小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

文字の大きさ
442 / 469
竜の恩讐編

ピオニーアの想い その3

しおりを挟む
 結城ゆうきは三年前の、ピオニーアがいなくなるまでの記憶を思い起こしていた。
「結城さん、憶えていますか? 結城さんと媛寿えんじゅちゃんと私と、三人でいろんな所に行って、いろんな事件を解決したこと」
 難しい依頼があるとピオニーアのところに相談に行き、依頼に興味を持ったピオニーアが同行し、出向いた先で結城たちは事件を解決した。笑ってしまうようなことも、悲しみに暮れることも、いろんなことがあった。
「事件が解決したら、結城さんたちのアパートでちょっとした祝賀会をしてましたね。お酒が入ってみんなで朝まで眠ってしまった時もありました」
 材料を買ってきて鍋を作ったりすき焼きを作ったり、時にはピザを注文したりもした。どんな事件にったとしても、最後にはそれで良い気分で終われた。
「大変なことも多かったし、命に関わるようなことも何度もありました。けれど、最後には三人で笑って終われました」
 結城もピオニーアの言葉に同意したい気持ちだった。何度となく大変な目には遭ったが、三人で依頼と事件に向き合う日々は、いま思い出しても輝いている。
「……いずれは独り立ちして、我が子リズベルと一緒に生きていく。故郷とのしがらみを全てって。それだけを願って、私は日本であらゆる知識、あらゆる技術の習得に奔走ほんそうしてきました。けれど、結城さんや媛寿ちゃんと過ごすうちに、私はほんの少しだけ……夢を見るようになったんです。結城さん、媛寿ちゃん、私、そしてリズベルもまじえて、四人で生きていけたら……どんなに楽しいだろうなって」
 笑みを浮かべるピオニーアの目尻に、わずかだが涙が光っていた。
 それは結城の記憶にない、結城も初めて見るピオニーアの表情だった。
「ピオニーアさん……」
「その夢を見ることができたからこそ、私は結城さんの命を救えたことを後悔していません。何一つ」
「え?」
 ピオニーアに歩み寄ろうとした結城の動きが止まった。
 『結城の命を救った』というピオニーアの言葉が、結城の頭の中を目まぐるしく駆け巡った。
 三人で事件に挑んでいた時、確かに命の危険がともなう場面は何度もあった。
 だが、そのいずれも三人の力で乗り越えてきたので、ピオニーアがそんな表現を使うことに、結城は大きな違和感をおぼえた。
 同時に、とても不穏な予想に思い至った。
 三年前、ピオニーアとの離別の際に、欠落していた結城の記憶。
 結城は単にピオニーアが命を落とす場面を見ていないだけと考えていた。
 しかし、そこに全く違う理由があり、結城にとって受け入れがたい事実があるならば――――――
「……結城さんは、コチニールの銃弾から私をかばおうとして、命を落としてしまったんです」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...