【完】BLゲームに転生した俺、クリアすれば転生し直せると言われたので、バッドエンドを目指します! 〜女神の嗜好でBLルートなんてまっぴらだ〜

とかげになりたい僕

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三月

屹立 壱

 足をもたつかせながら階段を駆け下りる。最後の五段くらいをかっこつけてジャンプしたら、着地と同時に足が少し痺れた。それに悶えながら一階へ出れば、バトル漫画よろしく、会長が床に散った破片を拾い上げ、それを手に投げつけて応戦しているところだった。

「会長!」
「護くん!? なぜ、キミが降りて……」
「っと、よそ見してる場合じゃないっすよ!」

 俺は牡蠣に言われるままに左に転がり手をよける。会長もまた一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに迫りくる手に向き直っていた。
 倉庫から伸びた手はその役目を終えるためか、手当たり次第に生徒を捕まえようとしてくる。中には逃げる生徒もいるが、そのほとんどが逃げ切れずに捕まっては手の中に呑まられていった。その際に、悲鳴とは違う声を上げているのは気にしないことにする。

「会長、アレを倒す方法知ってるんすよね!?」

 俺とは違い、優雅な動きで手をかわす会長。あれだけ嬉しそうに“やはり来たか”と言っていたのだ、倒せる算段くらいあるに決まってる。

「ふ……、ない」
「え!? や、は? ちょ、よく聞こえなかったわ」
「ない、とオレは言ったのだ」
「自信満々で草……っと、うわ!」

 手をよけた時に足がもつれ、そのままべたんと転んでしまった。

「マモル、マモル。左胸のポケット、探ってみな」
「え、ポケットって……」

 跳ねる牡蠣に言われるままポケットを探る。生徒手帳と一緒に出てきたのは、赤やら青、黄、それらが混じり合った虹色の、いや絵の具を混ざり合わせたような真っ茶色の珠だった。

「なんだこりゃ」
「そりゃあ、あれよ。皆の力をひとつにした伝説の珠よ」
「ならせめて光の珠とかさ、虹色とかさ。なんかこう、あっただろうよ」

 言い合う俺たちを他所に、会長は「なるほど」と口の端を持ち上げてみせ、それから珠を取り上げると、

「よし、これと食すといい」

と俺に突きつけてきやがった。

「こんなう○こみたいなもん食えるか!」
「ほう、面白い。確かに想いが結晶化したという意味では同じか。まぁ、時間も惜しい。少し強引にいかせてもらおうか」
「んっ!? ふ……!」

 そう言うと会長は、俺の口に珠を無理やり突っ込んできた。いきなりのことに頭が追いつかず、俺はされるがままに珠を口の中で転がすことしか出来ない。
 珠を強制的に舐めさせる会長は、俺の隣で「マモル、マモル」と跳ねる牡蠣に視線をやり、

「そこの小さき同志ともよ、少し時間を稼いでもらいたい」

とさも戦友に語りかけるかの如く言ってのけた。牡蠣も牡蠣でノリ気なのか「はぁ?」と不満そうな声を上げつつも、

「全く、牡蠣使い荒くね? 高級海水一年分送れよ」
「うむ。約束しよう」
「ほいじゃ、任せたぜ」

と手の気を引くために跳ねていく。それを半分涙目で見送り、俺は味わいたくもない珠を堪能する羽目に。
 なぜか甘い。甘すぎるその味は、俺の頭を芯から痺れさせ、途端に身体中を熱くさせていく。

「んん!?」
「さぁ、存分に味わうといい」

 なんで? なんでなんで? なんで俺が太刀根みたいになってんの? 会長ルートまっしぐらなの?

「んんんー!」

 嫌だ嫌だと首を振ろうにも、こうもがっつり固定されていては叶わない。せめてもの抵抗のつもりで睨みつければ、会長は「いい表情かおだ」と舌舐めずりをした。

「ん……、げほっ、げほっ」

 やっとのことで口を解放され、俺は咳込むと同時に珠を吐き出した。床に転がった珠は半分ほどの大きさになっていて、これって食い物だったのかよと鳥肌が立った。

「会、長……! あんた、何す」
「よし、では残りは頂くとしよう」
「へ?」

 怒りで会長に掴みかかるも、会長は特に気にするでもなく、床に転がった珠をつまむと、なんの躊躇いもせずに自分の口へと放り込んだ。ガリガリと噛む音がする。
 いや。いやいや、いやいやいや、それよりも、だ。

「は? 会長、あんた、へ?」

 床に落ちたものだぞ? いや、それよりも食べさしだぞ?
 つか、それ俺が、食べ、食べ……っ!

「あああ!? 吐け! 今すぐに! 吐き出せ!」
「はっはっはっ、おかしなことを言う。吐いたとしても、食べたという事実は変わらんと思うが?」
「あぁあぁ、最悪だ……」

 項垂うなだれる俺。笑う会長。最悪な図だ。

「それよりも護くん」
「なんだよ……」
「そろそろ効いてきたのではないか?」
「何が……ん?」

 あれほど熱かった身体が、嘘のように冷えている。いや、元に戻った、のが正しいのかもしれない。それよりも、自分の身体に満ち溢れる力に驚いた。なんだろう、この奥底から感じる不思議な力は。

「さぁ、護くん。オレと力を合わせてアレを押し戻そうじゃないか!」
「嫌ですけど。不本意ですけど。ま、仕方ないか」
「二人でタイミングを合わせて必殺技を出そうではないか」
「必殺? え、そんなんあるの、これ」

 いきなり言われてもわからない。だけど牡蠣が「あぎゃっ!」と壁に叩きつけられたのを見て、迷ってる暇はないと俺は右拳を低く構えた。

「いくぞ、護くん!」
「っす!」
「「涙の愛物語ラブミーティアーテイルズ!」」

 ん? 今会長、キラ☆キュアの必殺技言わなかったか?
 そんな俺たち二人の必殺技は、それぞれの拳から金と銀の眩い光を放ち、そしてそれは真っ黒な手を瞬く間に浄化していった――
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