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竜の恩讐編
ピオニーアの想い その3
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結城は三年前の、ピオニーアがいなくなるまでの記憶を思い起こしていた。
「結城さん、憶えていますか? 結城さんと媛寿ちゃんと私と、三人でいろんな所に行って、いろんな事件を解決したこと」
難しい依頼があるとピオニーアのところに相談に行き、依頼に興味を持ったピオニーアが同行し、出向いた先で結城たちは事件を解決した。笑ってしまうようなことも、悲しみに暮れることも、いろんなことがあった。
「事件が解決したら、結城さんたちのアパートでちょっとした祝賀会をしてましたね。お酒が入ってみんなで朝まで眠ってしまった時もありました」
材料を買ってきて鍋を作ったりすき焼きを作ったり、時にはピザを注文したりもした。どんな事件に遭ったとしても、最後にはそれで良い気分で終われた。
「大変なことも多かったし、命に関わるようなことも何度もありました。けれど、最後には三人で笑って終われました」
結城もピオニーアの言葉に同意したい気持ちだった。何度となく大変な目には遭ったが、三人で依頼と事件に向き合う日々は、いま思い出しても輝いている。
「……いずれは独り立ちして、我が子と一緒に生きていく。故郷との柵を全て断って。それだけを願って、私は日本であらゆる知識、あらゆる技術の習得に奔走してきました。けれど、結城さんや媛寿ちゃんと過ごすうちに、私はほんの少しだけ……夢を見るようになったんです。結城さん、媛寿ちゃん、私、そしてリズベルも交えて、四人で生きていけたら……どんなに楽しいだろうなって」
笑みを浮かべるピオニーアの目尻に、わずかだが涙が光っていた。
それは結城の記憶にない、結城も初めて見るピオニーアの表情だった。
「ピオニーアさん……」
「その夢を見ることができたからこそ、私は結城さんの命を救えたことを後悔していません。何一つ」
「え?」
ピオニーアに歩み寄ろうとした結城の動きが止まった。
『結城の命を救った』というピオニーアの言葉が、結城の頭の中を目まぐるしく駆け巡った。
三人で事件に挑んでいた時、確かに命の危険が伴う場面は何度もあった。
だが、そのいずれも三人の力で乗り越えてきたので、ピオニーアがそんな表現を使うことに、結城は大きな違和感を覚えた。
同時に、とても不穏な予想に思い至った。
三年前、ピオニーアとの離別の際に、欠落していた結城の記憶。
結城は単にピオニーアが命を落とす場面を見ていないだけと考えていた。
しかし、そこに全く違う理由があり、結城にとって受け入れ難い事実があるならば――――――
「……結城さんは、コチニールの銃弾から私を庇おうとして、命を落としてしまったんです」
「結城さん、憶えていますか? 結城さんと媛寿ちゃんと私と、三人でいろんな所に行って、いろんな事件を解決したこと」
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材料を買ってきて鍋を作ったりすき焼きを作ったり、時にはピザを注文したりもした。どんな事件に遭ったとしても、最後にはそれで良い気分で終われた。
「大変なことも多かったし、命に関わるようなことも何度もありました。けれど、最後には三人で笑って終われました」
結城もピオニーアの言葉に同意したい気持ちだった。何度となく大変な目には遭ったが、三人で依頼と事件に向き合う日々は、いま思い出しても輝いている。
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笑みを浮かべるピオニーアの目尻に、わずかだが涙が光っていた。
それは結城の記憶にない、結城も初めて見るピオニーアの表情だった。
「ピオニーアさん……」
「その夢を見ることができたからこそ、私は結城さんの命を救えたことを後悔していません。何一つ」
「え?」
ピオニーアに歩み寄ろうとした結城の動きが止まった。
『結城の命を救った』というピオニーアの言葉が、結城の頭の中を目まぐるしく駆け巡った。
三人で事件に挑んでいた時、確かに命の危険が伴う場面は何度もあった。
だが、そのいずれも三人の力で乗り越えてきたので、ピオニーアがそんな表現を使うことに、結城は大きな違和感を覚えた。
同時に、とても不穏な予想に思い至った。
三年前、ピオニーアとの離別の際に、欠落していた結城の記憶。
結城は単にピオニーアが命を落とす場面を見ていないだけと考えていた。
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