小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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竜の恩讐編

小鬼の辿った道 その3

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 天逐山てんぢくざんの中腹から、地を揺るがす程の爆発が巻き起こった。

「WΘ!? Eξ!?(何だ!? 爆発!?)」
 ルーシーとの戦いで失った左手を再生させていたマスクマンが振り返る。

「……何、今の? ……、爆発?」
 ヴィクトリアにどうを刺され、倒れていたシロガネが目を覚ました。

「ぶはっ!」
 爆発によって巻き上げられた土砂に埋まっていた千秋ちあきは、脱出してすぐに大きく息を吸った。
「はあ……はあ……はあ……」
 まだ息が荒い中、千秋は後方を振り返った。
 千秋が設置した荷重結界のあった場所は、周辺を跡形もなく吹き飛ばした無残な光景に変わっていた。
 収束手榴弾が見事に炸裂したのだから無理もない。
「ま、まさか……あんなとんでもない真似まねしてくるなんて……」
 全力で爆発の効果範囲から退いたので、千秋は自慢のゴシックドレスが土砂塗どしゃまみれになるだけで済んだ。
 が、それよりも、収束手榴弾で丸ごと消し去ろうとしてきた相手の行為に戦慄していた。
 荷重結界で動けないところを驚くべき精神力で立ち上がり、至近距離で躊躇ためらいなく手榴弾を炸裂させた相手、媛寿えんじゅのことが今さらになって恐ろしくなった千秋。
 必死になって立ち上がった時の形相ぎょうそうを思い出しても、鬼の末裔まつえいたる千秋でさえ背筋が寒くなってきた。
(け、けど、これだけ盛大に自爆したなら、もう会うことは―――)
 そう思いかけた時、千秋の中に言い知れぬ不安がいてきた。
(……あんな凶悪な存在やつが、本当に自爆こんなことで終わる?)
 不安がぬぐえない千秋は、周りに首を巡らすが、世闇の中、爆発跡と山の木々しか見えない。
 まだ神経のざわつきがおさまらず、ふと上を見上げると、夜の雨雲の中に一点、わずかに白んでいる部分があった。
 よく目をらすと、それは次第に大きくなってきた。
(何?)
 さらによく見ようと目を細め、それが金属板であることがわかった。
 そして千秋は予感が的中したことを確信した。
 上空から落下してくる金属板の裏から、着物姿の少女、媛寿が姿を現したからだ。
「ぐっ! こ、ここで確実に仕留めてやる!」
 驚愕しながらも、千秋は大身槍クリングゾルの穂先を媛寿に合わせた。

 収束手榴弾を取り出した媛寿は、自爆するつもりだったわけではない。
 手榴弾による大爆発が起ころうとする際、千秋もさすがに巻き添えを受けないために、その場を離れると思ったからだ。
 媛寿の読み通り、術者である千秋が離れた―――術を持続させておく余裕がなかったのもある―――ことで、荷重結界の拘束はかれた。
 媛寿は手榴弾が爆発する前に、左袖ひだりそでからもう一つアイテムを取り出していた。
 古屋敷ふるやしきのさらに奥にある旧日本軍の秘密軍事工場。
 そこに放置されていた、媛寿のとっておきの盾。
 試製超重戦車、通称『オイしゃ』の、使われることのなかった予備装甲だった。
 しかし、そのままで収束手榴弾の爆発を防ぎきることはできない。
 媛寿は地に足をつけたまま爆風を受けるのではなく、上方にび上がることで、装甲をたこ代わりに爆風で押し上がっていたのだ。
 無論、一切のダメージを受け流せるわけではないが、最小限のダメージで済ませた上で、媛寿は荷重結界を打ち破ってみせた。
「ぐっ! こ、ここで確実に仕留めてやる!」
 千秋は落下してくる媛寿を迎撃しようと、大身槍おおみやりを構えて待ち受ける。
 媛寿は装甲を放り投げると、再び左袖に手を入れ、次のアイテムを取り出した。
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