【本編完結済】前世の英雄(ストーカー)が今世でも後輩(ストーカー)な件。

とかげになりたい僕

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第二部

思いはすれ違う

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「今日はありがとうございます」

 バーベキュー当日、店長に言われた時間に店へとやって来た。もちろん隣にはユーリもいる。
 この話を持ち出した時から嫌そうな顔はしていたけど、実際に来てからは眉間の皺が一層深くなった気がする。ユーリに「ごめん?」と耳打ちすれば「いいよ」とは返されるけれど、どう見ても顔と言葉が合ってない。

「揃ったな、乗れ」

 店長が運転する車に、助手席にゴウダさん、後ろにスイを含めた三人で乗り込んだ。ユーリとスイの間に挟まれてるのはもちろん僕。

「こんにちは、あたしスイ! よろしくね、リッちゃんの彼氏さん!」
「うん、よろしく」

 記憶のないスイは朗らかに話しているけれど、確かこの二人、馬が合わなかったんじゃなかったっけ、と思い出す。いや、そもそも、ユーリはボクたちを倒すために力を授かったわけだし、馬が合う合わないの話ではないのかもしれない。

「彼氏さん、なんか見たことあるかも……?」

 もしかしたらスイの記憶を刺激したのかと、僕は「あのさ、スイ」と前のめり気味で会話に割り込む。けれどユーリは至って冷静で、

「……有志家だから。見たことくらいあるんじゃない?」

と窓の外を見ながらぼそりと呟いた。スイは「あ、そっか!」と納得したみたいで、そこからは特に何事もなく僕や店長と会話をしていた。
 街の喧騒を離れ、田園が続く道に入った頃、結構立派なお寺が見えてきた。石垣で多少見えづらくなっているけれど、お墓の上部分がひっそりと見えている。

「着いたぞ」

 言われて車から降りれば、敷地内を箒で掃いている女の人がいた。店長と同じくらいのその人は、短い茶の髪に茶のくりっとした二重の目、エプロンをつけた、しっかりしたお母さんという印象だった。

「よう」

 店長が一言挨拶をすれば、その人は「あら」と顔を上げて、それからユーリを見て目を見開いた。

「殿、下……?」

 ユーリをそう呼ぶのは前世の、しかもユーリ側の人間しかいない。でも呼ばれた本人はピンときていないようで、女の人を頭の上から足の先まで眺めて「誰」と僕に耳打ちしてきた。

「僕が知るわけ……、ん? ちょっと待って……」

 言いかけて、僕はまた女の人を見る。髪色が違うからか分かりづらいけれど、そうだ、僕もこの人は見たことがあるような。

「……あ」

 そうだ。確か彼女は、国の教会にいた――

「シスターだよ、シスター」
「あぁ!」

 孤児を引き取って育てていた女性だ。そしてその孤児の中に、ユーリと共にボクたちを倒しに来る聖女がいたはず。

「なんで僕が覚えてて、ユーリが覚えてないんだよ。普通逆だろ」
「興味なくてさ。正直、一緒に旅した奴らも覚えてないよ」
「あのね……」

 ユーリが王様でなくてよかったかもしれない。そもそも、ユーリの性癖が狂った一因が自分にもあるかもしれないが、それは不可抗力だ。断じて僕のせいじゃない。

「ま、色々話したいことはあるだろうが、荷物置いてもいいか?」
「えぇ、もちろんですよ」

 至って普通に話しているし、もうわだかまりも何もないのかもしれない。それこそ、前に店長が言っていた“縛るものが何もない”ように。
 なら僕がギクシャクするのも変な話だ。すぐに車の中から食材の入った箱を持つと「どこに運びますか?」とシスターに尋ねた。

「あら。それじゃあ、裏手に運んでくれる?」
「わかりました。ほら、ユーリも」

 持っていた箱をユーリに渡して、僕は違う箱を手に持った。気が乗らない様子のユーリをせっついて裏手に行けば、そこは少し広けた場所になっていて、既にテントがいくつか張られている。

「結構広いね」
「広いっていうか、これあれでしょ。近所の子供でも呼んでバーベキューする感じ」
「あー、なるほど」

 だから店長は人手が欲しいって言ってたのか。
 隅に箱を置いて、他に手伝うことがないかまた表に戻ろうとした時。

「わっ!?」

 腕を引っ張られ、僕はユーリの身体に背中を預ける形になってしまった。そのままうなじに噛みつかれ、意図せず身体がびくりと反応してしまう。

「ちょっ……と、ユーリ」
「んー?」

 回された腕が僕の身体をまさぐり、Tシャツの中へと入り、そのまま胸に緩く触れていく。

「だ、めだって……」
「ねぇリヒト、だいぶおっきくなったね」
「へ?」

 何を言われているのか理解出来ず、思わず間抜けな声が出てしまう。ユーリの手が胸全体を揉むような仕草へと変わり、それで僕はやっと言葉の意味を理解した。

「ほら。揉むとおっきくなるってのは本当だったんだ」
「やめて……、ユーリ」

 指が胸だけでなく、つん、と立った先端を面白がるようにつつく。その刺激に内ももを無意識に擦り合わせると、ユーリが耳元で愉しそうに笑った。
 片手で摘むように先端を弄られ、もう片手がジャージへと伸びてくる。その手が触れるか触れないかのところで、なんとか僕は我に返ると、肘を思いっきり曲げてユーリの腹へとお見舞いした。

「うっ……!」

 手が緩んだ隙に抜け出して、僕はユーリから距離を取って振り返る。

「こんなとこでも頭ん中お花畑なのか!? いつでも盛るな! この猿! これだから人間は……っ」

 と言いかけ、口をつぐんだ。しまった、つい前世むかしのくせで言っちゃいけないことを言ってしまった。
 すぐに「ごめん」と俯いて、自分の身体を強く抱きしめた。ユーリは何も気にしてないのか、

「こっちこそごめん。リヒトのそれ、久しぶりに聞いたね」

と笑ってくれた。
 けれどすれ違う時に見たユーリの顔は、あの淋しげな横顔そのものだった。
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