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二月
涙の防災訓練、今からお前を追放する!? その6
俺、御竿護。職業、勇者と書いて無職。
想像したよりも情けない肩書に、職安を出た俺は、これからどうするかと肩をがっくり落としながら歩いていた。
「まもるおにいさん、あらため、にーとにき、げんきだして」
「ならその呼び方変えろよ」
「ぼく、ほんとのこといっただけ。やさしくすると、ためにならないって、どっかのにんげんいってた」
足元を跳ね回るラスを蹴り飛ばしてから、俺は占いをしている観手のところまで戻ってきた。再生したラスが「たーのしー」とはしゃぎ回っている、ウザい。
「あ、御竿さん。どうでした? あれ? 太刀根さんは一緒じゃないんですね」
「太刀根なら猫汰に“討伐依頼が来てるから行ってきて”って言われてどっか行ったわ」
「そうなんですか~。それで? 御竿さんの職業、わかりました?」
勇者です。なんて言えるわけがない。おかしいな、普通、勇者ってもっと堂々と出来るもんだと思ってたわ。
そっか、そうだよな。魔王がいないなら、勇者って意味ないもんな。何と戦えってんだ。
「……」
「御竿さん、どうしました?」
「……あ、えっと、その」
何か適当な職を言おうにも、この世界の職業がよくわからず口ごもるしかない。そんな俺を面白がるように、やはり足元にいたラスが、
「にーとにきだよ」
と机に乗りながら笑って言いやがった。
「ニート、ニキ……?」
言葉の意味をいまいち理解していない様子の観手。俺は慌てて訂正しようと、ラスを両手でバチンと力強く叩いて粉砕してから、
「あー! 待て、違う、俺は」
と食い気味に観手に迫った。ニートなんて知られたくない。特に観手には。
だが観手は「わかりました!」と目をキラキラさせながら、俺の両手を優しく包み込んできた。
「大丈夫です、御竿さん。何もしないことをしているなんて、立派な職業じゃないですか!」
「やめろ! いい言葉っぽく言うんじゃない!」
「むしろ働かなくていいなんて羨ましいです!」
「いや、どうやって食ってくんだよ!?」
この世界の通貨がどんなものかは知らないが、金がないと食べ物も着る物も、住む場所さえないのではないか? いや、養ってくれそうな奴ならいるか。太刀根とか猫汰とか……。
「いやいや、駄目だ駄目だ。代わりにナニを要求されるかわからんぞ、俺」
特に猫汰なんかは、働かなくていい代わりに自由を失くしそうで怖い。ここはなんとかして働き口を探さねば……。
「とりあえず、どっか探してみるわ……」
意気消沈しながら観手に背を向け、最初に入ってきたほうとは逆に歩き始める。元に戻ったラスが「にーとにきー」と追いかけてきたようだが、それを気にかける余裕などなく、俺は町を散策し始めた。
とにかく、基本は酒場か? それっぽい建物を探して中に入ると、見覚えのある銀髪が、歌姫よろしく壇上で歌っていた。
「あ、センパイ」
その歌声は、最初に会った屋上で一回聞いたきりではあったが、どんな歌手にも負けないくらいに綺麗な声だった。こうして見れば、それなりにイケメンなことに気づく(会長と同じ顔だし当たり前か)。
「あー! 御竿護!」
キーン――
マイクで大声を出され、耳だけでなく、視界も少しグラついた。それは聞いていた観客だけでなく、グラスを運んでいた店員たちにもダメージを与え、そこらじゅうからグラスや皿の割れる音が響いた。
「……っ、センパイ、マイクは駄目ですって」
咄嗟に耳を塞いで抗議するも、俺の声は全く届いてないようで、マイク片手に何かを叫んでいる。
と、そんなセンパイの肩を叩く、バーテンダー風のおっさんが現れた。マスターみたいなもんかな。
「シュウ、これで何枚目だと思ってるンだ。皿洗いも駄目、料理を運ばせても駄目、終いには歌わせてみたがこれだ。ここまでの代金は高くつくからな」
「ボクは屹立家の人間なの! したことないんだから仕方ないでしょ!」
「仕方ないで済むなら話し合いはいらねンだわ。さ、ちとこっちで説教といこうや」
「いや! 離して! ねぇ、御竿護、ねぇ、助けて! やだ!」
なぜ俺の名前を呼ぶ。他人のフリを貫き通したかったのだが、センパイが必死になって手を伸ばすものだから、マスターは目ざとくも俺を見つけ、
「おい、そこのニイチャン。ニイチャンにも、ぜひ働いてもらおうか」
と笑ってきやがった。
もちろん俺は、速攻その場から逃げ出した。
想像したよりも情けない肩書に、職安を出た俺は、これからどうするかと肩をがっくり落としながら歩いていた。
「まもるおにいさん、あらため、にーとにき、げんきだして」
「ならその呼び方変えろよ」
「ぼく、ほんとのこといっただけ。やさしくすると、ためにならないって、どっかのにんげんいってた」
足元を跳ね回るラスを蹴り飛ばしてから、俺は占いをしている観手のところまで戻ってきた。再生したラスが「たーのしー」とはしゃぎ回っている、ウザい。
「あ、御竿さん。どうでした? あれ? 太刀根さんは一緒じゃないんですね」
「太刀根なら猫汰に“討伐依頼が来てるから行ってきて”って言われてどっか行ったわ」
「そうなんですか~。それで? 御竿さんの職業、わかりました?」
勇者です。なんて言えるわけがない。おかしいな、普通、勇者ってもっと堂々と出来るもんだと思ってたわ。
そっか、そうだよな。魔王がいないなら、勇者って意味ないもんな。何と戦えってんだ。
「……」
「御竿さん、どうしました?」
「……あ、えっと、その」
何か適当な職を言おうにも、この世界の職業がよくわからず口ごもるしかない。そんな俺を面白がるように、やはり足元にいたラスが、
「にーとにきだよ」
と机に乗りながら笑って言いやがった。
「ニート、ニキ……?」
言葉の意味をいまいち理解していない様子の観手。俺は慌てて訂正しようと、ラスを両手でバチンと力強く叩いて粉砕してから、
「あー! 待て、違う、俺は」
と食い気味に観手に迫った。ニートなんて知られたくない。特に観手には。
だが観手は「わかりました!」と目をキラキラさせながら、俺の両手を優しく包み込んできた。
「大丈夫です、御竿さん。何もしないことをしているなんて、立派な職業じゃないですか!」
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「むしろ働かなくていいなんて羨ましいです!」
「いや、どうやって食ってくんだよ!?」
この世界の通貨がどんなものかは知らないが、金がないと食べ物も着る物も、住む場所さえないのではないか? いや、養ってくれそうな奴ならいるか。太刀根とか猫汰とか……。
「いやいや、駄目だ駄目だ。代わりにナニを要求されるかわからんぞ、俺」
特に猫汰なんかは、働かなくていい代わりに自由を失くしそうで怖い。ここはなんとかして働き口を探さねば……。
「とりあえず、どっか探してみるわ……」
意気消沈しながら観手に背を向け、最初に入ってきたほうとは逆に歩き始める。元に戻ったラスが「にーとにきー」と追いかけてきたようだが、それを気にかける余裕などなく、俺は町を散策し始めた。
とにかく、基本は酒場か? それっぽい建物を探して中に入ると、見覚えのある銀髪が、歌姫よろしく壇上で歌っていた。
「あ、センパイ」
その歌声は、最初に会った屋上で一回聞いたきりではあったが、どんな歌手にも負けないくらいに綺麗な声だった。こうして見れば、それなりにイケメンなことに気づく(会長と同じ顔だし当たり前か)。
「あー! 御竿護!」
キーン――
マイクで大声を出され、耳だけでなく、視界も少しグラついた。それは聞いていた観客だけでなく、グラスを運んでいた店員たちにもダメージを与え、そこらじゅうからグラスや皿の割れる音が響いた。
「……っ、センパイ、マイクは駄目ですって」
咄嗟に耳を塞いで抗議するも、俺の声は全く届いてないようで、マイク片手に何かを叫んでいる。
と、そんなセンパイの肩を叩く、バーテンダー風のおっさんが現れた。マスターみたいなもんかな。
「シュウ、これで何枚目だと思ってるンだ。皿洗いも駄目、料理を運ばせても駄目、終いには歌わせてみたがこれだ。ここまでの代金は高くつくからな」
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なぜ俺の名前を呼ぶ。他人のフリを貫き通したかったのだが、センパイが必死になって手を伸ばすものだから、マスターは目ざとくも俺を見つけ、
「おい、そこのニイチャン。ニイチャンにも、ぜひ働いてもらおうか」
と笑ってきやがった。
もちろん俺は、速攻その場から逃げ出した。
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