、そうなんすよ! 流石会長、なんでもお見通しっすね!」
「ふむ。高く評価しているところ悪いが、オレは状況を見て察しただけなのだが」

と俺に、いや俺の後ろに視線をやった。
 嫌な汗が背中を伝う。ギギギと効果音でも鳴りそうなほど、ぎこちなく、首を後ろに回せば、そのチョコは床をゆっくりと侵食してきていた。

「来てるううう!」

 思わず飛び上がり、チョコから離れるように会長の後ろに隠れた。

「これだけのチョコ、このオレでも食い切れんかもしれん」
「食うこと前提で話すな!」
「食物には違いない。ならば食さねば、作った者に対しても、形を変えた物に対しても失礼ではないか」
「ここでそれ言う!?」

 相変わらず変な会長である。
 確かに、食べ物は粗末にしちゃいけませんって散々言われてきたが、もはやこれを食べ物扱いしていいものか。
 慌てる俺とは反対に、会長は至って冷静に、床を這うチョコレートの前まで歩いていきしゃがむと、なんの脈絡もなくチョコレートを指先でペロリと舐めやがった。

「会長!?」
「ふむ。これはまた、なかなか味わい深い……」
「味わうなよ!」

 会長はあと二口、三口食べると、何かに気づいたのか「なるほど」と唇をぺろりと舐めた。

「どうやら誰かが給水塔に忍び込んだようだ」
「給水塔って……、屋上にあるアレか?」
「うむ」

 給水塔っていうのは、学校や団地の屋上についてる丸いアレのことな。確かにこの学校にもあった気がする。

「てか、今どき給水塔つけてたんすね」
「見た目にもいいかと思ってな。おもむき、というやつだ」
「金持ちのやることはよくわかんねぇ……」

 そう会長はドヤ顔でキメているが、その足元はチョコレートに侵食されている。折角現れた助っ人を呑まれてたまるかと、俺は「会長、危ない!」と再び腕を掴んだ。

「慌てるな、護くん」

 会長は問題ないというように片足を上げてみせる。クラスメイトみたいに呑まれるわけでもなく、会長の足はちゃんと存在していた。

「こんな混ざり物に、純粋培養育ちのオレが負ける理由はない」
「……」

 ふん、と鼻を鳴らしてみせる会長。俺は馬鹿らしくなって、掴んだ腕を突き放すように力を込めて離した。そんなんで会長がぐらつくはずはないんだけど。

「で? どうするつもりなんすか」

 会長に冷たい視線を当てながら聞いた。ウニョウニョとチョコにまとわりつかれた会長は、頭まですっぽりと覆われた格好のまま、

「何、簡単だ。キミがなんとかすればいい」

とどっから声を出してんのかわからん状態で答えてくれた。

「いや、俺ただのいち生徒だし。つか会長、どうやって喋ってんの? 息出来てる?」
「問題ない。少しくらい息が出来ずとも死にはせん」
「あぁ、そう……」

 人外、いや生物外の心配はいらないようだ。

「で、俺ただの生徒なんすけど」
「安心したまえ。キミは少し、他と違うだろう? それに甘んじればいい」

 会長の言葉に、ドキリと心臓が嫌な音を立てた。いや、会長はこのゲームの主要キャラなだけで、俺のことなんて、俺自身がなんなのかなんて、知るわけはないのに。

「まぁ、案ずるな。どちらに転んでもオレとしては面白い」
「は? それって……」

 ぐいと手を引かれ、俺は足をもつらせながらチョコへとダイブした。小さく悲鳴を上げて足を動かそうにも、重くて上手く持ち上がらない。
 そのまま全身が呑まれていき――


 ※


「うわあっ!?」

 意識が戻った時、そこは見慣れた自分の部屋だった。少し固いせんべい布団、紐がつけられた電灯、横で眠る牡蠣。窓からうっすらと差すのは、朝日だ。

「え……」

 慌ててスマフォを確認する。日付は二月十五日。時はいつの間にか進んでいた。
 いつも通り用意し学校へ向かう。
 教室には、呑まれたはずのクラスメイトたちがいて、今日はいつもの人間の姿のようだ。太刀根が「護!」と駆け寄ってくるのもいつも通り。

「……なぁ、昨日、何があったんだ?」
「昨日? あぁ、昨日は大変だったよなぁ。でもありがとな、護のおかげで助かったぜ!」
「は?」

 もちろん何かした覚えはこれっぽっちもない。それでも他のクラスメイトから「ありがとよ」や「助かったぜ」と言われる辺り、俺は何かをしたんだろう。
 このイベントには、どうやらもっと、違う攻略法があったらしい。二週目をするつもりは、全くないんだがな。
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