小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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友宮の守護者編

待ち受ける者

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 怪力の青年、原木本を食い止めるためにアテナが残り、結城たちは虎丸の進む先を追い、再び屋敷内を走っていた。次々と現れる強敵たちを前に、仲間たちが足止めを買って出て、いよいよ残ったのは結城、媛寿、佐権院、トオミの四人だけとなってしまった。
 予想を超える事態の連続に、状況はほぼ逼迫していると言ってもいいほどだが、事ここに至って結城は不安を持っていなかった。
 往く所無きに投ず、と孫子も言っているように、ある程度まで進んでしまえば、もはや恐れを感じなくなる。結城もまた敵の中心に近付き、いよいよ迷いが無くなってきたというところだった。半分は。
 もう半分はというと、ちょっと惚けていた。言わずもがな、戦いの女神アテナは美人である。その美人から加護を授けるという意味で、額とはいえキスされたとあっては、結城とて惚けてしまうのは仕方ない。
 小林結城、二十五歳。童貞であるならなおさらである。
 そんなわけで、敵地のど真ん中に突入しようという状況で少し惚けている結城であったが、媛寿としてはちょっと面白くはなかった。
 肩車で結城に乗りながら、にやけかかっていた彼の頬を摘んで引っ張った。
「いひゃひゃひゃい、媛寿なに?」
「ゆうき、ニヤニヤしすぎ! しゅーちゅー! しゅーちゅー!」
「ニ、ニヤニヤなんかしてないって」
「うーそー! アテナさまにチューされてニヤニヤしてた!」
「そ、それは、その~……」
 そのことを指摘されると、何も言えなくなってしまう。結城とて男の子である以上、美女にああいった行為をされたは、どうにも抗いがたいものがある。
「小林くん、大事の前に座敷童子の機嫌を損ねるのはどうかと思うのだがね」
「ここは素直に謝ってお詫びの品を約束するのが寛容」
 座敷童子の性質をよく知る佐権院は状況を的確に指摘し、化身とはいえ女性であるトオミはこれまた的確にアドバイスをしてくる。
「う~ん……」
 なぜか一方的に悪者にされているような釈然としない気持ちになってしまったが、媛寿の機嫌が悪いとまたとんでもない事が起こりそうなので、結城は素直に謝ることにした。
「ご、ごめん、媛寿。確かにちょっと集中できてなかった……かも」
「む~、はんせーした?」
「したした。作戦がうまくいったら何か奢るよ。何がいい?」
「ホントッ!? んっとね~、んっとね~」
「すまないが二人とも、その話はまた後にしてもらえるかな」
 結城と媛寿の会話に割って入った佐権院が、片手を上げて足を止めた。その合図を見て結城も走るのを止め、急停止する。
 立ち止まったのは一直線の長い廊下の端だった。特に調度品の類も設置されておらず、ただ絨毯だけが廊下の終わりまで続いている。それだけなら特に気にする必要もない場所だが、唯一異彩を放っているのは、廊下の丁度中間に佇むフルプレートアーマーだった。台座に固定されているわけでもなく、大振りのハルバートを携え、腰に剣を差し、姿勢良く直立している。
 その場にいた全員が、案内役だった虎丸でさえもが足を止め、先方に立つ甲冑に対して直感を覚えていた。
 あれは敵だ、と。
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