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竜の恩讐編
ピオニーアの想い その2
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「?」
ピオニーアの言葉に、結城は首を傾げた。
(ピオニーアさんが……人間嫌い? いったい何のことが言いたいんだ?)
時々ピオニーアの突拍子もない発言に驚かされるのは、結城にとっては三年前から同じことだった。
だが、今回は会話の流れとして、なぜそんなことを言うのかが解らなかった。
「リズベルの母として生きていくことを決意してから……いえ、その前の、リズベルがお腹の中にいると分かった時から、でしょうね。私は心の中で『他人は信が置けない存在だ』と思っていました。都合良く奉って利用しながら、都合が悪くなれば利用価値がないと判じ、一転して忌み嫌う。私とリズベルをそんな風に扱う周りに、私は静かに失望の念を抱きました。同時に、『人間とはこんなものなんだ』とも」
「……」
「だから、ですね。それ以降、私は表面上は波風を立てないようにしながら、本当は誰一人として信用も信頼もせずに過ごしてきました」
(そんな風には見えなかったけどな)
結城の記憶にあるピオニーアは、静かで物知りで、掴みどころはないが、いつも優しく微笑んでいる、そんな印象だった。
「けれど……」
「?」
「結城さんと媛寿ちゃんは違いました。何の裏表もなく、ただのピオニーアとして、私に接してくれました。バカ正直なくらいに」
「バ、バカ正直、ですか?」
「ええ、バカ正直です」
ピオニーアは本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。それは結城が知る、ピオニーアの一番良い笑顔だった。
「そんな二人に、私も少なくない部分が影響されました。自分のためであっても他人のためであっても、いつも一生懸命で、何があっても挫けず、何に対しても挑んでいく。私には、二人がそう見えたんです」
「僕たちはそんな勇敢な感じじゃなかったと思うんですけど。僕はいつも媛寿に振り回されてただけだし」
「私も最初は、二人のことが理解できませんでした。でも知っていくうちに、『私も二人のように生きられたら』と、少し憧れるようになっていたんです」
「僕からしたらピオニーアさんの物知りなところが憧れでしたよ」
「ふふ♪ ありがとうございます」
ピオニーアはまた嬉しそうに笑う。
結城が話しているピオニーアは、結城の中に残る『記憶』だと言ってきた。
だが、その仕草も表情も、全部結城が知っているピオニーアそのままだった。
結城は本物のピオニーアと話しているような気になり、嬉しく思う反面、どこか悲しくも思っていた。
ピオニーアはすでに死者であり、もうどこにもいないのだ。
「二人に影響されたから、私もちょっと夢を見ちゃったんでしょうね……」
ピオニーアは少しだけ悲しそうな笑みを浮かべた。
結城は知っていた。
それはピオニーアが本当に、『悲しい』、『寂しい』と思っている時に見せていた表情だと。
「もし、無事にリズベルを日本に呼び寄せることができたら……四人で一緒に暮らしていきたいって。心のどこかで、そう思っていたんです」
ピオニーアの言葉に、結城は首を傾げた。
(ピオニーアさんが……人間嫌い? いったい何のことが言いたいんだ?)
時々ピオニーアの突拍子もない発言に驚かされるのは、結城にとっては三年前から同じことだった。
だが、今回は会話の流れとして、なぜそんなことを言うのかが解らなかった。
「リズベルの母として生きていくことを決意してから……いえ、その前の、リズベルがお腹の中にいると分かった時から、でしょうね。私は心の中で『他人は信が置けない存在だ』と思っていました。都合良く奉って利用しながら、都合が悪くなれば利用価値がないと判じ、一転して忌み嫌う。私とリズベルをそんな風に扱う周りに、私は静かに失望の念を抱きました。同時に、『人間とはこんなものなんだ』とも」
「……」
「だから、ですね。それ以降、私は表面上は波風を立てないようにしながら、本当は誰一人として信用も信頼もせずに過ごしてきました」
(そんな風には見えなかったけどな)
結城の記憶にあるピオニーアは、静かで物知りで、掴みどころはないが、いつも優しく微笑んでいる、そんな印象だった。
「けれど……」
「?」
「結城さんと媛寿ちゃんは違いました。何の裏表もなく、ただのピオニーアとして、私に接してくれました。バカ正直なくらいに」
「バ、バカ正直、ですか?」
「ええ、バカ正直です」
ピオニーアは本当に嬉しそうな笑みを浮かべた。それは結城が知る、ピオニーアの一番良い笑顔だった。
「そんな二人に、私も少なくない部分が影響されました。自分のためであっても他人のためであっても、いつも一生懸命で、何があっても挫けず、何に対しても挑んでいく。私には、二人がそう見えたんです」
「僕たちはそんな勇敢な感じじゃなかったと思うんですけど。僕はいつも媛寿に振り回されてただけだし」
「私も最初は、二人のことが理解できませんでした。でも知っていくうちに、『私も二人のように生きられたら』と、少し憧れるようになっていたんです」
「僕からしたらピオニーアさんの物知りなところが憧れでしたよ」
「ふふ♪ ありがとうございます」
ピオニーアはまた嬉しそうに笑う。
結城が話しているピオニーアは、結城の中に残る『記憶』だと言ってきた。
だが、その仕草も表情も、全部結城が知っているピオニーアそのままだった。
結城は本物のピオニーアと話しているような気になり、嬉しく思う反面、どこか悲しくも思っていた。
ピオニーアはすでに死者であり、もうどこにもいないのだ。
「二人に影響されたから、私もちょっと夢を見ちゃったんでしょうね……」
ピオニーアは少しだけ悲しそうな笑みを浮かべた。
結城は知っていた。
それはピオニーアが本当に、『悲しい』、『寂しい』と思っている時に見せていた表情だと。
「もし、無事にリズベルを日本に呼び寄せることができたら……四人で一緒に暮らしていきたいって。心のどこかで、そう思っていたんです」
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