314 / 469
竜の恩讐編
凶撃 その4
しおりを挟む
「しろがね! だいじょうぶ!?」
「媛、寿」
掛け矢を振るって武装集団を少し押し返した媛寿は、ゴム弾を受けて屈みこんでいるシロガネに振り返った。
「大丈、夫――――――媛寿!」
「っ!?」
立ち上がろうとしていたシロガネは、視界に入った異変に気付き、咄嗟に媛寿に呼びかけた。
媛寿もそれを察知し、反射的に掛け矢を防具代わりに前へかざす。
するとゴム弾の一斉射が雨あられと叩きつけてきた。
「うぐっ!」
掛け矢を盾にしたことで頭や胴への直撃は避けられたが、手や足に数発を食らい、媛寿は痛みに呻いた。
「なんで!? おもいっきりあてたのに――――――!?」
一斉射が止んで、掛け矢の陰から様子を見た媛寿は驚愕した。
武装集団は誰一人倒れておらず、媛寿とシロガネに銃口を向けている。中には片腕をだらりと力なく垂らした者や、上体を不自然に傾けている者もいた。
明らかに媛寿の掛け矢による一撃は受けている。命に影響が及ばないまでも、しばらく動けなくなるくらいには、ダメージが入っているはずだった。
しかし、武装集団はそれをものともせず、痛みも感じていないようだった。
「こいつら、なに?」
「媛寿、行って」
武装集団の不気味さにたじろいでいる媛寿の背に、シロガネが武器を出しながら先を促した。
「しろがね?」
「こいつら、普通じゃ、ない。結城が、危ない」
シロガネは右手にサバイバルナイフと、左手に山刀を構え、媛寿の前に出た。
媛寿もまたシロガネの言葉で、漠然とした不安が確実に大きくなりつつあった。
謎の狙撃から始まり、マスクマンやシロガネを追い詰める状況と武装集団。
結城が依頼を受けたラナン・キュラスなる人物にどんな裏事情があるかは分からないが、少なくともかなりの危険が迫っているのは間違いない。
「わかった! おねがい!」
シロガネの意思を汲んだ媛寿は、回り道をして結城たちに追いつくべく、武装集団が固めている道とは逆方向へ走り出した。
「了、解」
武器を構えて武装集団を牽制するシロガネがそう返す。
媛寿もシロガネも、いま置かれている状況の危うさが判るからこその役割分担だった。
女神アテナという最強の護りを欠いている以上、結城の身が一番危険である、と。
目の前に現れた少女を前に、結城は言葉で言い表せないほどの戦慄を覚えていた。
単なる見た目だけなら、ブレザーの制服を着た女子高生。艶のある長い黒髪に、整った目鼻立ちの美貌。背は高すぎず低すぎず、均整の取れた体つきに、すらりと伸びた四肢。
道を行けば誰もが一目は振り返りそうな美少女であるにもかかわらず、結城はとても嫌な感じの動悸に襲われていた。
口角を上げて笑いかけてくる少女の雰囲気は、とても友好的とはいえない。
さながら追い詰めた小動物をどう引き裂いてやろうかと品定めする、凶悪な怪物の本性が滲み出ている。
少女は結城を人間として見ておらず、結城もまた少女を人間として見れない。
人の姿をしていながら、その内面は全く違うものなのだと、結城は少女が放つ気配に知らしめられている気がしていた。
「だ、誰だ、君は!?」
震える脚を意識で必死に支えながら、結城は少女に問い質した。
「あっ、意外な言葉が出てきた。それを聞かれると困っちゃうな~。仕事の最中は基本的に名乗らないようにしてるし。そもそも大抵の標的が名前を聞いてくる前に死ぬか半狂乱になってるし。標的に名前を言ったことってなかったんじゃないかな~」
結城の言葉がよほど予想外だったのか、少女は軽く悩むような素振りを見せた。
その間にも、少女の纏う雰囲気は少しも揺らがず、結城はほとんど動けずにいる。
せめて背後に庇っているラナンだけでも逃がしたいが、下手に動こうものならどうなるか、結城の脳は確固たるイメージを浮かべていた。
二人まとめて、刺し貫かれてしまう場面を。
「まっ、いっか。別に何か変わるわけじゃないし」
しばらく考えた末、少女はあっさりと割り切った様子だった。
「あたしの名前は皆本千春。あなたは小林結城、さんで合ってるわね?」
「そ、そうだけど……」
なぜ眼前の少女、千春は自分の名前を知っているのかと、結城は疑問に思いかけた時、
「長ったらしく話すつもりはないから、単刀直入に言うわね」
千春は左手に持っていた細長い袋を持ち上げて、結城を、いや、その後ろを指し示した。
「その女をこっちに渡してくれない? 殺すから」
「媛、寿」
掛け矢を振るって武装集団を少し押し返した媛寿は、ゴム弾を受けて屈みこんでいるシロガネに振り返った。
「大丈、夫――――――媛寿!」
「っ!?」
立ち上がろうとしていたシロガネは、視界に入った異変に気付き、咄嗟に媛寿に呼びかけた。
媛寿もそれを察知し、反射的に掛け矢を防具代わりに前へかざす。
するとゴム弾の一斉射が雨あられと叩きつけてきた。
「うぐっ!」
掛け矢を盾にしたことで頭や胴への直撃は避けられたが、手や足に数発を食らい、媛寿は痛みに呻いた。
「なんで!? おもいっきりあてたのに――――――!?」
一斉射が止んで、掛け矢の陰から様子を見た媛寿は驚愕した。
武装集団は誰一人倒れておらず、媛寿とシロガネに銃口を向けている。中には片腕をだらりと力なく垂らした者や、上体を不自然に傾けている者もいた。
明らかに媛寿の掛け矢による一撃は受けている。命に影響が及ばないまでも、しばらく動けなくなるくらいには、ダメージが入っているはずだった。
しかし、武装集団はそれをものともせず、痛みも感じていないようだった。
「こいつら、なに?」
「媛寿、行って」
武装集団の不気味さにたじろいでいる媛寿の背に、シロガネが武器を出しながら先を促した。
「しろがね?」
「こいつら、普通じゃ、ない。結城が、危ない」
シロガネは右手にサバイバルナイフと、左手に山刀を構え、媛寿の前に出た。
媛寿もまたシロガネの言葉で、漠然とした不安が確実に大きくなりつつあった。
謎の狙撃から始まり、マスクマンやシロガネを追い詰める状況と武装集団。
結城が依頼を受けたラナン・キュラスなる人物にどんな裏事情があるかは分からないが、少なくともかなりの危険が迫っているのは間違いない。
「わかった! おねがい!」
シロガネの意思を汲んだ媛寿は、回り道をして結城たちに追いつくべく、武装集団が固めている道とは逆方向へ走り出した。
「了、解」
武器を構えて武装集団を牽制するシロガネがそう返す。
媛寿もシロガネも、いま置かれている状況の危うさが判るからこその役割分担だった。
女神アテナという最強の護りを欠いている以上、結城の身が一番危険である、と。
目の前に現れた少女を前に、結城は言葉で言い表せないほどの戦慄を覚えていた。
単なる見た目だけなら、ブレザーの制服を着た女子高生。艶のある長い黒髪に、整った目鼻立ちの美貌。背は高すぎず低すぎず、均整の取れた体つきに、すらりと伸びた四肢。
道を行けば誰もが一目は振り返りそうな美少女であるにもかかわらず、結城はとても嫌な感じの動悸に襲われていた。
口角を上げて笑いかけてくる少女の雰囲気は、とても友好的とはいえない。
さながら追い詰めた小動物をどう引き裂いてやろうかと品定めする、凶悪な怪物の本性が滲み出ている。
少女は結城を人間として見ておらず、結城もまた少女を人間として見れない。
人の姿をしていながら、その内面は全く違うものなのだと、結城は少女が放つ気配に知らしめられている気がしていた。
「だ、誰だ、君は!?」
震える脚を意識で必死に支えながら、結城は少女に問い質した。
「あっ、意外な言葉が出てきた。それを聞かれると困っちゃうな~。仕事の最中は基本的に名乗らないようにしてるし。そもそも大抵の標的が名前を聞いてくる前に死ぬか半狂乱になってるし。標的に名前を言ったことってなかったんじゃないかな~」
結城の言葉がよほど予想外だったのか、少女は軽く悩むような素振りを見せた。
その間にも、少女の纏う雰囲気は少しも揺らがず、結城はほとんど動けずにいる。
せめて背後に庇っているラナンだけでも逃がしたいが、下手に動こうものならどうなるか、結城の脳は確固たるイメージを浮かべていた。
二人まとめて、刺し貫かれてしまう場面を。
「まっ、いっか。別に何か変わるわけじゃないし」
しばらく考えた末、少女はあっさりと割り切った様子だった。
「あたしの名前は皆本千春。あなたは小林結城、さんで合ってるわね?」
「そ、そうだけど……」
なぜ眼前の少女、千春は自分の名前を知っているのかと、結城は疑問に思いかけた時、
「長ったらしく話すつもりはないから、単刀直入に言うわね」
千春は左手に持っていた細長い袋を持ち上げて、結城を、いや、その後ろを指し示した。
「その女をこっちに渡してくれない? 殺すから」
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
合成師
盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる