【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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三月

猫汰 巧己

 校舎に入った俺は牧地に捕まってしまい、なぜかクラス委員の猫汰と一緒に、職員室から体育館まで、荷物を運ばされることになった。頼んだ牧地本人はといえば「遅刻にはしないから大丈夫よ♪」と言って、大量のプリントを持って先に教室に行ってしまった。

「はぁ、なんで俺が……」

 頼まれた荷物は段ボール八箱分。流石に持てそうになかったので、台車を借りて、俺が三箱、猫汰が五箱運ぶ形に。

「僕は結構楽しいけれど?」
「いやいや、今日は卒業式だぞ? 荷物を運ぶにしても昨日までにやっとけって話だよ……」

 なんで当日になってこんなことを。いくら卒業式が十時からで、いくら時間があるのだとしても、準備というのは事前にやっておくものだろうが。
 ガラガラガラと、タイヤの擦れる音が廊下に響く。ガタガタと荷物が揺れるたび、落ちないかと心臓が飛び跳ねた。

「にしても、こりゃなんだ?」

 ガムテープで止められているわけではないので、見ようと思えば見れるのだが、ちらちらと見える段ボールの中がやけに暗い。朝日で中が見えないかと角度を変えて覗き込むも、見える気配なんてチリもない。

「気になるのかい?」
「まぁ。運ばされてるわけだし」
「でも開けちゃ駄目だよ。開けたら……、そうだね、君が大変な目に合うかもしれないから」
「かも、なんだ……」

 開けるなと言われれば開けたくなる。でも俺が“大変な”目に合うのなら、気にしないでおこう。それが一番いい。
 体育館まで来ると、同じように荷物を運んできたらしい生徒や先生たちがいた。指示に従って倉庫に段ボールを置いていると、積んであった荷物がぐらりと傾いて倒れてきた。

「うわっ」
「御竿くん!」

 ガタガタッ。
 床に散らばった荷物、それから庇うように両手を壁に突き出した格好の猫汰。そして――
 その隣に、無傷で、特に何事もなく立ったままの俺。

「……猫汰、大丈夫か?」

 そう。荷物は俺から少し離れた場所に落ちてきたのだ。つまり俺はよけなくとも怪我などしない位置にいたわけで、つまりは猫汰が格好良く庇った場所には誰もいないわけで、というより、そもそも猫汰の身長では俺を庇うことなど出来ないわけで。

「……ふ」
「猫汰?」
「ふ、ふふ、ふ。大丈夫だよ、御竿くん。ちょっと狙いが外れちゃったみたいだけど」
「狙いって何!?」
「次はちゃんと庇うから、もう一回やらせてくれないかな?」
「誰がやるか!」

 兎にも角にも、散らかった荷物を積み直さないと怒られそうだし。俺はひとつふたつと荷物を積み上げたところで、さっき運んできた段ボールのフタが開いていることに気づいた。

「あ。猫汰、さっきの箱、開いてるんだけど」
「なんだって……!?」

 猫汰は慌てた様子で箱を確認すると、震える手でそっと閉じた。

「猫汰?」
「……御竿くん、今すぐ倉庫から出るんだ。出たらすぐに鍵をかけて、誰も入ってこれないようにしてもらえるかな」
「え」

 全く話が見えてこない。
 だけど、閉じた箱の底から黒い液体が染み出しているのが見え、本能でヤバいヤツだとわかった。

「牧地先生には、今日は出れませんとだけ伝えてもらえるかい?」
「あ、あぁ」
「さぁ、早く」

 促されるまま倉庫を出る。扉を閉める際、猫汰が「ありがとう、御竿くん」と足止めをする主要キャラ顔負けの台詞を言っていたが、いかんせん、逆光でその表情はよく見えなかった。
 おかしいな、朝日が入ってこない間取りのはずなんだけど。
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