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二月
涙の防災訓練、今からお前を追放する!? その1
ここは、どこだ。
頬を撫でる少し暖かな風も、鼻を掠めていく草花の甘い香りも、照りつけるような眩しい日差しも。
何より目の前に広がる草原に、俺はただただ困惑していた。
「護、そっちに行ったぞー!」
風に乗って聞こえてきた声に振り返れば、太刀根が手にした杖を振りながらこっちに走っているところだった。先端に太陽を象った飾りをつけたその杖は、よくゲーム(ここもゲームなんだけど)で見る魔法使いのそれによく似ている。
そんな太刀根が追いかけ回しているのが、ゼリー状の、これまたどっかのゲームで見たことある青いアイツだ。必死で逃げているのだろうか、汗のエフェクトが心なしか見える(気がする)。
「ピギーッ、ピギーッ」
「……」
俺は逃げてきたそいつに、特に何をするわけでもなく手にした鞭を腰のベルトに収めた。青いそいつは、そんな俺の挙動に安心したのか、ピョンピョンと跳ねてくると俺の後ろにぐるりと回って隠れた。
「ピギーッ」
「あ、お前、護に悪さするつもりだな! 護、早くそいつから離れろ!」
なぜか俺を挟んで睨み合う太刀根と青いそいつ。青いそいつが助けを乞うように足にくっついてくるが、如何せん、ヌルっとというかベトっとしていて気持ちのいいものではない。
「……太刀根、こんなやつ放っといてさ、早く合流しようぜ」
「駄目だって。今こいつを放っといたら悪さするに決まってるだろ!」
鼻息荒く抗議する太刀根。俺はうんざり気味にため息をついて、今日の、この“防災訓練”の概要を思い出していた。
※
「ということで、今日は抜き打ち防災訓練よ♪」
朝礼の最初、牧地は開口一番にそう言った。抜き打ちとは一体、と思ったが、とりあえず話を聞くかとそのまま続きを待った。
「せんせー、防災訓練って火事とか地震の?」
それ以外に何があるんだ。本当に太刀根は頭がいいのかとこういう時に疑いたくなる。
「いい質問ね、太刀根ちゃん♪ 皆は知ってると思うんだけど、昨今ではクラスごとや学校ごとに、異世界に転移してしまう事例が増えてるわよね?」
「待って先生、何それ」
最近流行りの異世界転移とか転生ってやつ? 俺の質問に、隣の猫汰が素早くスマフォで何かを操作すると、俺に画面を突きつけてきた。
「ほら、これだよ。ついこの間も、隣の市の高校生がクラスごと転移したんだ。違う県では転移した生徒たちが、先日帰ってきたみたいだよ」
見せられた画面には、確かにそんな旨のニュースがずらりと並んでいる。
「さすがは猫汰ちゃん、ニュースもばっちり確認済みってことね♪」
「はい。御竿くんを守るのに、いらない情報なんてありませんから」
「いやいや。そのニュースのどこにそんな必要性があんの」
猫汰に「ありがと」とスマフォを引っ込めさせ、俺は牧地に「で?」と続きを促した。
「んもう、せっかちなんだから。それでね、今日の防災訓練は“異世界転移”した時の訓練をすることになりました♪」
「おー! 何それ楽しそうじゃねぇか!」
盛り上がる太刀根、いやクラスメイトとは反対に、俺のテンションは盛り下がるばかり。何が悲しくて、転生した先で転移までせにゃならんのだ。
「ということで、この屹立さんの技術力で出来上がった異世界転移装置で、早速皆を転移させるわね♪ はい、ポチッと♪」
特に説明をするわけでもなく、牧地はポケットから出した四角い箱のボタンを押した。
瞬間、目の前がぐらりと歪んで、意識はなくなっていき――
そうして俺は、草原の中、ただ一人で倒れていたのだ。
頬を撫でる少し暖かな風も、鼻を掠めていく草花の甘い香りも、照りつけるような眩しい日差しも。
何より目の前に広がる草原に、俺はただただ困惑していた。
「護、そっちに行ったぞー!」
風に乗って聞こえてきた声に振り返れば、太刀根が手にした杖を振りながらこっちに走っているところだった。先端に太陽を象った飾りをつけたその杖は、よくゲーム(ここもゲームなんだけど)で見る魔法使いのそれによく似ている。
そんな太刀根が追いかけ回しているのが、ゼリー状の、これまたどっかのゲームで見たことある青いアイツだ。必死で逃げているのだろうか、汗のエフェクトが心なしか見える(気がする)。
「ピギーッ、ピギーッ」
「……」
俺は逃げてきたそいつに、特に何をするわけでもなく手にした鞭を腰のベルトに収めた。青いそいつは、そんな俺の挙動に安心したのか、ピョンピョンと跳ねてくると俺の後ろにぐるりと回って隠れた。
「ピギーッ」
「あ、お前、護に悪さするつもりだな! 護、早くそいつから離れろ!」
なぜか俺を挟んで睨み合う太刀根と青いそいつ。青いそいつが助けを乞うように足にくっついてくるが、如何せん、ヌルっとというかベトっとしていて気持ちのいいものではない。
「……太刀根、こんなやつ放っといてさ、早く合流しようぜ」
「駄目だって。今こいつを放っといたら悪さするに決まってるだろ!」
鼻息荒く抗議する太刀根。俺はうんざり気味にため息をついて、今日の、この“防災訓練”の概要を思い出していた。
※
「ということで、今日は抜き打ち防災訓練よ♪」
朝礼の最初、牧地は開口一番にそう言った。抜き打ちとは一体、と思ったが、とりあえず話を聞くかとそのまま続きを待った。
「せんせー、防災訓練って火事とか地震の?」
それ以外に何があるんだ。本当に太刀根は頭がいいのかとこういう時に疑いたくなる。
「いい質問ね、太刀根ちゃん♪ 皆は知ってると思うんだけど、昨今ではクラスごとや学校ごとに、異世界に転移してしまう事例が増えてるわよね?」
「待って先生、何それ」
最近流行りの異世界転移とか転生ってやつ? 俺の質問に、隣の猫汰が素早くスマフォで何かを操作すると、俺に画面を突きつけてきた。
「ほら、これだよ。ついこの間も、隣の市の高校生がクラスごと転移したんだ。違う県では転移した生徒たちが、先日帰ってきたみたいだよ」
見せられた画面には、確かにそんな旨のニュースがずらりと並んでいる。
「さすがは猫汰ちゃん、ニュースもばっちり確認済みってことね♪」
「はい。御竿くんを守るのに、いらない情報なんてありませんから」
「いやいや。そのニュースのどこにそんな必要性があんの」
猫汰に「ありがと」とスマフォを引っ込めさせ、俺は牧地に「で?」と続きを促した。
「んもう、せっかちなんだから。それでね、今日の防災訓練は“異世界転移”した時の訓練をすることになりました♪」
「おー! 何それ楽しそうじゃねぇか!」
盛り上がる太刀根、いやクラスメイトとは反対に、俺のテンションは盛り下がるばかり。何が悲しくて、転生した先で転移までせにゃならんのだ。
「ということで、この屹立さんの技術力で出来上がった異世界転移装置で、早速皆を転移させるわね♪ はい、ポチッと♪」
特に説明をするわけでもなく、牧地はポケットから出した四角い箱のボタンを押した。
瞬間、目の前がぐらりと歪んで、意識はなくなっていき――
そうして俺は、草原の中、ただ一人で倒れていたのだ。
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