溺愛お義兄様を卒業しようと思ったら、、、

ShoTaro

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公爵家に引き取られました

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 貧民街の片隅、雨漏りのする小さな小屋に僕は住んでいた。僕は、娼婦の母とそのお客さんとの子供だ。だから父親はいない。
 
 でも僕は幸せだった。母は傷だらけで帰ってくることもあったが、僕の前では笑顔で優しい人だった。

 幸せな日々は長くは続かない。
 母が病気になってしまったのだ。僕では助けることなどできない。病気で歩くのもきついはずなのに家事をしようとしたり、働きに行こうとしたりして、日に日に衰えていった。
 家事とかは僕がやってあげられるけど、病気を治してあげることはできない。お医者さんにかかるお金もない。
 
 母が衰えていくのを見ていられなくなった僕は、町中を駆けずり回って母を診てくれるお医者さんを探した。
 僕の身なりを見ると、すぐに追い返される。それはそうだろう。どう考えてもお金を払えないような格好だ。つぎはぎだらけで、一部破れたりしている。洗濯なんてしていない服だ。それでもあきらめるわけにはいかない。ここで諦めたら母は死んでしまうのだ

 コンコンコン
 「だれかいらっしゃいませんか、お願いします、母を診てください。」

 小さな病院の前で必死に頼み込んだ。ここら辺にある最後の病院だ。
 するとドアが開き、老紳士が出てきた。

 「どなたかな?」

 「お願いします!母が病気なんです、お金なら僕が働いてお支払いしますから!」

 「落ち着きなさい。君はどこの誰なんだい?」

 「僕は、テオドールといいます。貧民街に住んでいます。」

 「そうか、私はラティスだ。ではお母さんのところまで案内しなさい。」

 自己紹介をすると、貧民街に住んでいるということなど気にも留めていない様子で、診察を引き受けてくれた。
 僕はすぐに家まで案内して、お医者さんに診てもらった。

 「これは、、、もう手遅れだろう。」

 お医者さんの言葉がわからなかった。
 やっとお医者さんに診てもらうことができて、これでお母さんも元気になる。そう思っていた。
 しかし、お医者さんの言葉を理解し始めると、希望が崩れていった。
 絶望と同時に、自分に対して怒りが込み上げてきた。僕がもっと早くお医者さんを呼んでこれていたら、いや、僕さえいなければお母さんはこんなに苦労することもなく病気にだってならなかったかもしれない。そう思わずにはいられなかった。

 「そんな、何とかお願いします。お母さんを助けてください!」

 「テオ、無理を言ってはいけないわ。人には寿命というものがあるの。人はね、病気やけがで死ぬんじゃないの。人は等しく寿命で死ぬの。だからこれが私の寿命だったということ。テオにはまだ難しいかもしれないわね。」

 母は優しく微笑んだ。やせ細ったその顔で笑いかけてくる母に涙があふれた。

 「お母さん、いやだよ。ずっと一緒にいたいよぉ。」

 「テオ、あなたは男の子でしょ。もっと強くならないだめよ。
 テオ、これはあなたのお父さんがくれたものなの。きっとこれがあなたの役に立つはずよ。」

 そう言ってきれいなペンダントを差し出してきた。そのペンダントには、きれいな花の紋章があった。

 「あなたのお父さんは、この領の領主様、公爵様なのよ。これがあればきっとあなたを助けてくれるはず。あの方はそういう人よ。
 テオ、ずっと一緒にいてあげられなくてごめんね。まだ6歳のあなたを残して死んじゃうダメなお母さんを許してね。幸せに、、、」

 「おかあさん、いた、いやだ、うわああ!」

 僕のお父さんが誰なのかは、まだ信じることができなかったが、お母さんの目はそれが真実だと言っていた。
 そして、僕に謝りながら死んでいった。


 「テオドール君、しばらく私の家にいなさい。君のお母さんのお母さんの名前を教えてもらってもいいかな。私が領主様に問い合わせておこう。」

 お医者さんが領主様に連絡をしてくれたらしく、迎はすぐに来た。
 お母さんを診てくれて、火葬と埋骨までしてくれたお医者さんにお礼を言って、公爵家に来た。

 公爵様の奥方も早くに亡くなられたらしく、公爵様には1人だけご子息がいるようだった。

 「君がテオドール君かね。彼女によく似ている。
 今日からはここが君の家だ。楽にしなさい。」

 「はい、お世話になります。」

 公爵様は、少し悲しげで、優しそうな顔をしていた。この人が母を愛していたのかはわからないし、母の死の責任をこの人に感じないわけではないが、身分の差を考えると仕方のないことかもしれない。公爵様を恨む気にはならなかった。
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