小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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友宮の守護者編

銃と剣

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 白亜の彫像が立ち並ぶ芝生敷きの前庭を、日本刀とツヴァイヘンダーを持った白いメイドが舞い踊る。身体の回転から繰り出される鋭い斬撃は、時に芝生を、時に彫像を、触れただけで刻み、切断していった。常人では到底避けられない猛攻を、ボルトアクションライフルを携えたスーツの男は紙一重でかわしていた。
 その男、トミーには分かっていた。白いメイド、シロガネに近接戦闘を挑んでは負ける、と。
 化身の能力は、元となった物の用途や性質に大きく依る。シロガネはナイフが年月を経て化身しただけに、刃を持った近接武器を誰よりも巧く操れる。戦いに使われた経験が多く長いほど、戦闘能力も比例して高くなる。その点においては、剣を使った戦闘でシロガネの右に出る者はいないだろう。
 禁酒法時代から様々なマフィア達に使われ続けた銃が化身したトミーとしては、シロガネに近接戦闘を挑むのは分が悪すぎた。だが、完全に回避に徹すれば、シロガネの攻撃を受けるようなことにはならない。闘いが始まって既に五分以上経過しているが、トミーは一向に反撃する気配を見せなかった。
 手を緩めることなく攻め続けるシロガネも、いよいよ疑問に思い始めていた。銃の利点は離れて攻撃できることだと知っている。なので早々に間合いを詰め、肉薄して銃を撃つ暇を与えないようにしたものの、こうも逃げの一手を取られるのはおかしい。次弾装填したライフルは未だに火を噴いてはいない。接近されればライフルの長さは不利になるので使えないとしても、まるで反撃することなく攻撃を避け続けるのは、明らかに異様だった。
 それも、トミーは防戦一方であるはずなのに、全く窮した様子を見せていない。ポーカーフェイスのまま、シロガネの次の攻撃を冷静に見定め、かわしていた。
(何を考えてるのか、知らない。けれどもう、長引かせない)
 結城たちを追いつくためにも、これ以上時間を取らされるわけにいかない。シロガネは次の一刀を決めの一手とした。
 正中線に狙いを定めた、日本刀による刺突。最も刀剣のリーチを活かし、決まれば一撃必殺となる技により、この闘いに幕引きを図ろうとした。
 が、刺突は放たれなかった。右腕を引き、刀を持った腕を伸ばそうとした時、シロガネの後ろから破裂音が聞こえたからだ。
(銃声!?)
 反射的に振り返り、防御体勢を取る。しかし、銃弾は飛んでこなかった。代わりにシロガネの腹部から鮮血が飛び散った。
「っ!」
 トミーのライフルに収まっていた弾丸が、シロガネの身体を撃ち抜いていた。
「!!」
 倒れるよりも先にトミーを刺し貫こうと、シロガネは渾身の力で身を捻り、刀を繰り出そうとする。だが予想外のダメージのせいで、先程の流れるような剣捌きは見られない。
 そこまで動きが鈍くなれば、トミーにも応戦する余裕は充分にあった。左の袖口から何かが飛び出し、トミーの左手に軽やかに収まった。
 その手には小型のオートマチック拳銃が握られていた。上着の袖に隠しておくスリーブガン。トミーは左袖に仕込んでいたその小型拳銃を連射した。
 装填されていた7発の弾丸は全て、シロガネの右太腿に命中した。
 右脚の支えが失われたことで、刀の切っ先は標的に届くこともなく、シロガネ自身も芝生の上に倒れ伏した。
 銃声が鳴り止んだ後には、ライフルと小型拳銃から立ち上る硝煙だけがゆらゆらと揺れていた。
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